私が尊敬していて、長年家族ぐるみでお付き合いをさせていただいている、老舗メーカーの四代目社長がいらっしゃいます。
当然、出張も多く、国内外のホテルではスタッフへの細やかな挨拶を欠かさないばかりか、「挨拶は人だけにすればいいものではない」というユニークな考え方の持ち主です。
「自分を運んでくれた飛行機や新幹線などの乗り物、またホテルや訪問先の建物、自宅にも挨拶をする。飛行機に乗る前は『お世話になります』、降りる時には『無事に運んでくれてありがとう』。感謝を込めて心の内で唱えるようにしています」とのこと。
人に限らず出逢いを大切に、そんな丁寧な生き方が、“品格”として表にあらわれるようです。
その昔、江戸っ子たちは初対面の時に「初めまして」ではなく、「お初にお目にかかります」と挨拶していました。
この言葉には、「前世ではお会いしていたかもしれないけれど、今世では初めてお目にかかります」という意味が込められています。
人の縁は今生(こんじょう)だけではない、という深い意味があります。
私も初対面の時、相手がきちんと挨拶できる人かどうかをチェックするタイプなので、ここがちゃんとできていない人は、後々トラブルになりかねない、という例を数多く見てきました。
その人が何者か、得体が知れないのに、会話の途中から急に口を出してきたり、都合が悪くなるといつのまにか責任転嫁で消えてしまったり。そうならないためには、何事も最初が肝心です。
また、「受け入れとお見送りは感じの良いものにする」ことも大事です。
それを心得ているのは、ヘアメイクやエステシャンの方達です。
「お客様がご来店した際には、自分の家族のように暖かく迎え入れます」
そう、私に教えてくれました。
施術後は、「またお待ちしております」と目を見て笑顔で言う。何事も目を見てコミュニケーションするのが、適切で、感じの良い対応でしょうと。
なるほど、彼女たちと長続きする理由がわかりました。
お見送りといえば16年前、私が作家デビューをした、松下幸之助が創設した出版社の、当時の社長・江口克彦氏は、ご挨拶に伺った際の帰り際、私の姿が見えなくなるまで手を振っていてくださり、感動しました。
若輩者の私をこんなに大切にしてくださるなら、恥じないように一生懸命本を書かせていただこうと決意を固めたものです。
会食の後など、私自身もこのお見送りは実践させていただいております。
手を振る私に相手が振り返られ、照れ臭そうに手を振り返されると、それは武道でいう「心を残す」という型になるそうです。
お互いに、名残惜しい気持ちになるのです。それがまた逢いたいとなり、良いお付き合いに発展します。
第一印象は見た目、服装、態度から感じ取れるものです。
慌てず騒がず舞い上がらず、いつもよりゆっくり動くことを心がけるだけで、エレガントに映ります。
真摯に礼儀正しく、常に自分を磨き、小さなことにも「ありがとう」の言葉を欠かさないことです。
また、偶然どこかで憧れの人に逢ったなら、まずは臆さず挨拶することです。
「私はあなたのこの仕事が好きでした。あの作品に感動しました」など、具体的に伝えると印象的です。
感性を磨くためには、やはりどのジャンルでも一番と認められている人や場所に触れるようにしたいものです。
自分よりできる人たちとのつきあいは、最初こそ緊張するものの、知らない世界をたくさん教えてもらえて本当に刺激的です。
誰とでも一定の心地よさと緊張感のある、付かず離れずの関係を保ちつつ、いつでも相手に好意を持って接する。
まずは晴れやかな挨拶から始まるお付き合いを実践しましょう!
『一流のサービスを受ける人になる方法』(光文社)より
https://honsuki.jp/stand/7970.html
いつか
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