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【樫出恒代さんに相談!】50代後半。もっと人生に夢や希望を抱きたい!

人生を一生懸命に生きてきて、気づくと更年期orポスト更年期。ふと「私の生きがいって何だろう…?」と、立ち止まってしまうことはありませんか?同年代の友人が、自分よりもキラキラ輝いて見えるそんなとき。漢方ライフクリエーターの樫出恒代(かしで ひさよ)さんに、漢方的「自分の心と向き合う処方箋」を出してもらいました。

 

 

 

樫出恒代
漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター。漢方カウンセリングルームKaon代表。Kaon漢方アカデミー代表。新潟薬科大学薬学部卒業後、一人ひとりのこころとからだにていねいに向き合う漢方カウンセリングを提唱。連載「女性のための漢方救急箱」の味わいあるイラストは、本人によるもの。美容家・吉川千明氏との共著に「内側からキレイを引き出す 美肌漢方塾」(小学館)

 

 

<お悩み>

「なかなか生きがいを見い出せず、苦しんでいる最中です。年齢を重ね、自分の見た目にも自信がなくなりました。SNSで見かける同年代の友人の写真は肌がつやつや、髪もピッカピカ。同じ歳なのに…と自分のことが残念に。このままでいたら、今後の人生がつまらなくなってしまいそう。何か夢や希望を持ちたいと焦っています」(58歳・自営業)

<回答>
漢方には、簡単に、今すぐ「自分を見つめる方法」があります。

「生きがいを見出したい」。そう悩むことが、まず前向き!

 

お悩みを拝見し、最初に感じたことは、「この相談者さんには、実はパワーがある」ということ。「何もしたくない」「やる気もない」というとき、漢方では「氣力が落ちている」=「氣虚」の症状と判断します。気虚の状態の人は「何か夢や希望を持ちたいと焦っています」という言葉自体、あまり出てこないもの。氣が足りない、氣が乏しい時は、まずそこまで考えられなくなるからです。

 

もちろん、「氣力が落ち気味」という傾向は、年齢的にも多少はあるでしょう。けれども相談者さんの状態は、どちらかというと「氣の巡りが悪く、滞っている」=「氣滞」の症状に近いかも。「みんなは楽しそうなのに、どうして私だけパッとしないのよ」というような、精神的ストレスでイライラしたり、憂鬱な気持ちになったりしているようにお見受けしました。あるいは「肝熱」といい、「肝」に籠もった不要な熱を解毒できない状態なのかもしれません。そうすると、ストレスをうまく消化できなくなるので、「氣滞」と「肝熱」、そのどちらも考えられるでしょう。

 

けれども文面からは、体調自体は悪くはないように感じられます。前述のように、病気を抱えてお悩みの方は、体を治すことが最優先です。心と体はつながっているので、「生きがいを見出したい」というところまで、気持ちが届かないことのほうが多いです。つまり、お悩み自体がとても前向きで、幸せなこと。生きがいが欲しいと願っている、そういう自分をぜひ褒めて、認めてあげてください。

 

人のことが氣になっていませんか?

 

それよりも氣になるのは、ご自身のこれからを考えているようでいて、じつは「まわりの人はどうなの?」と、他人のことばかりを見ている、という点です。

 

「つい人のSNSをサーチしてしまう」とか、実際に友達に会っても、「あれっ、シミが消えた?」「痩せたけど、どんなダイエットしたの?」…等々、人のことにばかり目が行ってしまいがちなのではないでしょうか。そして、感じたことを直接聞けない…という、もやもやも溜め込んでいるのではありませんか?

樫出さん もやもや

 

「氣虚」が進行すると、この年代の女性は女性ホルモンも低下し「腎」の働きが低下する「腎虚」になりやすく、内分泌系や免疫機能など、からだ全般の機能が低下してしまうことも。「腎虚」の状態になると、氣力も低下し何かをやろうと思う力もなくなってしまいますが、今はまだその手前にいると思われますので、早めに具体的な手を打っておきましょう。

 

あなたにとって大切な3つ「氣血水」を考えてみましょう

 

「なぜ私はうまくいかないの?」というイライラの感情、怒りを溜め込むと、それはそのまま自分へと向かい、「だから私はダメなんだ」と、自分を責め始める可能性もあります。この負の流れを元に戻すために、私がよくお話をする具体的な手立てとは、「あなたの人生において、とても大切と思う3つのことは何ですか?」という質問です。

 

漢方には「氣血水」といい、体の中に流れる、とても大切な3つのエレメントがあります。

 

氣…人間のこころとからだを動かすために必要な根源的「生命エネルギー」
血…体内の血液、漢方的には「栄養」
水…体内の血液以外の水分を表す「潤い」  

 

体の中の大切な3つがこの「氣血水」であるとするならば、あなたの人生において大切な3つとは何でしょう? それは、どんなものでもいいのです。「仕事」「子ども」「パートナー」「お金」「推し」「ペット」「趣味のキャンプ」「美味しい食べ物」等々、具体的なものでもいいし、美容に関心があるならば「美」とか「センス」とか、あるいは「愛」など、抽象的で目には見えないものでもOK。その時々で、3つのキーワードは変化しても構いません。

 

そんなことを考えてみるのがなぜいいのか?実は、それらを考えることによって、他人にばかり向いていた目が、自動的に「自分に向く」ようになるからです。自分にとって大切な3つを炙り出そうとするとき、人は自分に戻ることが出来るのですね。そして「3」とは、じつは漢方的な数字でもあるのです。分割できる「4」や「2」という数字とは違い、「3」は「分かれず、滞らず、きちんと巡る」という意味も込められています。

 

 

心がもやもやしたり、人のことが気になってしまったり。そういうとき、漢方的には「心(体も)がしっかりと巡っていない」状態と見ています。ネガティブな感情が出てきた時は、「自分にとって大切なもの3つ」に注目し、その優先順位や楽しいことにスイッチするよう、心がけてみてください。

樫出さん お茶

 

今はご自身のことより、まわりの人に目が向いているのだと思います。そのため自分の氣持ち・声に氣づきにくく「生きがいが見つからない」と感じているのだと思います。

 

でも、自分の大切なものには、正解も不正解もありません。大切なものに目を向ければ向けるほど、自分が本当に好きなこと、やりたいことが浮上して、「とにかくやってみよう」「試してみよう」という気持ちも湧いてくるでしょう。すると、それが自然に生きがいになって、人生も楽しくなっていくでしょう。

 

自分が大切にしていることを、ただ大切にする。そんな、心の養生時間をゆっくりとってみてくださいね。

 

取材・文/井尾淳子

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