筋肉の衰え、皮膚のコラーゲンやエラスチンの減少、骨やせなどが原因でまのびしやすくなる
年齢を重ねるにつれ、眉と目の間が離れてきて、鼻の下は伸びて長くなってきた…。
こんな状態になると、一気に顔の老け感が増すため、気にしている40代、50代は少なくないようですが、どんな原因が考えられるでしょうか? まずは眉と目の間のまのびについて、皮膚科専門医の渡邊千春先生にお伺いしました。
「眉と目の間がまのびしてくる大きな原因となるのが、上まぶたのたるみです。
上まぶたは、眼瞼挙筋という筋肉によって引き上げられています。でも、眼瞼挙筋は目をこする癖などによって負担がかかりやすく、それが積み重なるとこの筋肉が衰えていきます。
目のまわりの皮膚はほかの部分より薄いので、もともとたるみやすいのですが、加齢とともに皮膚の真皮のコラーゲンやエラスチンなどが減少していくため、弾力が失われ、よりたるみやすくなります。
そこに眼瞼挙筋の衰えも加わるため、上まぶたがたるんでしまうのです。
さらに加齢に伴って眼窩(がんか・眼球の入っているくぼみ)の骨の萎縮も進むので、目のまわりが落ちくぼんでくることも眉と目の間がまのびしてくる要因です。
上まぶたのたるみが進むと、眼瞼下垂になってしまう場合も。まぶたが瞳孔の上まで十分に上げられない状態なら眼瞼下垂といえます。
眼瞼下垂は、前述した以外に、ハードコンタクトレンズも要因のひとつ。ハードコンタクトレンズは、まぶたを内側から圧迫してこする刺激になるので、眼瞼下垂になりやすいのです」
では、もうひとつのまのびしやすいパーツ、鼻の下はどんな原因が考えられるのでしょうか?
「鼻の下が伸びてくるのも、やはり皮膚、筋肉、骨などが関係しています。
目のまわりと同じように、加齢によって鼻の下の皮膚のコラーゲンやエラスチンは減少していきます。
加えて上唇を引き上げる働きがある上唇挙筋という筋肉も衰えてくるうえ、上顎骨の量も減っていくため、たるみやすくなります。
そうすると、上唇が内側に入り込んでいって薄くなるため、鼻の下が長く見えるようになってしまうのです」
まぶたのたるみを防ぐには、とにかくこすらず、保湿&紫外線対策は必須
では、改善するにはどうしたらよいのでしょうか?
まず、眉と目のまのびについて伺いました。
「とにかく、まぶたを強くこすらないことです。特にクレンジングのときはアイメイクを落とすためにゴシゴシこすってしまいがちなので要注意。クレンジングもスキンケアも、力を入れずに優しく行いましょう。
まつ毛のエクステをつけている人もいると思いますが、まぶたが引っ張られて負担がかかり、たるみが加速してしまう場合があるので、40代、50代にはあまりおすすめしません。
また、目のまわりは皮脂腺が少なく乾燥しやすいので、しっかりと保湿をしましょう。肌にハリをもたらすレチノールが配合されたアイクリームを使うのもおすすめです。
紫外線はコラーゲンやエラスチンにダメージを与えるので、日焼け止めや帽子やサングラスなどで目元もしっかり紫外線対策をしましょう。
骨やせを防ぐために、タンパク質やカルシウム、ビタミンDなど骨に必要な栄養をしっかり補うことも大切です。
美容医療で改善するなら、ラジオ波(RF・高周波)を照射して、新しいコラーゲンの生成を促すサーマクールが効果的。
通常のサーマクールはまぶたへの施術はできないのですが、眼球に熱が加わらないように発熱深度を浅くしたチップを使用して行うサーマアイなら、まぶたにも照射することができます。
おでこの前頭筋にも照射するとより引き上がりやすくなります。
もうひとつ、肌育注射もよいと思います。
アミノ酸などを注入してコラーゲンの産生を促す方法で、上まぶたにも注入すると引き締め効果が期待できます。
そのほか、こめかみや側頭部などにヒアルロン酸注入をするのも選択肢のひとつ。目のまわりが引き締まって目が開きやすくなります。
眼瞼下垂になってしまった場合は、手術で改善可能です」
鼻の下のまのびは、ヒアルロン酸注入や肌育注射などで改善可能
では、鼻の下のまのびを改善するには?
「この部分も、保湿や紫外線対策、食事で栄養をしっかりとることは欠かせません。
それと、上唇挙筋を動かすトレーニングをして鍛えるといいのでは?と思うかもしれませんが、縦ジワの原因になりかねないのでおすすめできません。
鼻の下が伸びてきたのを改善するならやはり美容医療が効果的。そのひとつの方法が唇へのヒアルロン酸注入。
唇がリフトアップするので鼻の下の長さが短く見えるようになります。
肌育注射でヒアルロン酸を注入するのも効果的です。
保湿力が高まって肌がふっくらするので、そのうえでポリヌクレオチドやアミノ酸などの成分を注入すると、コラーゲンの産生も促されて肌にハリも出ます。そうすると鼻の下のまのびが目立ちにくくなり、顔の印象が若返ります」
【教えていただいた方】
千春皮フ科クリニック総院長。 1997年、板橋中央病院皮膚科医長。1999年、東京医科大学皮膚科勤務。2000年、東京医科大学皮膚科助手。2003年、肌クリニック大宮院長。2008年、 肌クリニック大宮 ベルビー赤坂総院長。2012年、千春皮フ科クリニック開院。2019年 、千春皮フ科クリニック広尾院開院。 保険診療と自費診療、両方に力を入れ、肌のことをしっかりと学んだ医師が美容皮膚科もやることで、トラブルがあったときにもきちんと対応ができ、保険も自費もトータルで肌の悩みに対応できることを大切にしている。皮膚科専門医、レーザー専門医、注入指導医。ボトックスやヒアルロン酸注入などのコンビネーション治療も得意。
写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂