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認知症発症や突然の入院に備えてシミュレーション!「3つのキーワード」を覚えておこう

「幸せなコロリ」を迎えたいけれど、コワいのは認知症の発症や突然の入院。そのためにどう備えればいいか、マネーセラピスト安田まゆみさんに聞きました。覚えておきたい「3つのキーワード」があるそう。それはいったい…?

前回は移住ライフを楽しむ70代男性の実例とともに、「使えるお金の範囲内で人生を楽しむヒント」についてのお話でした。今回は「もしもの入院や認知症発症に備えて知っておきたいこと、準備しておきたいこと」について、安田さんにお聞きします。

 

もしもあなたが突然倒れて救急搬送されたら?あるいは、長生きして認知症を発症してしまったら?何から手をつけるとよいのでしょうか。親や自分の「もしも」に備えて、エンディングノートの活用、成年後見制度、家族信託について知っておきましょう。

 

突然の入院時、治療費の支払いや延命治療はどうする?

 

親や自分が突然倒れたときの備えはしていますか?いざというときに慌てないように、キャッシュカードや預金通帳、印鑑のありか、延命治療を希望するかどうかなどの情報を、親きょうだいと共有しておきたいですね。

 

また前もってエンディングノートに記入しておき、保管場所をグループラインなどで共有しておくと安心です。

 

「私が理事長を務める『エンディングメッセージ普及協会』が提案するエンディングノートは、自分が生きているときに見てほしいことを記入する『ライフデザイン編』と、死後に見てほしいものを記入する『シークレット編』の2冊からなっています。突然の入院に備えた情報は『ライフデザイン編』に記入するのがよいでしょう」(安田さん)

 

『エンディングメッセージ普及協会』が提案するエンディングノート

安田さんが理事長を務める「一般社団法人エンディングメッセージ普及協会」のメッセージノート 2冊で1,500円+送料

 

また、「死後に読んでほしいこと」は封筒に入れて保管しておくのもアリ。その場合、遺言のような法的な拘束力を待ちませんが、自分の言葉で親族に遺志を伝えるのはとても大切なことです。

 

「私は相談者の方たちに、大きめの付箋に書いて貼りつける方法をおすすめしています。考えが変わったら書き直せばいいので、気軽に書き始めることができますよ」

 

まずは予行練習として、「親が入院したときに知らないと困ること」を聞き取って、親のエンディングノートを一緒に作成するといいかもしれません。「自分の場合はどうか」とイメージしやすくなるはずです。

 

<エンディングノートに記入しておきたいこと>
・預金通帳や印鑑の置き場所
・預貯金の金額、取引のある金融機関名を支店名まで
・公共料金の口座引き落としの金融機関名を支店名まで
・住宅や車のローンなど、現在抱えている負債
・入院、介護、死亡時に備えた保険契約の有無
・終末期の医療で、延命治療を希望するかどうか
・認知症などで財産の管理ができなくなったとき、誰に管理してほしいか
・預貯金や不動産などをどのように分けてほしいか
・身の回りの生活品の処分についての希望

 

認知症になると、預貯金からの引き出しや契約行為ができなくなる!

 

「いずれは認知症になる可能性がある」と言われても、今はまだピンとこない人が多いでしょう。でも、親が認知症になると、預貯金の引き出し、自宅不動産の売却、生命保険の解約などの契約行為ができなくなってしまうことも。そうなっては家族の一大事!

 

施設の入居費用にあてるために、実家の土地家屋を売却しようにも、親が認知症と診断されてしまうと、自分の名前が書ける状況だとしても、不動産売買の契約ができません。だからといって、子どもが親の名義のままで売却することは、法律上できません。そうなると、親に潤沢な資産があったとしても、当面の費用を私たちの預貯金を切り崩して立て替えることになり、経済的にも精神的にも、負担が重くなってしまいます。

 

「認知症発症後もすぐに亡くなるわけではありませんから、その間に実家が空き家になって朽ち果てていくという状況に陥りやすいのです。その場合、助けになるのが、成年後見制度です」

 

成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。すでに判断能力が低下している人の場合、「法定後見制度」を利用することで家の売却も可能になります。

 

「申し立てから2カ月ほどかかりますが、家庭裁判所が財産管理をサポートしてくれる後見人(または保佐人か補助人)を選任することで、契約行為が可能になるのです」

 

一方、断能力があって元気なうちに契約できるのが「任意後見制度」です。こちらは、将来的に認知症になったときに備えて、自分が信頼できる人(親族でもOK)に財産管理のサポートを依頼する任意後見契約をしておき、いよいよ認知症になってしまったら家庭裁判所に申し立てをして、後見人になってもらいます。任意後見制度を利用するには、前もって公証役場で任意後見契約を結ぶことが必要になります。

 

「任意後見契約を結んでおくと、認知症を発症しても、前もって自分が決めたとおりのお金の使い方ができるというメリットがあります。ただし、家庭裁判所によって、任意後見人を監督する『監督人』が選任され、監督人に毎月報酬を支払う義務が生じてしまい、いったん契約すると、亡くなるまで契約期間が続きます。そのため、金銭的な負担が増すのがデメリット。とはいえ、『家を売るに売れない』などの窮地を救ってくれる制度といえるでしょう」

 

おひとりさまは「家族信託」や「任意後見契約」というワードを覚えておこう

 

親の介護を親のお金でまかなうことができる仕組みとして、近年注目されているのが「家族信託」です。これは、認知症になって、自力で財産の管理をできなくなった人に代わって、家族がサポートする仕組み。

 

「家族信託では、財産を託す人(委託者)と託される人(受託者)が家族で、認知力が低下して契約行為ができなくなってしまった人の財産の管理をすることができます。その際、資産を管理するだけでなく、不動産などを後見人を付けることなく処分できる点が、成年後見制度との大きな違いです」

 

例えば、あなたの母親が委託者で、あなたが受託者と仮定します。その場合、あなたが売り主となって家を売却し、その売買利益から母親が老人ホームに入るための費用をまかなうことができるのです。その際、売買利益は母親の財産となるため、あなたに贈与税がかかることはありません。

 

「私は今、67歳です。まだまだ元気なので、現時点で将来に向けて、認知症対策というようなことはしていませんが、家族信託は行う予定ですよ。私が居住するマンションは、夫と私の共有名義。もしものときに私がイエスと言わないと売却できなくなってしまうため、夫婦それぞれの持ち分を家族信託して、子どもたちが困らないようにするつもりです」

 

おひとりさまの女性が、将来的に自分が認知症になったときにどうするか?「任意後見契約」や「家族信託」などの情報を集めて、少しずつ勉強していきましょう!

 

【教えていただいた方】

安田まゆみ
安田まゆみさん
公式サイトを見る

「元気が出るお金の相談所」所長。マネーセラピスト。ファイナンシャルプランナー歴27年目。家計管理、離婚後のお金相談をはじめ、これまでの相談件数は7000件以上。近年では、定年後の老後マネー相談、熟年離婚相談に加えて「親の介護と財産管理」「認知症対策としての家族信託」「相続対策」「相続の後始末」などの相談が増加中。著書に『そろそろ親とお金の話をしてくだい』(ポプラ社)など多数

 

イラスト/内藤しなこ 取材・文/大石久恵

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