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幸せなコロリのための第一歩。生活全般をサイズダウンするきっかけは、夫の死でした

親の介護や遺品整理などに直面するのがOurAge世代。イメージしにくいとはいえ、今から自分の「幸せなコロリ」について考えておくのも悪くありません。まずは、人生の先輩でもある産婦人科医の松峯寿美先生に「人生後半をより充実させる生き方」について、インタビュー。

お話を伺ったのは

松峯寿美
松峯寿美さん
東峯婦人クリニック名誉院長
公式サイトを見る

日本産婦人科学会専門医。医学博士。妊娠・出産はもちろん、思春期、更年期、老年の女性に寄り添い、40年以上診療を続けている。著書に『婦人科医が不安と疑問にやさしく答える 更年期の処方箋』(ナツメ社)、『50歳からの婦人科 こころとからだのセルフケア』(高橋書店)など多数

 

尊敬し、信頼し合っていた夫の死を経験して…

 

東京・木場で東峯婦人クリニックを開業する松峯寿美先生は、76歳を迎えた現在も、診察室で妊婦さんや更年期の患者さんたちと向き合う日々。この道40年以上の大ベテランです。

 

「私は赤ちゃんを取り上げるこの仕事が大好きなの。開業医には定年がありませんから、まだまだ現役で働き続ける予定ですよ」と、白衣姿で微笑みます。

 

そんな松峯先生に5年前の夏、大きな転機が訪れました。同じ医師の先輩として尊敬し、何でも相談し合ってきた外科医の夫が亡くなり、その後3~4カ月というもの、魂が抜けたように落ち込んでしまったのです。

 

「人生の伴侶をなくす喪失感というのは、まるで震災後の瓦礫の前で、なすすべもなく立ち尽くしているような感じです。人と会うのも嫌な時期があって、一時的に引きこもりになりました。立ち直るまでに1年以上かかりましたね」

 

部屋を片づけることで気持ちの整理ができた

 

当初は二人分の茶碗や歯ブラシを見るだけでもつらくなり、夫のものが目につかないようにしまい込む日々。日々の診療があるので、洗顔や歯みがきをして最低限の身づくろいをして、痩せてブカブカになった白衣を着て、診察室に出ていたそう。自宅で過ごすときには省エネモードで極力動きたくなかったので、「手を伸ばせば取れる」という範囲内に、スマホやタブレット、筆記用具、書類などを置き、身の回りを思い切りコンパクトにして生活していた松峯先生。テーブルとソファの位置も動線が近くなるように配置を替えて、「部屋のワンコーナーですべてできる」という感じに模様替えしました。

 

「あのときは無意識でしたが、今思うと、部屋を片づけることで夫が亡くなった喪失感を癒やし、〈おひとりさま仕様〉に動線を小さくしていたんですね。試行錯誤しながら模様替えすることで、二人暮らしから一人暮らしに慣れていき、『夫の死』を徐々に受け止めることができるようになりました」

 

実は、夫が亡くなる数カ月前に愛犬を亡くしていた松峯先生。その子の寝床も片づけることができずにいました。でも、室内を〈おひとりさま仕様〉に整えるうち、ようやく片づける決心ができたのです。

 

「部屋を整理することが、気持ちを整理することにもつながりました。心が落ち着いた頃には、茶碗や歯ブラシが一人分になったことを受け止め、『夫は社会的には亡くなったけれど、私の心の中で生きている』と思えるようになったんです」

夫の遺物を捨てて心の整理をする女性のイラスト

 

「1日ひとつは物を捨てる」をモットーに

 

松峯先生が部屋の整理をするうえで実践しているのは「1日ひとつは物を捨てる」ということ。

 

「いきなり大がかりに片づけるのは大変だし、疲れてしまいます。でも、1日に書類1枚でも捨てるようにすれば、1年間で365個捨てることができるんですよ。あまり大きな目標を立てると挫折しやすくなりますが、小さな目標であれば、意外とクリアできるもの。気がついたときには物が減っていて、『あら、私、結構頑張ったじゃない!?』って、達成感が得られます」

 

ちなみに、迷うことなくバッサリと捨てることができたのは衣類だったそう。もともと流行にとらわれず、ブランド物も買わない主義。自分が気に入って購入した服は絶対に捨てず、大切に着続けていました。でも、久しぶりに着てみたら、「今の自分には似合わないな」と感じる服が出てきたのです。70代を迎えた今では、安全のためにローヒールを履いているので、かつてお気に入りだったハイヒールも潔く処分しました。

 

「そうやって今の自分に必要かどうか、現実を見ながらジャッジしていくと、自然とサイズダウンできるんです」

 

そして今、唯一、「捨てるのが難しい」と思っているのが写真です。「これは捨てる、これは捨てない」と仕分けしていると思い出に浸ってしまい、棚上げ状態になっているのです。

 

「自分が気に入った写真の何枚かは、『遺影に使うかもしれない』と思って保管してありますが、山ほどある写真の分類と処分は今後の課題。そろそろ整理しようと思っています」

おひとりさまになったら、経済的にもサイズダウンした

 

今や、日本人の男性の平均寿命は81.47歳、女性は87.57歳です(厚生労働省の2021年簡易生命表より)。パートナーを見送った後、女性はその後も長生きするケースが多いもの。一人暮らしになると年金額が減りますが、同時に支出もダウンしたので、結果的に経済的にもサイズダウンできたそうです。

 

二人で暮らしていたときのように、それぞれの部屋で照明やエアコンを使うことがなくなり、お風呂もトイレも一人分になったので、水道料金と光熱費が減りました。

 

ただし、食費に関しては注意が必要。食材にムダが出やすいので、一人分の分量に少しずつ慣れていかなくてはいけません。

 

「いつかは皆さんも、私と同じ経験をする日が来るかもしれません。私自身、人生の伴侶とペットに先立たれ、しばらくの間は落ち込んでいました。でも今は、一人暮らしにシフトチェンジして、サイズダウンした暮らし方に慣れてきました。

 

慣れるまでには個人差もあり、2カ月ほどで落ち着く人もいれば、数年かかる場合もあります。いずれにしても時間が解決してくれます。人間って、適応力があるので、意外と何とかなるものですよ!」

 

イラスト/内藤しなこ 取材・文/大石久恵

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