“自分磨き”のための大人の手習い
Vol.10 【最終回】
女優・羽田美智子さんが精神科医でもあり禅僧でもある川野泰周さんに、「すきま瞑想」についてお話を伺っていく本連載。前回は、日々の暮らしの中で簡単に取り入れられるマインドフルネスの方法について学びました。今回は、「気づき」と「受容」の大切さについて伺います。
感謝と思いやりの心が
世界を変えていく
羽田 芸能界はつねに評価がついて回る仕事。でもその評価は決して正しいわけではなく、好みや時代性に大きく左右されると感じます。ぶれない自分でいたいから気にしないようにしてきましたが、憧れの先輩たちはこれを乗り越え、自分は自分と割り切ってきた方々。だから素敵に見えるのだと。
川野 そういう方は、精神性が磨かれていらっしゃるのだと思います。羽田さんもすばらしい気づきをされましたね。マインドフルネスで重要なのは「気づき」と「受容」。瞑想を続けていくと心の芯が整って、正しいものが正しく見えるようになっていきます。「PTG」(心的外傷後成長)という言葉をご存じですか。ストレスや心の外傷を経験したあとは、それ以前より強くなれることがわかってきました。
羽田 かさぶたができて、剝がれ、皮膚が再生するのと同じ?(笑)
川野 そうですね。以前より人や目に見えないものに感謝の気持ちが持てるようになります。羽田さんは先ほど、撮影時に風が止まったことに対して「ありがとう」とおっしゃっていた。そういう感性をお持ちなのはすばらしいこと。羽田さんのような方がいるとまわりに小さな変化が生まれ、自然とそのお裾分けを享受して、周囲の人も元気になるという現象が起こるのです。
羽田 もし私におっしゃったようなところがあるのだとしたら、うれしいです。つらいときに本当にそんな気持ちになれるのかは半信半疑。でも自分を認め慈しむ気持ちがあれば、今はまだ途中であっても前へ進む勇気が出ます。
お話を伺ったのは…
Taishu Kawano
川野泰周さん
1980年生まれ。精神科・心療内科医。臨済宗建長寺派林香寺住職。RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。医学部卒業後、建長寺専門道場にて禅修行、2014年より上記寺院の住職に。寺務のかたわら、クリニックにて精神科治療に従事。薬物療法と並行して、禅やマインドフルネスの実践を含む心理療法を取り入れた治療に定評がある。『ずぼら瞑想』(幻冬舎)など著書多数
次回は、今を楽に生きるために「今日からできる3つのこと」をご紹介します。
撮影/宮本直孝 ヘア&メイク/木下 優(ロッセット) スタイリスト/坂本久仁子 構成・原文/向井真樹