円山公園の一角に紅葉の木々に抱かれるように佇む「茶菓 円山」。知る人ぞ知る甘味処です。木戸を通り、暖簾の掛かる入口から店内に…。入口のそばには茶室の待合のような空間もあり、まるで茶室のような風情を感じます。
「え、ここが甘味処?」と思わず声を上げたくなる店内は、外観で感じたごとく、茶室を思わせる上質感あふれる設えが…。幅広い漆塗りのカウンターをはじめ、掛け軸と花が設えられた床の間、障子越しに外陽がこぼれ、まるで茶室にいるような心地になります。
ここに訪れるリピーターは、上質の京都を味わいたい人たちがばかり。開業以来、甘味や食事を担当するのは、京都出身の菓子職人の江見智彦さん。ここで味わえるものは、すべて江見さんが食材を選び、手間を掛け手づくりしたそう。使う器はいずれも趣がある作家もので、そこに盛られた品々との景色は、まさに茶人好みです。
京都祇園の友人に勧められて訪れから、すっかりこのお店のファンになってしまいました。観光客が行き来する円山公園の一角に、こんな素敵な甘味処があったとは…もっと早く知っていればよかったと思ってしまいます。
さて、「ぜひ食べてね~」という友人のおすすめは、京のお揚げと九条葱がたっぷり入った「煮麺」1400円。「お汁も全部飲み干したくなる美味しさよ」と。その言葉通り出汁の美味しさ、三輪そうめんの細さ、九条葱とお揚げと共に味わい友人同様すっかり汁まで完食です。
添えられた昆布の佃煮もお手製というこだわりように感激しきり。
さらに何度も訪れている友人のおすすめは、「福蜜豆」1200円。大振りの碗の中には、紫花豆、白花豆、青えんどう豆など色とりどりの福々しい豆たちがゴロゴロと。なんでもそれぞれの豆は、その美味しさを活かすために別々に煮られるという手間がかかった豆に驚きます。サイコロのような大きな寒天と共に、白蜜、黒蜜を掛けて頂きます。今まで見たこともないような蜜豆…こんなに豆ひとつひとつの美味しさを楽しめる蜜豆には、かつて出会ったことがありません。
甘味は、ほかに「栗のみたらし団子」「いちじくと豆腐餡」「御善哉」なども、訪れるたびにひとつずつ食べたいと思ってしまいます。
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甘味と共に欠かせないのが、お茶。抹茶だけでなく、煎茶、玄米茶、ほうじ茶が揃い、好みの急須で煎れていただきます。
棚にズラリと並んだ作家ものの急須…どれにするか選ぶのも心躍るひとときです。茶釜のお湯を注ぎ、丁寧に煎れるお茶の味わいに思わず心和みます。
また後日伺い、気になっていた「御雑煮」1000円をいただきに…。京都らしい白味噌仕立てで、中には白餅が沈み込んでいます。まずは汁を味わいます。出汁の旨味と白味噌の風味が絶妙に調和した汁は、手間をかけて作られたことが伺える滑らかさ。姿を現した白餅を箸でつまむと、底にカラシが…。ピリッとしたカラシの味わいが、白味噌仕立ての雑煮を引き締め、また新たな味わいに…。年間を通じて楽しめる雑煮ですが、特に寒い京都の冬の旅には、ぜひ味わいたいもの。
京都を訪れたら必ず立ち寄るという顧客が多い「茶菓 円山」。その気持ちがよくわかる居心地の良さ。京都を訪れる友人を、ぜひ連れて行きたいお店です。
茶菓 円山
京都市東山区八坂鳥居前東入ル円山町620-1-2(円山公園内)
075-551-3707
営業時間 11:00~19:00 火曜休み
小原誉子ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」
http://blog.goo.ne.jp/mimoron/