東京—ブリュッセル 9090マイル
イラスト:KOTO
ビールの首都ルーヴェン
ベルギービール巡り中、多くのビールラバーに出会いましたが、今回は、出会った中でもっともビールを愛する男性に出会った街、ルーヴェンのお話です。
ルーヴェンのあるブラバンド州で作られる地ビールはなんと400種類以上。ベルギービールは季節限定ものも合わせて全土で4000種類もあるそうですが、そのうちの約10分の1がこの地で作られていることになります。
8世紀からの歴史を誇るこの街は、大学の街としても知られています。10万人の住人のうち35000人が大学生。ひとつの郵便受けに名前がたくさん並んでいる建物は、学生が暮らす寮だそうです。
「そんなに大勢の大学生がビールの首都に住んで大丈夫なんですか?」
とガイドさんに聞いたところ
「ベルギー人は、若い頃からビールの飲み方を躾けられているので、飲みすぎて乱れたりすることはほとんどありません」
だそうです。
ちなみに、ルーヴェン市の公務員は、ランチに一杯ビールを飲めるクーポンをもらえるそうですよ。
では、数多くあるビアカフェから、まずはここへ。
2000種類のビールを揃えた「The Capital (ザ・キャピタル)」
見よ、この分厚いメニューを!
「ザ・キャピタル」の有名なビールリスト。
まさにトップメゾンのワインリストにも負けない充実のメニューです。
2000種類のビールはたった1種類を覗いてすべてベルギー産のもの。唯一の例外はオランダのトラピストビール。
ここでまず、地元のボランティアガイドさんより、ビールの味わい方を学びます。
この真剣な面持ちに、習う側にも緊張が走ります。
「ビールを味わうには、まず香り。香りを吸い込んでから、まず舌の上で感じる。それから喉で味わいます。最後に口の中でくちゅくちゅと泡を立てて、フレーバーを思いっきり吸い込んでください。はい、では飲んでみて」
ここで飲んだビールは「ルバニウム(ルーヴェンのラテン名)」
17~18世紀に「King of Beverage (飲み物の王様)」と呼ばれ、世界中で飲まれていたビールを再現したもの。アルコール分7.5%のブロンドビールは、口の中でくちゅくちゅすると(ビールでくちゅくちゅしたのは初めてでしたが)、 セラントロー(香菜)とレモンの香りがかすかに感じられます。
カウンターにずらりと並んだ生ビールサーバーも圧巻です。ここでは、20種類の生ビールを味わえます。
ぴかぴかに磨かれた生ビールサーバー。
横にはこんな看板が・・・。
「あなたを振った昔のガールフレンドのハートと同じくらい冷たいビールをご提供します。」
居心地の良い店内でビールを端から試し出したら、1日がここで終わるので要注意です。
図書館にいるようなインテリアが居心地の良い店内。
The capital
Grote Markt 14 3000 Leuven
Tel:+32 (0)486 21 90 18
ベルギーには、なんと醸造所から1.5km以内でしか売っていないビールがあるそう。
醸造所より1.5 km以内でしか飲めない地ビールを求めて
「Metafoor (メタフォール)」
ルーヴェン近郊のウェフターの地ビール「Jack Op」はアルコール分5.5%、ランビックとブラウンビールのブレンドです。年間11万リットルしか製造せず、しかも醸造所から1.5km以内のお店でしか販売されていない希少銘柄。
ランビックがブレンドされているため、かすかな酸味と、フルーティさが感じられる味わい。1869年に生まれて、一時期生産中止となったものの、地元ファンの熱烈な要望に応えて復活しただけある美味しいビールです。お店にいる間、次から次へと注文が入っていました。
「グラス10杯くらいは軽いっすよ」という明るいスタッフ。
彼の指先の上で微動だにしないグラスを見て感動!
Metafoor
Parijsstraat 34 3000 Leuven
Tel:0032 497 47 72
http://www.leuven.be/bierstad/home/adressen-bierstad/de-metafoor.jsp
レアビールを飲んだ後は、ビール注ぎコンテスト第8位入賞者がいるお店へGO!
ビール注ぎ名人第8位のオーナーがいる
「Meseum Café Taste M (ミュージアムカフェ テイストM) 」
そして、いよいよビールを愛してやまない男、ビール注ぎコンテスト第8位、ミュージアムカフェテイストMのオーナー Mr.ビール、スティーブン・ボリオンさんの登場です。
スティーブンさんがビールを飲む様子を見ていると、「どれほど美味しいものを飲んでいるんだろう」と思わず同じものを注文したくなります。
彼が飲んでいる様子を激写してみました。
まずは慎重に香りを・・・。
なんて深みのある美しい色なんだ・・・
ごくっ。う、美味い!
はっきり言って、このビールは最高だぜ。
さて、この最高のビールはなにかと言えば、Alpaïde. Op vat(アルヴァイデ)というルーヴェンから約20km、ヒューガルテン所有の小さな醸造所生まれのビール。ヒューガルデンといえば、夏に欠かせない爽やかなホワイトビールで有名ですが(ロゼも最高ですよ!)、このビールはアルコール10%のダークビール。ローストしたコクと甘み、キャラメルやドライレーズンの風味がいかにも食欲をそそります。ぴりっと胡椒を利かせてローストした豚肉と合わせたら素敵なマリアージュになりそうな味です。
カフェのメニューには、常時60~65種類のビールが揃っているほか、新しいビールを楽しめたい人向けに、毎週5〜6種類の違うビールを仕入れているそうです。
Museum café Taste M
Savoyestraat 10, 3000 Leuven
Tel. :+32 (0)494 50 40 82
http://www.mleuven.be/en/practical-information/m-cafe/
最後はビールペアリングで伝統的ベルギー料理が楽しめる、とっておきのお店へ!
ビールペアリングを味わえるレストラン「Kokoon(コクーン)」
ベルギー料理は、日本ではあまり知名度がありませんが、この小さな国にぎっしりミシュランの星付きレストランが密集していることを知れば、どれほど美味しいレストランが多いか想像に難くないはず。
ルーヴェンの最後は、ルーヴェンらしくビールペアリングで伝統的ベルギー料理を楽しめるレストランコクーンをご紹介しましょう。
コクーンの入り口。 お店の前のテーブル席も早々と満席。ビールペアリングディナーを楽しむ家族連れで賑わっていました。
ビール中心のディナーの始まりは、「ブロンシュ・ド・ナミュール」(ホワイトビール)
イケメンウエイター多し。
アルコール度数4.5%。1858年創業のデュ・ボック醸造所製造。World Beer Award という賞を受賞歴あり。オレンジピールの香りが爽やかな暑い日に美味しいビールです。日本でも気軽に手に入ります。
前菜のアスパラガスには「ジラルダン・グーズ」(ランビックビール)
ジラルダン醸造所で作られた濾過されていない、瓶内二次発酵ビール。
グーズというのは、熟成期間1年の若いランビックと2〜3年熟成したランビックのブランドという意味。
自然発酵させて作る非常に個性の強いランビックビールで、酸味が強くドライ。アスパラガスと合わせて飲む、というよりも、ビールを楽しむために、アスパラガスと生ハムをちょこちょこ食べる、という感じ。
本場のホワイトアスパラガスの甘さにも感動です。ヨーロッパの人たちは、夏の間ムキになってアスパラガスを食べていますが、その気持ちわかるような気がします。
メインの豚肉のソテーに合わせるのは「ポッポロー」
北海地方で作られた濾過されていない瓶内二次発酵ビール。アルコール度6%。
サーフィン好きの醸造家が海を感じさせる味を目指して微量の塩を加えているため食事との相性が良いビール。
豚肉のソテーにも良く合うし、どんなメインディッシュとも合いそうな、性格の良さそうなビールです。
デザートのいちごのスープにバジルのアイスクリームには「リーフマンス・オン・ザ・ロック」(フルーツビール)
この取り合わせは、テーブルにいた全員から思わず歓声が上がったほど。甘酸っぱいデザートに、いろいろなベリーの味わいを複雑に秘めたリーフマンスを合わせると、ベリーとハーブのオーケストラを味わうよう。リーフマンは、色も美しく、目にもうれしく、味わって楽しいエレガントなビール。オンザロックと名前にあるように、氷を入れて飲むと美味しいカクテル風になりますよ。
Kokoon
‘s-meiersstraat 1 3000 Leuven
Tel:+32 16 23 07 26
ベルギーの街とビールに興味をもっていただけましたでしょうか?
今日もこれからビールを飲む予定のみなさま、ぜひベルギービールを試してください。香りを楽しみ、舌でまず味わい、喉の奥でさらに楽しんでから、くちゅくちゅ(ひとりの時限定で)したら香りを吸い込んで。
ワインに負けない複雑な香りと味をきっとお楽しみいただけるはずです。
<お知らせ>いよいよ東京でベルギービールウィークエンドが開催されます。
113種類もの個性豊かなベルギービールを味わうチャンスです。
‘16年9月16日(金)~25日(日) 六本木ヒルズアリーナにて
https://belgianbeerweekend.jp/ja/city/tokyo/view
取材協力 オランダ政府観光局 ベルギー・フランダース政府観光局 KLMオランダ航空
http://www.hollandflanders.jp/
井原美紀ブログ 旅に出よ!
http://ameblo.jp/surprise-enterprise/