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東京都庭園美術館で、涼やかなフィンランド・グラスアート鑑賞を

新谷麻佐子

新谷麻佐子

あらたに・あさこ●イラストレーター&編集者。2014年にムーミンの作者トーベ・ヤンソンが暮らした島「クルーヴハル」に、友人でライターの内山さつきと1週間滞在したのをきっかけに、kukkameri(クッカメリ=フィンランド語で「花の海」の意) を結成。以後、フィンランドの小さな町や四季、暮らしと文化をテーマに取材を続けている。著書に『とっておきのフィンランド』『フィンランドでかなえる100の夢』(ともにダイヤモンド社)がある。http://kukkameri.com

名デザインを生み出した巨匠たちのアートピースを堪能する

今年の夏は特に暑くて、何をするにも億劫になってしまいますよね。かといって、ずっと家にこもっているのもなんだかもやもや。そんなときは、涼しい美術館で、感性を研ぎ澄ますアート鑑賞はいかが?特に、見た目にも涼しげなこちらのグラスアート展はおすすめです。

フィンランド・グラスアート展 入口

東京都庭園美術館で開催中の展覧会「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」。アルヴァ&アイノ・アアルト、カイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラ、オイヴァ・トイッカなど、フィンランドを代表するデザイナーであり、アーティストのグラスアート作品約140件を堪能できます。

 

実はこちらの展覧会、私は別の会場でも見ているのですが、その日はあいにくの雨だったのもあり、ガラスのキラキラをあまり感じることができませんでした。今回、東京会場を訪れてびっくり!同じ展覧会とは思えないほど、見え方が異なりました。

 

そのわけは、建物にあります。ご存じの方も多いと思いますが、東京都庭園美術館は、皇族の朝香宮の自邸として1933年に建てられ、内装は当時欧州で流行していたアール・デコ様式がふんだんに取り入れられています。その美しい装飾は、今なお人々を魅了しています。

東京都庭園美術館 本館 南面外観

東京都庭園美術館 本館 南面外観

 

こちらは本館エントランス。照明、ガラスレリーフの扉、床のモザイク画と、細部までじっくり味わいたくなります。

東京都庭園美術館 本館 正面玄関

東京都庭園美術館 本館 正面玄関

 

元邸宅なので、館内のあちこちに窓があり、窓から注ぐ太陽の光が、今回のグラスアート作品をより魅力的に見せてくれるのです。

 

それでは、展覧会の見所を紹介していきましょう。最初に迎えてくれたのは、建築家でデザイナーとしても活躍した、アルヴァ&アイノ・アアルト夫妻のコーナー。

アイヴァ&アイノ・アアルト夫妻のコーナー

 

部屋の中央に鎮座しているのが、背の高い作品《フィンランディア》と、花器で「アアルト・ヴェース」とも呼ばれる《サヴォイ》。

《フィンランディア》と、花器で「アアルト・ヴェース」とも呼ばれる《サヴォイ》

 

アアルト・ヴェースを作るのに、かつては木型が使われていて、表面は木ならではの味わいがあります。当時使われていた木型も展示されていました。庭園美術館の美しい壁も絵になります。

アアルト・ヴェースの木型

 

こちらは、皿や鉢、ボウルを重ねて置くと、花の形になるという《アアルト・フラワー》。アイノとアルヴァが共同でデザインしました。

《アアルト・フラワー》

 

先日、今秋公開予定のフィンランド映画「アアルト」の試写を観たのですが、この《アアルト・フラワー》は、劇中にちらっと映し出されていました。

 

少し話が逸れますが、夏にこの「フィンランド・グラスアート」展を、秋に映画「アアルト」を見ると、アアルト夫妻がいかにして作品を生み出していったのか、世界的に名声を得た夫のアルヴァはもちろん、1930年〜40年代に、妻や母としての役割を果たしながら、建築家・デザイナーとして力を発揮したアイノの人生を深く知ることができます。詳しくは、映画の公開に合わせて、本連載で紹介できたらと思います。

 

話を展覧会に戻しましょう。イッタラの「ティーマ」シリーズなど、陶器のデザイナーとして人気の高い、カイ・フランクのコーナー。彼はガラスアートの分野でも活躍。実験的な手法にも果敢に挑戦しています。

カイ・フランクのコーナー

 

こちらはフランクの豊かな色彩感覚が感じられるアートピース。右の作品、シャープなシルエットが印象的な《プリズム》は、ガラスの表面に別の色ガラスの層を薄く重ねる技法と、別の色ガラスの層を厚くかぶせる手法を駆使しています。

カイ・フランクの作品《プリズム》

 

このように光をふんだんに取り入れた展示室がある一方、暗闇の中で魅せる作品もありました。

 

タピオ・ヴィルッカラの《杏茸》です。

タピオ・ヴィルッカラ《杏茸》

 

フィンランドをはじめ、北欧の国々では自然享受権が認められ、誰でも自由に森に入り、ベリーやキノコなど、森の恵みを採取することができます。

ヴィルッカラは、美しい自然の姿に耳を傾け、北極圏のラップランドの氷が溶ける様子など、一瞬のきらめきにスポットライトを当て、プロダクトやアート作品に昇華していきました。

 

他に、妻でセラミック・アーティストのルート・ブリュックとの共作とみられる作品も。

タピオ・ヴィルッカラとルート・ブリュックとの共作

 

グラスの上部に施されている鳥が、ブリュックが手がけたものと考えられています。2019年から2020年にかけて巡回した展覧会「ルート・ブリュック 蝶の奇跡」に行かれた方は、この鳥に見覚えがあるかもしれませんね。

 

会場を進んでいくと、大きな窓の先に、緑豊かな庭が広がっていました。展覧会の後半はどうしても疲れてしまうものですが、東京都庭園美術館は、広大な庭に囲まれていて、窓から四季折々の庭を眺めたり、アール・デコの美しい装飾物がふっと目に入ってきたりするので、集中していた脳が一旦解放され、リラックスできます。

東京都庭園美術館 本館 南側ベランダ

東京都庭園美術館 本館 南側ベランダ

 

展覧会は隣の新館へと続きます。鳥をモチーフにしたグラスアート「バード・バイ・トイッカ」シリーズで知られる、オイヴァ・トイッカの作品のある展示室です。

オリヴァ・トイッカのコーナー

 

子ども心にあふれるトイッカは、カラフルで心弾む作品を数多く生み出しました。事前にデッサンを用意しておくのではなく、ガラス職人とのやりとりで得たテクニックとインスピレーションを生かし、即興的なものづくりに徹したと言います。

 

本当に、色も形も見るからに楽しげな作品ばかり!チャーミングな人柄が作品に表れています。下の写真の右手前は、子どもが描いた花のようにかわいらしい《アートグラス、ユニークピース》。

オイヴァ・トイッカ《アートグラス、ユニークピース》

 

下の写真の左手前は、1968年のミラノ・トリエンナーレのために制作された《ポンポン、ユニークピース》。当時流行したポップカルチャーが反映されています。

オリヴァ・トイッカ《ポンポン、ユニークピース》

 

他にも、女性アーティストのグンネル・ニューマン、イッタラのロゴ「i」のデザインでも知られるティモ・サルパネヴァ、現在も活躍中のマルック・サロ、ヨーナス・ラークソの作品も展示されています。

 

新館のカフェには、展覧会のコラボメニュー、オイヴァ・トイッカの作品《ポンポン》をイメージしたメニューも。

新館のカフェ  展覧会のコラボメニュー

緑豊かな庭を眺めながら、おいしいケーキに舌鼓。のんびり鑑賞の余韻に浸るのはいかがでしょう? アプリコットの酸味が効いていて、夏にぴったりの爽やかな味でした。

 

また、今回は訪れませんでしたが、美術館に隣接するレストラン「comodo」のランチもおすすめ。こちらも庭を眺めながら、イタリアンとフレンチが融合したおいしい料理を優雅に味わえます。気になる方はぜひそちらもご予約を。https://teien-restaurant.com/home/comodo/

 

フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン
会期:2023年6月24日(土)〜9月3日(日) 毎週月曜は休館
会場:東京都庭園美術館
開館時間:10:00〜18:00
※本展は、オンラインによるチケット予約制です。

●毎週金曜日、サマーナイトミュージアム開催中!
日程:8月18日、25日
17:00以降の入場に限ります。21:00まで(ご入館は20:30まで)
※当日窓口購入の場合のみ適用となります。オンラインチケットでのチケット購入は対象外となります。

 

新谷麻佐子さんの北欧旅連載

『今人気の田園ツーリズム。フィンランド、ラトビア、エストニアに行ってきました!』

 

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