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おうちで楽しむ、京の味と物⑯旬の味を上品な甘さで楽しむ、一子相伝の技で生まれる金平糖 「緑寿庵清水」

小原誉子

小原誉子

「京都観光おもてなし大使」&旅ライター
アナウンサー、テレビ番組プロデューサーなどを経て、集英社「エクラ」などのライターに。
2011年より京都に在住。
京都など、日本の文化・観光情報を伝える
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おうちで楽しむ、京の味と物 

          

全国的な移動自粛が解除されましたが、感染者数の増減は不安定で、都道府県をまたぐ移動にはまだ十分な配慮が求められますね。

「京都旅はまだしばらくお預け」と、慎重派のみなさんに、おうちにいながら京都気分に浸れる、『おうちで楽しむ 京の味と物』をご紹介。インターネットや電話などで、全国どこからでも注文できる品々です。

 

 

第16回

旬の味が上品な甘さで楽しめる、

一子相伝の技で生まれる「緑寿庵清水」の金平糖

 

「金平糖」のまるで小さな星のように可愛らしい姿は、代々一子相伝で受け継がれた技の結晶であることをご存じですか?

季節限定 「涼竹糖」(ラズベリー、ヨーグルト、巨峰、ルビー、天然水サイダーの5種類の金平糖が2個ずつ入った10個入り6,307円)

 

京都の東に位置する吉田山の麓、京都大学にほど近い場所にある歴史を漂わす店構えの「緑寿庵清水」は、日本唯一の金平糖専門店。江戸時代から代々店主に受け継がれた伝統の技で、今も珠玉の金平糖を作り続けているのです。

 

そもそも金平糖は、種子島の鉄砲伝来と時を同じくする頃、ポルトガルからもたらされ、おそらく信長も食したと想像される南蛮菓子のひとつです。

弘化4年(1847)に創業した京都の「緑寿庵清水」の金平糖作りは、以来、代々一子相伝で受け継がれた技。現在の店主、五代目の清水泰博さんは、先代が始めた旬の素材などを加えた今までにない味の金平糖づくりをいっそう発展させ、その種類は、季節限定のものを含め約80種類にも及びます。

 

 

さて、金平糖の星形は、どうしてできるかご存じですか?

金平糖の核となるのは、イラ粉という1ミリにも満たないもち米の粉。それを大きな鉄の釜に入れ、蜜を少しずつ掛けては、コテでほぐしていきます。熱せられた釜の中を転がりながら、乾いた部分に蜜が付き、その部分が不思議…「イガ」となってゆくのです。

 

ここ「緑寿庵清水」の金平糖は、細かいイラ粉から、店頭に並ぶ大きさになるまで、なんと1種類につき20日間近くかかるそう。その作り方は、門外不出。もちろんレシピなどはありません。すべて体で覚え、身につけてゆく技術です。

 

 

そこで、金平糖の作り方をご店主の奥様、清水珠代さんに伺うことに。

「金平糖づくりは、とてもデリケートで、天候や気温、湿度などに影響を受けやすく、職人は、その時々で金平糖の状態を見極めて、コテの入れ方や蜜の濃度、釜の傾斜・温度・回転速度などを微妙に変えているんです。それは、まさに五感を研ぎ澄ました作業で、一度釜に金平糖を入れると、作業の区切りまで1日中、職人たちはその場を離れることはできません。本当に少しずつしかイガを大きくすることはできないので、何日も作業を繰り返さなければなりません。少しでも気を抜くと、釜の上でくっついたり、割れてしまうことも…。そうなったら、それまでの作業は、すべて水の泡になってしまいます。機械化ですか?きっとそれでは、ここならでは上質の味は出せないと思っています」と。

なんと作業をする工房の気温は、夏の時期には50度以上になるのだそう。しかも、職人として一人前になるには、基本の砂糖の金平糖の体得にも「蜜掛け10年、コテ入れ10年」と20年はかかるとか…。さらにさまざまな味の金平糖は、その昔、加える素材の性質により砂糖の結晶が阻まれることから、作るのは不可能と言われてきた幻の技。それを可能にした技を編み出したのが「緑寿庵清水」なのです。それほど大変な金平糖づくりを今もしているのは、代々受け継がれた技と情熱、そして日本唯一の専門店である使命を持たれているからなのではと推察します。すでにルーツであるポルトガルでは、その製造技術は失われ、渡来した日本にのみ残った、歴史の小さな宝物といえましょう。

 

また、職人が丹精込め、愛情をかけて小さな核から大きく育てあげる金平糖は、吉祥菓子とも言われ、さまざまなお祝い事に用いられることでも知られます。皇室の御慶事に引き出物として贈られるボンボニエールには、小さな金平糖が納まっています。結婚式をはじめ、さまざまなお祝い事に品格ある菓子として使われることも多いそう。

 

 

店に並ぶ品々の中で、やはり注目したいのは、季節の限定品。金平糖に四季の趣を取り入れたところに、やはり京都らしさを感じます。

夏には、空中に吊るして栽培する糖度が高いスイカを使った「空中すいかの金平糖」(箱入り2,268円)や最高級のマンゴーによる濃厚でコクのある「完熟マンゴーの金平糖」(箱入り4,158円)をはじめ、夏らしいさっぱりとした味わいのピンクグレープフルーツの「ルビーの金平糖」(籠入り864円)などの品々が味わえます。

 

「賞味期限は、常温で1年ですから、贈答品として喜ばれています。なかでも抹茶の味をいっそう引き立てる茶道専用の甘さを抑えた金平糖は、核に特撰のもち米を膨らませた中が空洞の玉あられを使っているので、口どけがやさしく、茶人の方々にもご愛用頂いています」と清水さん。なるほど核が幾分大きく蜜の層が薄いので、噛むとあっさりとした上品な味わいが広がります。

紫蘇や柚子、梅などの素材を使った「特撰玉あられの金平糖」(3種入り3,672円~)

 

 

「こんな金平糖もあるんですね~」とお店で驚いたのは、ブランデーや日本酒、ワインなどを使った、最も至難の技術を駆使して作られる「究極の金平糖」です。それぞれのお酒の持つ芳醇な味わいが楽しめ、パッケージも洒落ていることから、プレゼントに好評なのだそう。

まさに、伝統の技をベースに、時代の風をまとったような金平糖の進化を感じされる品。

 

 

店には、本当に種類豊富に並ぶ品々。でも「作るのに限りがありますので、売り切れになってしまうことも多いんです」とのこと。百万遍の本店限定の品もあり、京都旅の折には、ぜひ訪れたいところですが、「まだ京都旅は、ちょっと~」という方には、お取り寄せも可能です。

 

ホームページから品を選び、電話かFAXで申し込み、その後、配送方法や料金などの相談をしてください。尚、インターネットでの販売取扱は、一切していないので、その点はご注意を…。

 

京都でお世話になっている方に、ご挨拶に伺う折に、季節の味の金平糖を持参したところ、「まぁ、こんな上等なものを…」と「緑寿庵清水」の文字を見て感激の様子。京都人もその価値を認める「金平糖」。確かに只者ではない雰囲気が、小さな一粒にも漂うようです。

 

 

 

緑寿庵清水

京都市左京区吉田泉殿町38番地の2

営業時間 10:00~17:00 水曜休み(祝日は営業)

☎075-771-0755 FAX075-771-0766

ホームページ

 

 

 

小原誉子のブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」

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