「活動」「疲労」「休養」の三角形では疲れは取れない
疲れたら寝ればいい──当たり前と思っていたこの事実、ですが50代にはこれだけでは通用しなくなっているのは第3回でお伝えしました。
ではどうしたら、日々の疲れを取り除けるのでしょうか。
「私たちは、職場や学校などに行って仕事や勉強をしたり、家庭のことや親関係のことなどさまざまな『活動』をします。
活動すると当然のことながら『疲労』を感じますね。疲労を感じたら『休養』を取ります。
こんなふうに、私たちは『活動』『疲労』『休養』の3要素でできたトライアングルを繰り返しています。
でも第1回でお伝えしたように、約8割の人が日常的に疲れを感じているというのですから、このトライアングルはどこか間違っている、もしくは足りないのではと言わざるを得ません。
スマホの充電に例えてみましょう
夜の間に充電をして100%になっている状態から、日中の活動によって10%くらいまで減ります。夜にまた充電器につないでおくものの、50%までしか充電できないうちに朝を迎えてしまう。
翌日は50%のところからスタートですから、早い段階で充電が枯渇してしまうのは目に見えています。
これを私たちに置き換えてみると、『こんなにパワーが少ないのでは満足に仕事ができないな』と簡単にイメージできるでしょう。
もちろん、急性疲労の段階でしっかり寝ることで、100%のフル充電にもっていけるならそれでOK。
でも、ただ寝るだけでは、体を機能させるシステムそのものが低下している50代は、そこまでもっていけない人が多いのも事実です」(片野秀樹先生)
休養に活力を足すことでフル充電にもっていける
そこで片野先生が考えるのは、休養に+αをすること。
「+αとは『活力』です。
辞書で『疲労』という言葉を引いてみてください。
対義語のところには『活力』とあるはず。
前述のトライアングルに、疲労を打ち消す『活力』を加えて『活動』『疲労』『休養』『活力』の四角形にするのです。
休養で50%までしか戻せないところに、活力を高めることでフル充電に近いところまでもっていく。
そうすれば、翌日はエネルギーがたくさんある状態からスタートできるということです」
活力を加えるには『軽い負荷をかける』のがいい
では活力を高めるには、具体的にはどうしたら?
「逆説的に聞こえるかもしれませんが、『あえて軽い負荷をかけること』。
『超回復理論』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
あえて負荷をかけたトレーニングをすると、その直後は疲れて体力が一時的に低下しますが、そのあとに十分な休養をとることでトレーニング前より体力が向上するという現象です。
激しい筋トレを行った後に2~3日筋肉を休ませることで、トレーニング前よりも筋繊維が大きくなる、というのも同じ理屈。筋トレをする人にはおなじみかもしれませんね。

休養にあえて軽い負荷を加えることも、これと同じ理論で活力を高める効果が見込めるのです。
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元の体力が10だとして、負荷をかけることで8まで一時的に下がる。でも回復時には11に上がっている。
そして次の休日には同じように負荷をかけたうえでしっかり休めば、回復時に12に…というように、
加齢で低下する基礎体力に抗い、徐々に基礎体力を上げてバランスをとっていけるのです。
当然のことながら、今疲弊し切っている人は、まずは十分に体を休めてマイナスを0の状態までもっていくことが先決です。
ですが、まだちょっと疲れているけれど気持ち的には余裕があるな、という人はぜひ軽い負荷をかけて活力を高めることを試してみてほしいと思います。
ヨガやハイキングなどの運動系はもちろんのこと、本を読んだり映画を観たり、習い事をしたりといった運動以外のことでももちろんOK。
50代にとっての正しい休み方は、ただ『寝る』だけではなく、軽い負荷をプラスすること。
まずはこれを覚えてほしいと思います」
イラスト/二階堂ちはる 取材・文/遊佐信子
【教えていただいた方】

一般社団法人日本リカバリー協会代表理事、ベネクス執行役員。東海大学大学院医学研究科、国立理化学研究所客員研究員等を経て現在は老人病研究、未病研究等に携わる。休養に対する社会の不理解を解消すべく、多方面で活躍。著書に『「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出した あなたを疲れから救う 休養学』(東洋経済新報社)がある。
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『「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出した あなたを疲れから救う 休養学』



