これは私が仕事をしていて、いつも思っていることです。アマチュアとか新人の漫画家と話してると、アイディはすごくフレッシュで、私が考えつかないような発想を持ってたりするんだけど、実際、作品になるとつまらなくなる。描きたいところだけ、すごく力を入れて描いて、なぜそうなるかとかいう説明がおざなりで、説得力がなくバランスが悪くて、独りよがりの作品になりがちなのよね。
一方、プロは経験があるぶん、できることと、できないことがわかってるから、アイディアに制限がかかっちゃうってことはあると思う。そこはマイナスよね。
でも、そこから作品を練って、ブラッシュアップさせて、読者を引き付けるように物語を展開させていくことができるから、仕上がりとしては、プロのほうが楽しめる。これこそがプロとアマチュアの差だなと思うんです。
実際、すごく斬新な発想だったり、絵の完成度が高かったりして脚光を浴びる漫画家って、画力だけでは長続きしないですね。
逆に長くプロを続けている人は、たとえ絵が下手でも、物語の構成力が優れていて、「続きが読みたい!」「最後はどうなるのか知りたい!」って、読者におもしろく見せることができる人なんですね。
私は漫画って、「挿絵がいっぱいついてる小説」だと思ってるの。つまり絵よりストーリーの方がはるかに大事で、ぐいぐい読ませる構成力やぐっと胸に迫るようなセリフ、何よりいちばん大切なのは キャラクターの魅力かな。
話はすごく面白いんだけど、主人公が魅力がなくてつまらないなんて、聞いたことがない。いかに魅力的なキャラクターを作れるかが鍵で、ストーリーはそのキャラを説明し引き立たせるために必要な道具です。プロは道具の使い方がうまい(笑)。
こうやって書いてみると、 物を作るっていう仕事はみんな似てるなぁと思います。
もちろんそこに斬新なアイディアが加われば最強なワケで、そこはたとえば若者と仲良くして、若さならではの刺激を受けて、自分にはない発想を仕入れるとか、取材で補うとかもアリですよね。才能っていうと、ひらめきとか、天賦のものっていうイメージがあるけれど、プロの世界は、それだけでは成り立たないっていうお話でした~。
「プライド」集英社文庫<コミック版>
取材・文/佐藤裕美
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