こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
今回は、東京国立博物館 平成館で開催中(~2024年3月10日〈日〉)の特別展「本阿弥光悦の大宇宙」をご紹介します。
光悦の作品でわたしが真っ先に思い出すのは洒脱な手びねりの茶碗なのですが、この人が陶芸に取り組んだのは晩年のことです。それ以外にも実にさまざまなジャンルの革新的な作品を制作したマルチアーティストで、光悦村と呼ばれる芸術家村を作って独自の文化を築いたプロデューサーでもあります。
今回の特別展はその多岐に渡る芸術活動を「大宇宙」と捉え、総合的に光悦の功績を見通すものです。
本阿弥光悦は刀剣の研磨、手入れ、鑑定を生業とする本阿弥家の出身です。
本阿弥家は足利将軍家の刀剣御用を代々務めてきた名門。光悦自身も家業に従事したのでしょうが、光悦が研磨に関与したとされる刀剣は残っていないとのこと。
こちらは光悦が所有したと伝わる唯一の刀です。作者は本人ではありません。
こちらは本阿弥家が発行した折紙に捺した銅製の印章で、本阿弥宗家九代光徳が豊臣秀吉から下賜されたものと伝わります。刀剣は戦闘に使われるだけでなく美術品としても珍重され、格付けが行われました。
折紙はその刀剣の格を記した証明書です。本阿弥家が発行した折紙がついた値打ちの高い刀剣は、武家が家臣に与える恩賞としても使われました。
室町時代に勃興した京都の町衆の多くは、日蓮上人を開祖とする仏教の宗派である日蓮法華宗の信徒でした。本阿弥家も代々熱心な日蓮法華宗の信徒で、もちろん光悦もそのひとりでした。
こちらは書の名手としても知られた光悦が書いた文字を彫った扁額です。扁額とは、寺の門やお堂の上に掲げられる寺名を彫った額のことで、千葉の中山法華経寺内の法華堂に掲げられていたものです。
桜と山吹の花が咲き乱れる美しい屛風は天才画家、俵屋宗達の画と伝わります。
その上に金銀泥で装飾した色紙が30枚貼り付けられ、そのうち4枚がのちの時代の後補で、26枚に光悦が『古今和歌集』の和歌を一首ずつ墨書しています。このようなコラボも総合アートプロデューサーでもあった光悦の作品の特徴のひとつです。
光悦と言えば蒔絵の作品も有名。
こちらは本阿弥家の菩提寺である京都の本法寺に伝わる螺鈿の経箱。光悦はこの寺に法華経8巻などのお経と、それを納めるこの箱を寄進しました。華麗で繊細な唐草文様の真ん中に、蒔絵で「法華経」という文字が描かれています。
光悦蒔絵を代表する作品。
真ん中が膨らんだ蓋といい、ランダムに散らされた文字といい、デザイン感覚の斬新さに驚かされます。
これも光悦と宗達のコラボ作品。飛び立つ鶴の姿を優美に描いた宗達の下絵の上に、光悦が三十六歌仙による秀歌三十六首を墨書。
しかし、部分的に、下絵の金銀泥が文字より上にのった個所などがあるため、光悦と宗達は同じ場所で一緒に制作したという説もあるそうです。天才アーティストがひとつの部屋で話し合いながら作業するなんて、想像するだけで胸躍る光景ですね。
そしてやはり、光悦と言えば茶碗。ろくろを使わず、手びねりで作り上げられた絶妙なフォルム。浪打ち、たわむ口やひび割れなど、偶発的な要素を作品の一部として取り込むセンス。いつまでも眺めていたくなる奥深い魅力があります。
特設ショップのオリジナルグッズ。洒脱なデザイン感覚が生かされています。
特別展「本阿弥光悦の大宇宙」
東京国立博物館 平成館
2024年1月16日(火)~3月10日(日)
※会期中、一部展示替えがあります。詳細は公式サイトでご確認ください。
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