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憧れを現実に ——ツール・ド・フランスへ、再びの挑戦が気づかせてくれたこと

松浦まみ

松浦まみ

サイクリスト/食の思想家/環境活動家

宮澤崇史(元・オリンピック代表選手、プロ・ロードレーサー)マネージャー/Team Bravo協働仕事人

大学卒業後に渡仏、映像制作の世界へ。その後リゾートホテルの広報、サイクリングプログラム企画、食の教室と、「好きなことしか仕事にしない」とのモットーを貫いたキャリアを経て、現在は元・プロ・ロードーレーサー・宮澤崇史のマネージャー兼・協働仕事人として自転車関連のイベント企画に携わる。

instagram: https://www.instagram.com/mamimatsuura

世界最高峰の自転車レース「ツール・ド・フランス」の一区間を走る市民レース、「エタップ・デュ・ツール」。この大会を目指して、毎年15,000人もの剛脚サイクリストが世界中から集結します。

「不可能なことに挑戦したい」という、中二病ならぬ中年女病の闇雲な欲望に取り憑かれた私は昨年、身の程知らずにもこの大会に応募し、奇跡の完走を果たすという経験を得ました。

完走後、人生”お初”のメダルに感涙した昨年の私

 

成功体験は、人生最大の麻薬。あの快感をもう一度、とばかり、よせばいいのに今年も勢いで申し込んでしまいました。

ただ今年はチームで参加なので、去年のように元オリンピック代表選手の宮澤を私専用のアシストにするという禁じ手を使うわけにはいきません。

しかも今年は距離135km、獲得標高4,563mという、昨年の169kmより距離こそ少ないものの、獲得標高で比べれば昨年の4,017mと大きく差が付くほどの厳しいコース。ロードバイクで135kmという距離はわりと簡単に走れるのですが、4,563m登るには相当の覚悟が必要です。

しかし、なんと日本を発つ直前に、肺炎を起こしてしまった私。

この難コースに立ち向かうというのに、病み上がりで。

大丈夫か、私。

 

不安な私を、それでも優しく手招きする、夢のように美しい景色。

 

さて、本番当日の朝。

依然として、体調は優れません。

それでも走り出せば調子も出てくるだろうとチームメンバーと共に出発、人がごった返すスタート会場に到着します。

 

スタート前でチームメイトと

 

出走を前にめちゃくちゃ緊張した昨年に比べると、今年は全く緊張感がありません。

どのくらいかというと、うっかりスタート時間を間違えて出走前からタイムロス(つまりは出遅れ)をしたほどの緊張感の無さです。

チームワークどころか、初っ端からチームメイトの足をひっぱる私。

 

スタート直後はとりあえず笑顔

 

スタートから20kmほどは緩やかなアップダウンの繰り返しで、順調に走り続けます。
が、峠の上り坂に入ると、途端に遅れる私。

肺炎の後だからなのか、異常に息が苦しい。

どんどん遅れ始めるので、仕方なく宮澤が横に来て私の背中を押しながら並走します。

延々とアシストされ続けること小一時間、殆ど体力は使ってないのに意識が朦朧となる私。

「残念だけど、ここまでだね」

との宮澤の言葉に抗おうにも声すら出ず、30km地点でリタイヤ決定。

コーナーで自転車を停め、大会スタッフにリタイヤを告げます。

3名のチームメイトに別れを告げた後はその場にへたり込み、次々と坂を登ってくる無数のライダー達をぼんやりと眺めていました。

あれほど準備に膨大な時間とエネルギーを費やし、フランスくんだりまで来ながらあっけなく終わってしまった今年のエタップ。

思いがけない幕切れに、ぼう然としたままで、言葉も出てきません。

 

峠を駆け上がる参加者たち

 

しばらくすると回収バスがやってきて、私と自転車を拾ってレースの最後尾についていきます。

空っぽな気分で外を眺めていました。

それが私ときたら……。

次々と姿を表す壮大な光景にいつの間にか心が高揚していました。

バスの前を呑気に走るライダー達はおそらく、いつリタイヤしても構わないというつもりなのでしょう。

時間を気にせず、本当に楽しそうにリラックスして走っていました。

それは、見ているこっちが幸せになるくらいに。

 

最後尾をリラックスするして走る参加者たち

 

美しい景色をドライブで楽しんだだけの、この日。最後まで来ても、それほど悔しい気持ちは湧いてきませんでした。

そして、今年よりも遥かに来年へのモチベーションが上がっている自分に気がつきました。

今から思うとですが、昨年完走できてしまった私は、今年のエタップには憧れを抱けなかったのかもしれません。気持ちの入らなさが健康管理の怠慢につながり、この結果を招いたのでしょう。

情けないフラれ方をしたことで、再びエタップは私の目標になりました。

追いかけていた人が振り向いてくれると興味を失い、冷たくされると再燃する、ってやつですかね?(笑)

 

ロズラン峠の絶景を駆け抜ける選手たち

 

あなたにとって、「憧れ」とはなんでしょうか。憧れの対象は、人であったり、コトであったりと、さまざま。

でも、考えるだけでドキドキする対象であることには変わりないはずです。

自分の手には到底届かない、遠いところにあるもの。遠いけれども同時に近づきたい、あるいは自分もそうなりたいと同一化願望を掻きたてられる対象。

 

私の場合、子どもの頃から憧れの対象は、ずばり「身体能力の高い男子」でした。

イケメンとか勉強ができるとか優しいとかはどうでもよく、単純に駆けっこで常に一番だったり、ここぞという時にロングシュートを決めるような男子。

そんな憧れを男子に抱いていたことは、大人になってからはすっかり忘れていたのだけれど、仕事で自転車選手達と接するようになって、再びあの頃の憧れが復活。

私も彼らみたいになりたい。

現実の私ときたら、女だし、人生半分過ぎちゃったし、体弱いし、しかも筋金入り運動音痴だけど。

ママチャリに乗れなかった私がロードバイクに乗れたんだから、ツール・ド・フランスのコースだって走れるに違いない。

そんな意気込みで挑んだ昨年のドキドキが、私に戻ってきました。

来年のエタップに向けて、また頑張ろうっと。

ドキドキが目下、私の生きるモチベーションです。

 

え?最近ドキドキしたことなんてない?

この年になってそんな感情は面倒くさい?

そんなことおっしゃらず、美と健康のためにもおおいにドキドキしましょう!(笑)

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