今年3年ぶりに、山鉾巡行および神輿渡御が行われる「祇園祭」。
すでに京都の町では、そのムードが高まっています。
京都三大祭りのひとつ、夏の風物詩となっている「祇園祭」は、長刀鉾をはじめ、華やかに飾られた山鉾の巡行が有名ですが、それらの山鉾を建てる町では、もうひとつの楽しみがあるのです。
宵山の期間に、商家や町家などで秘蔵の品々を公開して祭りを盛り上げる習慣があり、それが「屏風祭」と呼ばれるもの。
普段は入ることができない歴史ある町家の格子越しに、座敷に飾られた掛け軸や骨董の品々、そして屏風なども眺めるのは、「祇園祭」ならでは、大人の楽しみです。
室町通や新町通などに軒を連ねる呉服商。その近く、三条烏丸にある「千總」は、京友禅の老舗。弘治元年(1555年)に法衣織物業として創業。江戸中期には、法衣商として寺院や宮家の御用を務めた歴史があります。
まさに芸術品とも称される見事な京友禅の着物が、本店に披露されています。
その2階にある「千總ギャラリー」は、日本の文化などをより多くの人に知ってもらいたいという思いから作られたスペースで、そこでは460年を超える歴史を誇る「千總」が収集あるいは製作した品々が、年間を通じ、さまざまな企画展として無料で公開されています。
この夏は、「千總の屏風祭~明治の屏風祭ふたたび~」というテーマで、120年前に公開した作品を8月22日まで展示。明治時代の人々が目にした作品が、今、目の前に再び並びます。
ギャラリーにずらりと展示された屏風…。
じっくりと鑑賞してゆきましょう。
観光客で賑わう町中とは異なり、ここは大人がゆったりと京都の美に触れ合える場所といえましょう。
展示されている作品は見ごたえのあるものばかりで、例えば、
円山応挙の弟子のひとり、江戸中期の絵師、山口素絢の「やすらい祭図」。
京都「今宮神社」の疫病退散を祈願する春の祭りの様子が、生き生きと描かれています。
また、幕末から明治にかけて活躍した日本画家、岸竹堂の「牛馬図」(明治28年)。
特に、屏風いっぱいにあふれる馬の躍動感が見事な作品は、見るものを魅了します。
屏風を立てて、眺めることを意識して、手前に来る部分と奥に引っ込む部分から、立体感がいっそう。なんでも屏風を平らに伸ばすと馬の胴体は、長く間延びしてしまうそう。
「千總」の当主が大切にした品々は、京都の町人文化の円熟度を物語ります。
他にも、「祇園祭」とゆかりの深いものも展示され、ひとつひとつ丁寧に見てゆくひとときは、なんとも心安らぐもの。
そろそろ町には、「祇園囃子」が聞こえてくる時期を迎えます。
宵山の時期、ぜひ訪れてはいかかでしょう?
さらに1階には「千總」のオリジナル和装雑貨などのショップもあり、和服好きにはおすすめです。(オンラインショップもあります)
「千總ギャラリー」
京都市中京区三条通烏丸西入ル御倉町80(千總本店2階)
☎075-253-1555
入館時間 11:00~18:00(火・水曜休館)入館無料
「千總の屏風祭」5月28日~8月22日開催
京都の文化・観光を伝えるブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」