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十和子道第16回「更年期は、変化する体と向き合いながら、頑張ってきた自分にエールを送る時期」

君島十和子

君島十和子

君島十和子. 1966年生まれ。モデルとして活躍後女優に。1996年、結婚を機に芸能界を引退。現在は自身のコスメブランド「FTC」のクリエイティブディレクターとして数々のヒットを生み出している。2女の母。

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取材期間1年以上、収録写真は約400点。自宅で撮影し、オール私服で登場した〝ライフスタイルブック〟の決定版、それが『十和子道』。発売されるや瞬く間に大増刷され、なんと6刷を記録した大ヒット本です。その本のもととなった連載(過去にOurAgeにて配信されたもの)の一部をお見せします!

「十和子道」 第16回

「更年期は、変化する体と向き合いながら、頑張ってきた自分にエールを送る時期」

 

40代、50代を迎えた女性にとって、大きなハードルとなるのが更年期。

50歳を目前に控えた私は、まさに更年期といわれる時期の真っ只中です。同年代の友人が集まれば、話題は自然と更年期に及びますし、個人差はあっても誰もが心身のどこかに、「今まではなかった不調」を感じています。

十和子、更年期について語る

私は幸いなことに、のぼせや鬱や倦怠感、イライラなどの更年期特有の症状といわれるものは出ていませんが、それでも若い頃とは比較にならない肩こりや以前よりよくおきる頭痛などの不定愁訴は自覚しています。

 

今回更年期というテーマでインタビューを受ける際、担当編集者が「閉経も、やはりアラフィフ女性には避けて通れない大事なテーマのひとつ」とおっしゃっていました。

 

 

そして「閉経を迎えたときの感じ方は人それぞれだけど、なかでも〝老いの入り口に立った〟〝もう女じゃなくなったように思える〟と寂しさを感じる方も少なからずいるようです」とも…。

 

 

もしそうなのだとしたら、他人の無遠慮な発言はもちろん論外ですが、でも当事者である私たち女性も、「閉経=老人へとまっしぐら/女が終る」という何の根拠もないイメージに、必要以上にセンチメンタルな気分になってしまっているような気がします。

 

人の体ほど多様なものはないしパーソナルなものはないのに、「更年期」「閉経」となると、どこか後ろ暗く、自嘲的で、みな一斉にネガティブなイメージに埋没してしまいます。

 

 

確かに閉経を迎えると、生殖はできなくなります。子どもを産むという機能や役目を卒業しますが、女性まで卒業するわけではありません。

 

アラウンドフィフティって、まだまだ若さと元気がある年代です。その若さや元気に水を差される気がするので、「老いの入り口に立った」「女が終る」なんて、そんなふうに思うのはやめにしたい……と思うのは私だけでしょうか。

 

私に「その時」が来たら、一体どんな気持ちになるのかまだわかりませんが、きっと寂しさよりも「解放感」という、閉経の持つポジティブな側面に反応すると思います。

更年期の辛い症状も安定してくると聞いていますし、ブルーデーがなくなることで、今まで以上に爽快にアクティブに動ける、そんないいことだってあるはず。

十和子道第16回「更年期対策 十和子流」

起こることには全て、「いいこと」と「悪いこと」の両側面があると思うので、私は「どう思いたいか」「何を信じたいか」で、閉経を受け入れたいと思っています。

「何かが終った体」は「新しい体」でもあるんだな、と。

得意の「はい、終わり! はい、次!」です(笑)。

かといって、「さっぱりした」「せいせいする」「解放された」というキーワードが、開き直るような不遜な態度や怠惰、がさつなふるまいに結びついてしまうのは嫌です。

 

 

女性としてのプライドを持ち続けるのは自分の意識次第。

閉経後こそ、女性として磨きをかける勝負のときだと思っているので、あの手この手で、「新しい体」をカスタマイズするつもりでいます。

例えば「トキメキやドキドキ」の効用について。

 

ここ数年、韓流スターに始まり、若いアイドルや美しいスポーツ選手にハマる中高年の女性が増えていますが、正直申し上げると私には「?」でした。

韓流ドラマもなぜか女優さんの顔や肌ばかり見てしまうし、自分の子どもほど年の違うアイドルさんには母性しか感じられず…(笑)。

だから同世代の友人たちが、好きなアイドルやご贔屓の俳優さんの話をするたび、みな幸せそうになり、軽く10才は若返っている顔を見ると、ちょっとだけ悔しくて(笑)。

一抹の疎外感を感じつつも、こんなにも彼女たちをドキドキさせる〝トキメキ〟って、すごい!と。これが女性ホルモンに効いている…そんなふうに即物的には考えませんが、やはり「トキメキ」や「ドキドキ」は、女性を艶やかに美しくするエネルギーです。

 

私たち夫婦は仕事柄(主人はFTCの代表取締役社長、私はクリエイティブディレクター)一緒に行動することが多く、会社でも出張先でも家でもいつも一緒。長い時間を共に過ごしています。オンの顔もオフの顔も互いにすべて見せ合い、それは夫婦を超えた最早〝同志〟という感じ。「夫婦は全てのことが分かり合えるわけではないということすら、分かり合えている」仲です。

 

秘密も隠し事もありませんが、大抵のことが許されてしまう関係だからこそ、「(自分に)許さない、(主人に)見せない」と私なりに決めていることがいくつかあります。

 

ひとつは、下着。

十和子愛用のランジェリーポーチはFELICE TOWAKOのオリジナル

(愛用のランジェリーポーチはFTCのオリジナル)

 

旅行のときは普段使いではない下着を用意しています。

ホテルの部屋で着替えなどして、下着姿を見られる(見せる?)機会があるかもしれないので、ここはハレの日の下着で。家族旅行で子どもたちも一緒なので、勝負する気も下心もありませんが(笑)、女性としてのマナーとおしゃれ心を失くしたくはありません。

 

そして、いくら可愛いエレガントな下着とはいえ、下着姿で主人の前に現れることも極力しないようにしています。特にガードルを履く姿だけは、〝同志〟といえど絶対に見せられない(笑)。見せてはならない姿だと思います。

 

い つだったか出張先のホテルで着替えているときに、主人がふいに入ってきたことがあったのですが、ガードル装着完了寸前の私を見て、「あー、びっくりした。 ターミーネーターかと思った」と(笑)。こういう事故(?)は長く一緒にいればこそ多発するもの。ガードルの〝トキメキ殺傷能力〟は極めて高く、見られた方も見た方もトキメキなど瞬時に打ち砕かれてしまいます(笑)。

 

0367

主 人は、休みの日に私がパジャマ姿でころころとリビングに転がっていようと、ソファに寝そべってシートパックをしていようと「ん? ぜんぜん気にならない。 どうぞ存分にリラックスしてください」と、言ってくれる寛容な男性ですが、食事の作法には、厳しい人です。どんなに疲れていても、どんなに時間がなくて急いでいても、買ってきたお弁当でもサンドイッチだけでも、心ここにあらずのだらしない食べ方を嫌います。

 

ついつい片肘をついてしまう、急いでおかずを口に放り込んでしまう、ものを噛みながらおしゃべりしてしまう、思わず足を組んでしまう…。

 

作法のない食べ方をする人を見ると「家族でも友人でも他人でもがっかりしてしまう」と嘆いていたので、そんな姿だけは見せないように気をつけています。いつでもどこでも、フルコースでも宅配のピザでも食事はゆっくりと丁寧にいただくように。

 

夫婦といえども、「親しき仲にも最低限の礼儀あり」で、互いに感じるトキメキ(微量かもしれませんが…)を打ち砕くことがないようにしたいものです。

トキメキは非日常の空間で手に入り、日常という慣れた生活の場で、知らず知らずのうちに失ってしまうものだと思うので…。

 

 

50歳前後で閉経を迎えるとしたら、死ぬまであと30年以上(平均寿命から考えると)も女性の人生が続いていきます。

そう思うと更年期も閉経も通過点のひとつに過ぎないなと思うのです。

あまり情緒的にならずに、自分に訪れた「生きていればこそ起こる当たり前のこと」と受け止めたい。私は酸いも甘いも飲み込んだその行き着く先にある、女性としての色艶や味わいを信じているんです。

 

 

だからメイクもスキンケアもファッションも、もっともっと貪欲になるべき。

十和子 スキンケア中

「どうせもうこんな年齢だからやっても仕方がない」とか「私なんかが今さらがんばっても無駄でしょ」と、キレイになることをあきらめて、スネて、手放していくには、50歳って早すぎます。

 

もともと私は「私なんか」という言葉が嫌いです。

以前別の取材でもお話したのですが、「私なんか」という言葉は謙虚というより卑屈に聞こえてしまうのです。そんなことを言っている暇があったら、自分のいいところを積極的に探しましょう。自分の美しさや素晴らしさ、可能性をもっと信じましょう。

絶対に何か、きっとあるはずです。

 

確かにどんなに頑張っても努力をしても、50代の肌は10代や20代の肌には戻りません。けれどじっくりと自分の肌に向き合い、必要と思われるケアすると艶感やうるおいやハリなど、与えたら与えただけ、手をかけたらかけただけの応えを肌は出してきます。若い肌にはない手ごたえが確実にあります。

 

私と十代の娘が丹念にスキンケアをしても、翌朝、「すごい!ツルツルになってる」とより実感できるのは、たぶん私の肌です。油分も水分も十分に足りている娘たちの若い肌には、感動するほどの手応えはないでしょう(笑)。

 

ただしケアを一日怠れば、すぐに不調につながるのが40代以降の肌です。手をかければかけるほど豊かに、放置し怠ればすぐさま衰える、よくも悪くも「応え」のいい肌なのです。

また「プラスアルファ」がサマになるのも年齢を重ねた肌です。若い肌ではトゥーマッチになってしまう発色のいいチークやシックな赤い口紅、パーリーな艶のあ るメイク、盛り気味のヘア、ポップな色のヘアカラー……そんな風に50歳からのスキンケアには思わぬ報酬があります。シワやシミがあってもよく手入れされたお肌は、清潔感や品やその人の持つ情緒の豊かさを感じさせます。

 

一方で、お金にあかせて、高額な美容液を買いそろえ、「これだけつぎ込んでいるんだから、もう大丈夫でしょ」と安心し努力を怠ると、必ずどこかで驕ったり横柄になったりするもの。良くも悪くも、そんな心のあり方や生き方が肌や顔に出てしまう年齢です。だからあきらめずに、拗ねずに、誠実に、丁寧に、お手入れしなくては!と思うのです。

 

どんなにお金をかけるより、どんな化粧品より、「キレイでありたい」と強く願うことこそが、その人をキレイにすると信じています。

だからキレイになる努力をすることの後ろめたさや罪悪感を取り払うこと。

(罪悪感を感じる方が、けっこう多いように思います)

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周囲の頑張っている女性に対して、シニカルなことを言わず、素直に応援すること。

(「そんなによく頑張れるわねぇ」とか「いい年をして張り切りすぎ」とか…。努力する人の足を引っ張るような女性はなかなかキレイになれない、というのは嘘のような本当の話です。女同士、一蓮托生でキレイになるのがいちばん効果的!)

変化する体と向き合いながら「一生、この体、大事にするからね。だから死ぬまでキレイを目指すわよ」と、もう一度決心し、自分の心と体にエールを送る時期。

それが更年期や閉経を迎えた時なんじゃないでしょうか。

「きっとそうに違いない!」、ポンと膝を打って、ひとり合点する私を見て、主人がニヤニヤしています…。

 

撮影/冨樫実和、 本多佳子  取材/稲田美保  ヘア/黒田啓蔵

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