老舗が作ったヘアカラー用化粧刷毛
日を追うごとに鮮やかな紅葉が町に広がる京都。「今年は、どこの紅葉を見にゆく?」と友人たちと楽しみに…。おしゃれをして外出したくなる季節です。
さて、京都の町歩きを楽しんでいた時に、ふと足を止めたのが、東洞院通の「ホテル日航プリンセス」の向かい側にある古い大きな町家。表には「藤井松華堂」と書かれた、見るからに歴史がありそうな構えお店です。ここは創業以来200年、表具用の刷毛を作り続ける老舗。表具刷毛というのは、屏風や掛け軸、襖絵などを整えるのに、糊を置いたり、はがしたりするために使用される平たい形の刷毛。今も、国宝や重要文化財の修復には、ここの刷毛が使われるそう。
明治になり、優れた刷毛づくりの技術は、化粧刷毛にも応用され、「化粧筆 元祖 ふじや」と称し、京都の女性たちが愛用するさまざま種類の刷毛や筆を生み出しました。店内には、白粉、眉墨、口紅などに、その用途にあった毛質、大きさなどが異なる化粧刷毛が所狭しと並びます。その中に、ちょっと気になる刷毛を発見。それが今回ご紹介するヘアカラー用の「毛染め化粧刷毛」です。
歳を重ねるごとに、白髪が増え、ヘアカラーをする回数も増えました。最近は、自分で簡単に染められるヘアカラー剤が注目されています。かくいう私のそれを利用するひとりです。
ヘアカラーをするとき、特に気を使うのが、髪の生え際と分け目に現れる白髪。「この刷毛は、そういう方のご要望で開発したんです」とご店主。一般の化粧刷毛には、リスやヤギなど上質のソフトな毛が使用されますが、これはヘアカラー剤に対応するようナイロン製の材質が使われています。しっかりと髪の生え際にヘアカラー剤を付着させると共に、刷毛についたものをきれいに洗い流すことができます。
先端は、分け目を決めるために、細い形状。使いやすい大きさと太さの木製の軸は、ヘアカラー剤が付着しにくいように、ウレタン加工を施しています。まるで透き漆仕上げのようなクラシックな雰囲気も素敵です。伝統の技術を新しい用途に使ったオリジナル製品。
気になる生え際のポイントカラー染めに重宝する化粧刷で、使いやすさから、美容師さんも、わざわざ買い求めに訪れるそう。
昔は、毛染めの技術がなかったから、白髪の目立つ50代は、和服の色も、かなり渋めに。でも今は、ヘアカラーの普及で、いつまでも黒々した髪でいることができます。「だから和服も、従来の年齢相応の選び方より、実年齢より10歳以上若い色の着物を選ぶといいですよ」と以前、和服店の女将に言われたことを思い出します。確かに、どんなに肌の艶がよくても、髪が白いと老けて見えるもの。気になる白髪のケアをして、さぁ、おしゃれをして、紅葉狩りに出掛けましょう。京都の秋は、これからが本番です。
化粧筆 元祖 ふじや
京都市下京区東洞院高辻上ル ☎075‐351-2834
営業時間:9:00~18:00 不定休
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」