久々のフィンランド。やっぱり好きだなあと思うツボはいろいろあるのですが、そのうちの1つが、街のあちこちで目にするアートやデザインです。
今回ひときわ目立っていたのがこちら。ヘルシンキ中央駅とお隣の地下鉄カンピ駅の間の広場にあったスタチュー(彫像)「Moss Giants(モス・ジャイアンツ)」。
彫刻家キム・シモンソンの作品で、Amos Rex(アモス・レックス)という美術館の屋外施設に、手話で会話をする子どもが4人ほど展示されています(2024年10月20日まで)。
このAmos Rexは、ラシパラツィ広場の地下に広がる美術館。オープニング展で、チームラボが展覧会をやったことでも知られ、地面からぽこぽこと飛び出した丸い天窓と地下の美術館が繋がっている独創的な美術館です。
Amos Rexを手がけたのは、フィンランドの建築家集団「JKMM」。フィンランドの主要都市を歩けば、JKMMの建築物にぶつかると言っても過言ではないくらい、あちこちにJKMM建築があります。私が目にしたものだけでも、古都トゥルク市立図書館、建築家アルヴァ・アアルトの街として知られるセイナヨキ市立図書館、女性画家ヘレン・シャルフベックのゆかりの地、タンミサーリの美術館Chappe、そしてこちらのAmos Rex。
JKMMは、元々あった建物を生かしつつ、そこに新しい空間とサプライズを加え、訪問者たちをわくわくさせてくれる!そんなイメージがあります。
こちらがセイナヨキ市立図書館
セイナヨキはフィンランドから北へ列車で3時間半ほどの街。アアルトが建てた歴史的建築群のある街として知られ、アアルトは図書館も建設しました。その「アアルト図書館」の隣に、JKMMの「アピラ図書館」が建てられ、2つの建物は地下で繋がっています。
アピラとはフィンランド語でクローバーという意味で、デザインのアイディアは、日本の折り紙からインスピレーションを得ているそう! 特に印象的だったのは、壁にくり抜かれた穴蔵のようなスペース。読みたい本を持って、潜り込むことができます。
他にフィンランドのパブリックアートといえば、ヘルシンキの地下鉄です。
こちらはエスポー近代美術館「EMMA」の最寄駅タピオラで見つけたパブリックアート。そう、こちらも先ほどのキム・シモンソンの作品です。
もう1つ、私の好きな地下鉄アートはこちら。ハカニエミ駅のグラフィックアート。
アルミ・テヴァの作品です。彼女はフィンランドの陶磁器ブランドの「アラビア」にデザイン提供するなど、企業とのコラボレーションも多く、セラミックアート作品もつくっています。今年は日本でも個展が開催されました。ますます活躍の幅を広げている彼女。目が離せません!
ちなみにハカニエミ駅といえば、「ハカニエミ・マーケットホール」。映画『かもめ食堂』で片桐はいりさんがトナカイ肉を買っていたマーケットです。ずっと改修工事をしていたのですが、2023年にリニューアルオープンしました。
ここは地元の人が通う、食の台所であり、おみやげ探しにぴったりなかわいい雑貨もそろっているので、ヘルシンキに行ったらぜひ寄りたいスポット。
写真中央のフィッシュケーキ(魚のハンバーグ)などは、加熱せず食べられるので、ホテル滞在中でも手軽に食べられますよ。
そして、マーケットホールの2階にあるステーショナリーカンパニー「Kehvola(ケフボラ)」のショップは、私のお気に入り。ティモ・マンッタリをはじめ、人気イラストレーターが手がけたアイテムがずらり。フィンランドの文化や自然、街をモチーフにしたアイテムがそろっているので、旅の思い出にいろいろほしくなっちゃいます。
実は、このティモ・マンッタリさんにインタビューしてきました! ご興味のある方は、よかったらこちらの記事をどうぞ。https://kukkameri-magazine.net/timo-manttari/
せっかくだからヘルシンキから足を延ばして、アート&デザインの旅がしたいという方には、フィスカルス村がおすすめ。ヘルシンキから列車で1時間、バスに乗り継いで20分のところにあります。
フィスカルス村は、オレンジの持ち手のハサミで知られる「フィスカース社」が1649年に創業し、発展してきましたが、工場が撤退すると、廃村の危機に。その後、アーティストが移り住むようになり、現在ではアーティストヴィレッジとして親しまれています。
この夏、私が訪れたときは、「フィスカルス ヴィレッジ アート&デザイン ビエンナーレ」を開催中(2024年9月1日まで)。ローカルアーティストを中心に、国内外からアーティストやデザイナーが多数参加。斬新で驚きに満ちた現代アート作品やデザインが展示されていました。
日本とフィンランドを拠点に活動している日本人アーティスト、坂田ルツ子さんの作品も。棺がモチーフになっています。会場のスタッフの方たちと少しだけお話ししたのですが、坂田さんの作品に興味しんしんの様子でした。
ビエンナーレのオリジナルトートも販売していました。かわいい!
こちらは校舎をリノベーションした建物。村の中心にあり、ショップやカフェ、ギャラリーなどが入っています。
他にも小さな店やギャラリーが軒を連ね、またビエンナーレの開催に合わせて、村のあちこちで、展覧会が開催されていました。
個人的なお気に入りは、アーティスト雑貨がそろう店「VANJA SEA & FRIENDS」。オーナーは、店の名前にもなっている、テキスタイルデザイナーのヴァンヤ・シーさん。彼女の母親は日本人で「日本語は少しだけ…」と恥ずかしそうに、日本語を話すヴァンヤさんがとってもキュート。店内には、彼女とアーティスト仲間が手がけたファブリックやニットのアイテムが並んでいます。
特にツボだったのが、JOHANNA K. DESIGNのきのこ柄ウールパンツ。残念ながら、下半身ぽってりの私にはサイズが合わず、断念しましたが、代わりにミトンを購入しました。
フィスカルス村の中心には川が流れていて、川沿いにカフェやレストラン、ミュージアム、クラフトビール工房などが並んでいます。
カフェでは、通常イースターシーズンしか食べられない「ラスキアイスプッラ」(カルダモンのきいたパンに、クリームとジャムを挟んだお菓子パン)を発見。もちろん、見つけたら食べないわけにはいかず(笑)。
川沿いを散歩するだけでも気持ちいいフィスカルス。川の先には湖が広がっていて、子どもたちが湖に飛び込む光景は、北欧の夏の風物詩です。写真のこの子たちも、この後ダイブしていました。
広場ではマーケットも開催中。古本、ヴィンテージグッズ、ハンドメイドアイテムなどが並んでいました。
フィスカルスが、一番活気があるのは夏から秋のはじめ頃までですが、フィンランドの友人の話では、プレゼントを買い求めるお客さんでにぎわうクリスマスシーズンもおすすめとのこと。フィンランドに行く機会があったら、ぜひ一度訪れてほしいスポットです。
新谷麻佐子さんの北欧旅連載
『今人気の田園ツーリズム。フィンランド、ラトビア、エストニアに行ってきました!』