こんにちは。美容ジャーナリストの齋藤薫さんのインタビュー第2回です。
第1回を読んでいただけましたか。今回、齋藤薫さんをインタビューして文章にまとめてくださったのは、MyAge世代の美容エディター・松本千登勢さん。おふたりは、松本さんがまだ若い頃から、多くのお仕事をともにされてきたとか。その関係性もあって、この示唆に富んだインタビューが生まれたのかもしれません。ぜひ、お読みくださいね。
さて、前回は50歳を迎える「49歳」の不安や焦り、そして50代の過ごし方について語ってくれた齋藤さん。
今回は、齋藤さん自身の50歳を迎えたときの経験、美容についてのお話です。
やるか、やらないか、そして、どこまでやるか
ちなみに、齋藤さんは「49歳」の壁を、どう乗り越えたのだろうか?
「私の場合は、更年期がひどかったから、
それが抜けただけですごく楽になりました。
体の不調も心の不安もすべて、更年期で説明がつくぐらい。
ただ、自分で不幸な部分を見ない努力はしていましたね。
例えば、夜はお風呂に入らない。
なぜなら夜は不幸が忍び寄ってくる気がしたから。
例えば、自分にとってストレスになることはしない。
私の場合は美容室にも行かなくなって…。
その方法は人それぞれ違いますが、
〝不幸に気づかない〞生活をするのは大事だと思います」
そしてもうひとつ。齋藤さんの体と心の向きを変えたのは、
意外にも「筋肉」だったという。
「一時、体を鍛えたことがあったのですが、
筋肉がついたら、立ち上がったり動いたりするのが、
単純に早くなったんですね。
何か取りに行こうとするとき、
前なら『どうしよう? まあいいか』なんて思っていたのに。
そして、確信したんです。
『身のまわりをきれいにしよう』も『明日こんなふうに過ごそう』も
『ちょっと旅行に行こう』も、きっかけはすべて筋肉。
日々を潑剌と過ごす前向きさ、幸せを自分からつくっていこうとする力は
筋肉から生まれるんだ、って。
心と体の密接なつながりを改めて痛感しました」
美容の進化やおしゃれの選択肢が増えたことも、背中を押してくれた。
「客観的にどう見られているかは別にして、
ヒールを履かなくちゃ、おしゃれをしなくちゃ、メイクしなきゃ、
というのはいちばん簡単なことでしょう?
単純に、やるか、やらないかのどっちかだから。
私はこんな仕事に就きながらも、
頭の中の美容やファッションの比率があまり大きいほうではなかったんですが、
歳を重ねて逆にやる意義が明確になりました。
やらないと途端に『汚くなる』から。
ほかのことがあまりに複雑すぎるから、
美容やおしゃれは簡単に思えてきたんです。
買えばいいんだ、やればいいんだって」
大人は、いかに清潔感を新しくつくっていくかがテーマ
年をとるとは、汚くなること…
その残酷な「気づき」も、49歳が焦る、
大きな要因なのだろう。
「以前から『美=清潔感』というのが私の持論。
年をとると、清潔感がなくなってくる。
清潔感がなくなることこそが老化と言ってもいいくらい。
つまり、アンチエイジングとは、汚さとの戦いなんですね。
だから大人は、いかに清潔感を新しくつくっていくかがテーマ。
何もしなければ、汚いだけ。でもやりすぎればもっと汚い。
そのバランスをとるのが重要なんです」
そうだった、とりあえずやるのは簡単だ。
ただ考えないとやりすぎる。
可能性も選択肢もあるだけに、どこまでも。
まちがえると「いつでもどこでも、1分でおばさんになれる」と齋藤さん。
「年齢によっても、その人によってもバランスは違ってくると思うんですね。
自分の場合は、何をしたら汚くならないか、
その正解はその人が考えなくてはならないと思うんです。
私の場合は、やりすぎると必ずケバくなる。
他の人が着て美しい服がケバく見える厄介なタイプ。
下品に見えたらいちばんつらいから、
やりすぎないようちゃんとコントロールし、計算するということ。
メイクやおしゃれを始めて30年、40年たっているのに、
未だにそこに気づかないでいるとやっぱりつらい」
(つづく)
[右]
齋藤 薫 Kaoru Saito
profile
1955年生まれ。女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト&エッセイストに。
女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。
『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)など著書多数。
[左]
松本千登世 Chitose Matsumoto
profile
1964年生まれ。美容エディター。
出版社勤務を経て、現在はフリーランスとして活躍。
齋藤薫さんとの出会いは編集者となるより以前にさかのぼる。
広告代理店勤務を通して知り合い、その後多くの美容特集で企画をともにしている。
撮影/杉山雅史(C-LOVe) 原文/松本千登世