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キャリアコンサルタントの資格取得を通じて「妻の気持ち」を理解できるように/定年後の夫婦の関係

かつては妻を理詰めでやり込めたこともあるという原沢修一さんですが、妻と大ゲンカしたこと、キャリアコンサルタントの資格を取得したことを機に、「相手の気持ちを知る」ことの大切さに気づいたといいます。今回は、原沢さんが思考の転換に至った経緯について伺いました。定年夫のトリセツの参考にしてくださいね!

妻と大ゲンカ! 本音をぶつけ合うことが相手を理解することにつながった

 

今回は「心の4大生活習慣病」(男の見栄・意地・プライド・嫉妬)に侵されていた私が、いかにして妻の声に耳を傾けることができるようになったのか? ふたつのきっかけと、その経緯についてお話しします。

 

後輩女性たちから聞いた「定年夫の昼食作りが負担」という話も、おおいに参考になりましたが、私が目覚めるひとつめのきっかけとなったのは、妻と大ゲンカして本音をぶつけ合ったことだったのです。

 

事の起こりは、私が妻の実家を悪く言ってしまったことでした。男と女のプライドがぶつかり合って、お互いが腹の内をぶちまけ、もはや離婚寸前状態。数カ月にわたって口をきかない日々を過ごしました。

 

その間、お互いに相手にぶつけた言葉、不満に思っていたことを冷静になって考えてみたんですよ。そしたら、誤解がたくさんあった。これまでに、双方が「お互いの本音」を相手に伝えていなかったことに気づきました。「言わなくてもわかるだろ?」「言わなくても察してよ」と思っているだけじゃ、ダメなんですよねぇ。言葉が足りなかったせいで、相手の気持ちがわからなかったんだと、二人とも気づいたわけです。

 

例えば、こんなことがありました。定年間近の50代当時、企業ではリストラの嵐が吹き荒れ、自殺者が増えていた時期でした。パートで働く妻が何気なくグチをこぼしたんですよ。単に夫に聞いてほしかったのでしょうね。それなのに私ときたら、「ほら、新聞を見てみろ。家事が大変だからと自殺する奴はいないだろう? 男というのは、それくらい大変なんだよ」と、妻を見下すかのような言動をしてしまった。このときのやり取りによって、妻に「多大な不満ポイント」を与えてしまったのを、大ゲンカした際に知ることとなります。

1枚の求人チラシが目にとまり、巡り巡って資格取得を決意

 

そして、私が大きく変わることができたふたつめのきっかけが、キャリアコンサルタントの資格を取得したことです。資格取得のための学びによって、私自身の考え方が大きく変わりました。今では国家資格になりましたが、当時はキャリアカウンセラーという資格でした。

 

「どうせ、うちの夫は変わらない」と、多くの妻たちが思っているかもしれませんが、思いがけないチャンスと巡り合わせによって、私のように、大きく変わることもあるんです。

 

私の場合、ふと目にとまった一枚のチラシがきっかけでした。それは、近隣の女子大が「学生の就職支援」をするアシスタントを募集する求人でした。問い合わせたところ、すでに応募が殺到状態。残念ながら採用には至りませんでしたが、そのとき、「キャリアカウンセラーの資格をお持ちでしたら、時給が倍になりますよ」と言われたのです。

 

キャリアカウンセラーって初めて聞くけど、どんな仕事だろう? ネットで調べてみると、「悩みや不安を抱える若者や転職者がキャリア形成できるように、寄り添いながらカウンセリングし、支援する」とあります。「かつては学生の採用面接にかかわる経験もしたし、もともと人と接することが好きだから、自分に向いているかもしれない」と、資格取得を目指して、学校に通うことにしました。

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2人1組の「ロールプレイ」を通じて、これまでの価値観がすべて覆される!

 

当時40万円くらいの学費をかけて、4カ月間学校に通いました。新鮮な気持ちでスタートを切りましたが、授業が半分くらい進んだ時点で「もう、やめたい」と思ってしまったんです。なぜかというと、授業内容がこれまでの私の価値観を覆すものだったからです。

 

会社で管理職をしていた当時は「会社はこういう方針で、私の考えはこうだ。だから、君もこうしなさい」と部下を指導するのが「よい上司」とされていました。当時の私は、「相手の話を聞く前に、自分のアドバイスをしてしまう」という思考だったんですよ。

 

ところが、カウンセリングというのは相手の話を聞くことが90%で、こちらが話すのは10%くらい。「相手がどうしたいのか、どうなりたいのか」をまず聞くことが大事。相手がどう言えばいいのかわからなくて、何も言えずに困っていたら、こちらから2~3の選択肢をアドバイスするというプロセスがあるのです。自分の考えを述べるよりも、「まずは相手の話を聞くこと」が最重要というわけです。

 

そして、とうとう、2人1組になってロールプレイをする日がやってきました。私なりに一生懸命にやったつもりでしたが、原沢さんは、私の話を全然聞いてくれない!」と受講生仲間からダメ出しされてしまい…。私としては大ショックでした。「やめてしまおうかなあ」という気持ちがよぎりましたが、このときの経験をバネに改心。「前向きに取り組んで、この資格を取ろう」とチャレンジすることにしたのです。

 

「今回はダメかも」と思ったのに、奇跡的に試験に合格!

 

20名の受講生の中で私が一番の年長者だったこともあり、先生からは「原沢さんはお年だから、人の2~3倍勉強しないと受かりませんね」と言われていました。なので、私が筆記試験に合格したときには、みんながビックリ。

 

二次試験は、試験官の目の前で対面カウンセリングを行う実技試験でした。試験を終えた直後、「こりゃ、絶対に受からないだろうな」と思ってしまいました。というのも「管理職をやっていた当時の癖が抜けず、アドバイスっぽいことを言ってしまった」と、反省点が多かったからです。

 

しかし、幸運なことに二次試験も合格。受講生仲間も「まさか、原沢さんが一発で合格するとは」と、再びビックリしていました。

 

「私、受かってしまったんですけど、大丈夫でしょうか」と、思わず試験官をしたことがある先生に尋ねてしまいました。すると、「あの試験は『この人に、この資格を与えても大丈夫かどうか』を確認する試験なんですよ。あなたは自分の欠点をわかっているし、自分がどうしたらいいかもわかっている。だから、合格できたんじゃないかな」と言っていただきました。「伸びしろがある」と評価していただけたのなら、うれしいことです。

 

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キャリアコンサルタントのスキルが、60代以降の夫婦関係を豊かなものにしてくれた

 

私がキャリアコンサルタントとして活動するようになって、今年で8年目を迎えました。日頃の相談会では、「まずは相談者の気持ちに寄り添って、話を聞く」「その人がどうなりたいのか?自分なりの答えを導き出すサポートをする」というのを基本にしています。

 

ある相談会で、70代の女性から親子関係の悩みを打ち明けられました。その人の息子さんは軽度障害を持っていて、施設に入っているのだそうです。「息子に会いに行くたびに暴言を吐かれる」というのが彼女の悩みでした。

 

私「息子さんから『うるせぇな』と言われたとき、どんな気持ちになりますか」
女性「自分の子だから。しようがないと思う」
私「なんで、息子さんはそんなことを言うのかな」
女性「わからない」
私「息子さんは、どんなときにうれしいと感じると思いますか?」
女性「わからない」

 

「私が思うには、息子さんはあなたに甘えているんじゃないでしょうか。ひとつ言えることは、しばらく距離を置くといいかもしれませんね。私は、あなたが幸せそうな笑顔で息子さんのところに会いに行くのが、いちばんいいんじゃないかと思う。これからは、あなたにとって幸せなこと、楽しいことも考えてみましょうよ」

 

このように伝えたところ、彼女は涙をポロポロとこぼしました。

 

かつて自分の妻をやり込めていた私が、今ではこのような相談を受けているのですから、定年後の人生って、何が起こるかわからないものです。

大げんかの末に歩み寄れるようになった定年後夫婦

 

そもそもは「一枚の求人チラシ」がきっかけでした。勇気を出して学校に通い、キャリアコンサルタントの資格取得を目指して必死に勉強したこと、受講生仲間にロールプレイのやり方をダメ出しされても、諦めずに模索したこと、それらすべてが「相手の気持ちに寄り添う」という学びにつながりました。

 

かつては私も、妻の話を最後まで聞けない定年夫のひとりでした。でも、そんな私も変わることができたんです。だから、あなたの夫だって、この先、変わる可能性があるはず。

 

私の場合は、妻と本音を言い合ったことで、「妻はこんなふうに思っていたのか!」と気づくことができました。まずは「私の話を最後まで聞いてほしい」と夫に伝えてみましょう。

 

今は、キャリアコンサルタントとして、人の役に立つことが私の生きがい。キャリアコンサルタントのスキルを通じて自分自身が変わったことで、「夫婦関係や家族関係が豊かなものになった」と感じています。次回は「定年夫の育て方のコツ」についてお話しします。

 

【お話を伺った方】

原沢修一
原沢修一さん
キャリアコンサルタント・シニアライフアドバイザー

大学卒業後、大手エンターテイメント会社に勤務し、58歳で早期退職。定年後、キャリアカウンセラー(現国家資格キャリアコンサルタント)、シニアライフアドバイザーの資格を取得。現在では、定年退職前後のシニアを対象としたカウンセリングやライフプランセミナーなどの講師を多数務めている。 自身の退職後のことを具体的に考えずに会社を辞めたことによる苦悩、定年後の生きがい探しの体験をリアルに綴った著書『男のロマン・女の不満…あゝ定年かぁ・クライシス』(ボイジャー)が好評発売中。

 

 

イラスト/カツヤマケイコ 取材・文/大石久恵

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