クワで地面を耕すと、淡く湿った土の香りがモワっと鼻先に。
それは冬とも夏とも違う、この時期だけに感じる春独特の、ちょっとくすぐったいような香り。
ひな祭りが終わり、暦でいう”啓蟄(けいちつ)”を過ぎたあたりで、春の畑も動き始めます!
クワでしっかり土を耕し、程よく柔らかくなったら苦土石灰(くどせっかい)をパラパラ撒き入れます。
これは土の状態を整える一つの方法だそうで、元気な土があってこその野菜、掘って種蒔いてだけじゃないんだな・・と毎回思う大事な工程。
「明日、天気予報に傘マークが出てる! ならば苗植えちゃおう!」
ジョウロでの水やり代わりに雨を利用するなんて方法も、畑をやるまで気付きもしなかった作戦。
キャベツ、茎ブロッコリーを。
成長した時に隣同士がぶつかり合わないよう、必要な間隔を想像して苗を置いていくこの作業は、絶対に育つとしか思ってないので、なんとも平和で穏やかな時間。
見事、翌日の天気予報は当たって雨が! 一人「しめしめ」と喜んだのでありました。
一方、違う日の種まきでは土をならした後、15センチ幅間隔で筋を作り、その筋の上に5センチほど間隔を空けて、一粒ずつ、小さな種を落としていきます。
「この列には水菜、その次は赤水菜、サラダからし菜・・・」
「こっちはラディッシュ、あやめ蕪・・・」
「オレンジ人参、黄色人参、紫人参・・・」
こちらは成長過程で隣り同士窮屈そうになってきたら、間引き野菜として抜いて食べる楽しみも(むしろそれも計算して種を蒔いているとも)!
突然ですが、ここで問題。
一体これ、何の種だか分かりますか??
木の皮のような、松ボックリを細かくしたような、リスの食べこぼしのような。
収穫出来たら生でサラダに、茹でてナムルに、鍋に入れても、ペーストにして茹でたジャガイモなんかと和えても美味しい野菜は・・・?
春菊っ!! こう見えて春菊っ!! 種に春菊感なしっ!!
春の菊だなんて素敵なネーミングにあって、この素朴な種の色! 育った時とのギャップ!
こうも春菊感ゼロの茶色の種が、どのように太陽の下で育ち、いつ緑々とした葉に変わるのか本当に不思議。
お野菜を食べる楽しみはもちろんの事、これまで知らなかった種まきの不思議と向き合うのも面白いので、収穫以外の畑もやっぱり大好き。
さて、次の畑では何の種を蒔こうかなあ・・・。
加藤紀子
公式ブログ 「加藤によだれ」 https://ameblo.jp/katonoriko/
Web連載 「加藤紀子@山形」 http://www.okaze-gatta.jp/essay
「加藤紀子のエスプリ カフェ プラス」 http://www.ellebeau.com/electore-journal/n_kato/
フリーペーパー 「月刊てりとりぃ」 でも連載中