こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。
今回は、世田谷美術館で開催中(2024年9月21日《土》)~11月17日《日》)の特別展『北川民次展─メキシコから日本へ』をご紹介します。
わたしは海外に渡って活躍した画家に興味があったため、昔から北川民次については知っていましたが、多くの方はあまりご存じないのではないでしょうか。
かなり長命な画家で、戦前にメキシコに渡り、帰国後も東京や愛知県で作品を作り、子供の教育などにも携わった方ですが、大きな回顧展は30年ぶりとのこと。今回改めて作品を見ると、メキシコの風土を盛り込んだ作風がとても面白く、他の日本人洋画家とは一線を画すところがあります。
こちらは北川民次(1894~1989)のポートレート。1949年撮影ということなので、55歳のころです。年齢よりも若々しく、エネルギーに満ちているように感じられます。
20歳でアメリカに行って働きながら絵を学び、1920代にメキシコで画家、教育者として活動。1936年に帰国後は東京と愛知県に住み、長く作品を発表し続けました。1955年には再びメキシコに渡り、壁画にも取り組みました。
メキシコ先住民たちが踊る様子が描かれています。
カラフルな衣装とさまざまな楽器が、いかにもメキシコ的で、旅心を誘われます。
手前の赤ちゃんを抱く女性と、奥には棺桶を墓地へと運んでいく葬列。
生と死の対比を鮮やかに表現した絵です。
日本に帰国後、戦況がどんどん悪化したため、おそらくこれは、公の場に発表することを意図せず制作されたものと推測されています。戦地に向かう若い兵士もそれを見送る人々も皆一様に何かをあきらめたような無表情。北川民次自身が、この戦争に対して抱いていた否定的な思いを表しているようです。
メキシコの葬儀の様子を描いたものですが、実は、戦後日本の民主主義の苦難の歩みと挫折を表現しているということです。「二十年目」とは、終戦から二十年が過ぎたということでしょう。
夜空を飛ぶ謎めいた精霊たちと、その下で蠢き、何かを叫ぶ人間たちの姿。
百鬼の「鬼」とは、どちらを指しているのでしょうか。
メキシコと言えば、多くの美術ファンが思い出すのは壮絶な人生を送った女流画家のフリーダ・カーロ。これはフリーダとその夫の画家、ディエゴ・リベラのアトリエ兼住居だった家です。北川民次は最初のメキシコ滞在時に彼らと会ったようです。また、当時メキシコ旅行をしていた藤田嗣治とも交流がありました。1955年、メキシコ再訪時に、北川民次はこの家を訪ね、リベラへのインタビューを行いました。
メキシコの美術雑誌に「メキシコの日本人画家」というタイトルで紹介された絵の一枚。
アマリリスの花を見つめて何かを語りかけているようなロバ。優しいまなざしが印象深いですね。
カゴメと言えばケチャップ、ケチャップと言えばトマト。
旧本社ビルの壁画を依頼された北川民次は、メキシコこそがトマトの原産地だと考えていたので、メキシコからトマトの種を取り寄せ、栽培しながら構想を練ったとのことです。
生誕130年記念
北川民次展─メキシコから日本へ
世田谷美術館
2024年9月21日(土)~11月17日(日)
𠮷田さらさ 公式サイト
http://home.c01.itscom.net/
個人Facebook
https://www.facebook.com/yoshidasarasa
イベントのお知らせFacebook