前回は、光野桃さんのインタビューと著書をご紹介しました。
私たちを勇気づけてくれる本はほかにもたくさん。6冊ご紹介します。
辰巳芳子さんの
スープ教室をライブ中継
『スープ日乗』
辰巳芳子 著/文藝春秋
2,500円
2016年1月で20周年を迎えた鎌倉スープ教室への入会は現在10年待ち!
その人気の教室の一部始終を、まるで実況中継のように記録した本書のページを繰ると、
目の前で辰巳先生の講義を受けているかのような錯覚を起こします。
春のあさりのコンソメから真冬のかぼちゃのポタージュまで、
レシピだけではわからない料理の勘所が伝わってきます。
料理が苦手な人にこそおすすめ。
とと姉ちゃんが
自らの人生を語る
『[ポケット版]「暮しの手帖」とわたし』
大橋鎭子 著/暮しの手帖社
900円
子ども時代、家に「暮しの手帖」があった人は少なくないはず。
暮らしに役立つ料理や一切の広告を排しての
商品テストなどの実用記事から、「すてきなあなたに」といった随筆まで
「家族を、女の人をしあわせにする雑誌を作りたい」と
花森安治とともに創刊したしずこさん。
唯一の自伝はNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモチーフに。
見出しの手書き文字に人柄がしのばれます。
生きづらさを感じる女性へ、
生き抜くための140の言葉
『上野千鶴子のサバイバル語録』
上野千鶴子 著/文藝春秋
1,250円
「敵に回したら怖いけれど、味方にしたら優しい」上野先生が、
人生から仕事や家族、老後そして未来に至るまで、
女性が感じる生きづらさに切り込み、腑分けする手際は痛快そのもの。
40年にわたり発表してきた膨大な著述の中から、
140の文章を集めた本書は、先輩から後輩への贈り物。
「逆風は快楽である」「女はコトバをも産む」など
著者の言葉から前に進む勇気をもらえます。
勇気をもらえる本、次のページに続きます。
大きな困難に直面したとき、
どう乗り越えたらいいか
『自分の「ものさし」で生きなさい』
酒井雄哉、村木厚子 著/日経BP社
1,400円
超人的な千日回峰行を2回も満行した天台宗大阿闍梨、
酒井雄哉さんの著書を読むことで、村木厚子さんは無実の罪で逮捕、
勾留という人生最大の苦難を乗り越えることができたのだそう。
その二人の対談で印象深いのは、
「誰でも仏様から人生の論文テーマを与えられる」
「大変な経験は、その後の人生に役立つ」という言葉。
この二人が語り合う一言一言には説得力があります。
世界の貞子が日本を、世界を
語る初の回顧録
『聞き書 緒方貞子回顧録』
野林 健、納家政嗣 著/岩波書店
2,600円
国連難民高等弁務官として10年間、クルド難民をはじめ
世界各地で頻発した難民問題に、自ら現地へ飛び、
決行した画期的な支援活動の数々について、
自分の人生を振り返ることをしなかったという著者が
インタビュー形式でまとめた回顧録。
人の命を守ることが第一、従来の仕組みがそぐわないのなら
変えればよい、という著者のシンプルで力強い信条は、
今こそ必要とされています。
最初で最後、
母と息子の映画談議
『ローマで語る』
塩野七生、アントニオ・シモーネ 著/集英社
620円
歴史作家である著者が映画製作にかかわる息子と、
古今東西の映画についてとことん語り合った一冊は、
著者いわく「塩野七生の私生活を公開する最初で最後の著作」。
書物と映画は同格という塩野家の価値観が、
思いがけずもたらした対談からは、
年代の差を超えて話し合う楽しさが伝わってきます。
著者も新たな一面を見せて、
息子とこんなふうに話ができる母親はいいなと思えます。
撮影/山口恵史(本) 取材・文/鈴木美穂