年に10回ライブで会うって、それは“推し”?
“推しは誰?”と聞かれるたびにずっと、「アイドルもチェックしているけど、広く浅くだから特に推しはいないんですよね~」と答えていました。が、この前ふと思ったのです。「ライブの回数で考えると、私の推しは一之輔さんなのではないか!?」と。
スケジュールを確認したところ、今年は秋までに9回、春風亭一之輔さんの会(寄席ではなく、独演会や二人会など)に足を運ぶ予定です。これからチケットをとる会もあるはずなので、今年は10回以上一之輔さんに会えそうです。
飄々と、さらりとかわす姿に、またぐっとくる
つい先日、こんな本が発売になりました。
『落語の人、春風亭一之輔』中村計・著(1100円/集英社)
著者であるノンフィクションライターの中村計さんは、『笑い神 M-1、その純情と狂気』、『言い訳~関東芸人はなぜM-1で勝てないのか~』など多くの熱いノンフィクションを書いていらっしゃる方で、取材するずっと以前から落語家・春風亭一之輔の大ファンだったそうです。「はじめに~長い言い訳~」と題されたまえがきに、本を作りたいと何度もオファーした時の様子が書かれており、落語愛と一之輔愛が詰まっていてとても面白いです。
そんな、「もはや恋?」というくらい一之輔さんLOVEだった著者が、本人に20時間以上インタビューしてまとめたものが本書なのですが、当の一之輔さんは、聞き手の深い愛を決して正面から受け止めずに、飄々と、さらりとかわすんですね。その姿がまた期待を裏切らないというか、「いかにも一之輔さん」でちょっと嬉しくなってしまいました。
「粋」「矜持」「含羞」…読みすすめながら、そんな言葉が何度も頭に浮かびました。
この感じ、一之輔さんに限らず第一線の噺家さんの多くがまとっている空気のような気もします。
世の中の流行りもあって、特に仕事の場面で、「コスパ」とか「メリット」とか「効率」という言葉をつい使ってしまうのですが、落語は「意地や見栄を張って、損もするけど笑っちゃえ!」みたいな真逆の世界。だから、ひかれるのかもしれません。
さて、本の話に戻ると、質問をかわしつつも時折漏れる本音、そして、豊富な周辺取材のおかげで、「こういう人なのかなあ」とふんわり感じていた一之輔さんの解像度がぐっと上がりました。
どうやら「天才」らしいこと、
プライベートも高座の雰囲気とあまり変わらないこと、
滑稽話にこだわりがあり、人情噺はあえて避けていたこと、などなど。
一之輔さんのことだけでなく、落語協会、落語芸術協会、立川流という3つの団体の芸風の違いなど、私が今まで理解していなかったこともわかりやすく書かれていて勉強になりました。
一之輔さんファンはもちろん、落語に少しでも興味があればおすすめです。
あっ、『笑点』などテレビで一之輔さんを知っているという方も多いと思いますが、ぜひ一度落語を生で聞いてくださいね。一之輔さんはやっぱり落語がいちばん素敵です。と、著者もまったく同じことを書いていましたが、私も全面的に同意します!!