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性交痛があり、セックスがつらいです。腟が乾燥しているのでしょうか?これは閉経と関係がありますか?(53歳)【更年期のフェムゾーンの悩み】

なかなか人に言えない悩みのひとつSEX。一人で悶々としている人がどれだけいることでしょう。若いときと違い、閉経前後からは肌がカサついたり髪がパサつくのと同じように、腟や外陰部も乾燥してしぼんでいきます。性交痛も当然、多くの人が感じます。こういった体の変化はなぜ起こるのか、八田先生に聞いてみました。

 

答えてくださった方

八田真理子
八田真理子さん
産婦人科専門医
公式サイトを見る

幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。

 

ご存じですか?「GSM(ジーエスエム)」という症候群があることを

 

もちろん、性交痛は閉経と深い関係があります!

これはもう典型的な更年期の症状ですね。40代から目立ってきます。

 

閉経の前後5年、合計10年間を「更年期」と呼ぶのですが(コレはとても重要なので必ず覚えておきましょう)、この期間は、いわばさまざまな不調が起こりやすい時期。

女性ホルモンの減少による揺らぎ(下のグラフの真ん中、ピンクの部分)が女性の体にいろいろな変化を起こすのです。

 

【閉経・更年期の女性ホルモン値】

 

腟が乾燥する、痛い、かゆいなども代表的なその変化のひとつで、昔はただの老化現象として、放置されてきた症状。

それでも少し前は「老人性腟炎」などという病名がつけられていました。

 

でも、考えてみてください。戦前、寿命が50歳くらいだった頃は、閉経したらもう寿命が来ていました。そんな時代ならまだしも、現在、40代50代の女性が「老人性〜」なんて言われてもピンとこないですよね?

 

そして近年、婦人科や泌尿器科、特に女性医学の分野でクローズアップされるようになったのが「GSM」という概念です。

これは「Genitourinary syndrome of menopause」の略で、2014年に新たな概念として欧米の国際学会で提唱されたもの。

「閉経前後から起こる腟の乾燥や萎縮、性交痛、尿トラブルなどの問題」を指します。

GSMと総称されたことで、それまで線を引くのは難しいとされていた尿もれなど骨盤底筋の衰えからくるトラブルも、婦人科と泌尿器科で一緒に治療していこうという傾向になってきたのです。

 

日本語でなんと呼ぶかさえ決まっていなかったのですが、2年ほど前に日本産婦人科学会、日本女性医学学会が、GSMの日本語訳を「閉経関連泌尿生殖器症候群」としました。

これ、長くてちょっと言いにくいので「GSM(ジーエスエム)」と覚えておけば大丈夫です。

 

♦GSMの3大症状とは

 

GSMの具体的な症状については、大きく分けて3つ。

●腟と外陰部のトラブル(乾燥、かゆみ、ヒリヒリした痛みなど)

●尿トラブル(尿もれ、頻尿、膀胱炎など)

●性交トラブル(性交痛や出血・痛みによる性的意欲の低下など)

 

ほら、この中にしっかり性交痛も入っているでしょう!

40代以降の女性には、もはや「疾患」として認められる症状なんです。

 

動物は生殖機能がなくなったら性交はしません。死が待っているだけ。

人間だけが生殖機能がなくなった閉経後もセックスができるんです。

人間にとってセックスは単なる生殖活動ではなく、プレジャー。楽しく喜びや癒しでもあって、信頼関係も深まるステキなこと。

 

寿命が延びて「人生100年」といわれる時代に、セックスがしたくてもできない、プレジャーであるはずのセックスがつらいというのは残念であり、もったいないことだと思います。

医療やテクノロジーが進む今、あきらめる必要がなくなりました。これから、パートナーにも理解が進むといいですね。

 

 

♦なぜ更年期になるとセックスのとき痛いのか

 

性交痛は性交時に感じる痛みの総称です。

そのうち更年期世代の性交痛は、ほぼ腟の潤い不足が原因。

女性ホルモン「エストロゲン」の低下によって腟は乾燥するし、粘膜が薄くなってしまいます。

挿入するときに痛みを感じるのはもちろん、物理的に摩擦に耐えられなくなります。

 

感度も下がってくるので「昔は気持ちがよかったのに、最近、気持ちがよくないな〜」なんて思うのも当然です。

性交痛は人によって差があります。海外のデータによると、痩せ型の女性のほうが性交痛があるようです。

 

女性ホルモン「エストロゲン」はその多くが卵巣から分泌されますが、実は脂肪細胞からも出ていることがわかっています。

つまり、体脂肪の多い女性のほうが、閉経してもまだエストロゲンが作られている可能性が高いということ。

 

古代から、ふくよかさは女性のシンボルでした。

ルネサンスの絵画などを見てもわかるように、三段腹やムッチリしたお尻や太もも…そういう女性は魅力的であり、腟の中も潤いがあり、性交痛もあまりないのではと想像します。

 

だから、閉経前後からは痩せすぎてはダメなんです。

肌や髪のツヤ、丸みのあるボディラインなど、女性らしさの元である女性ホルモン「エストロゲン」はある程度あったほうがいい。

 

ですが、逆にエストロゲンが多すぎると、乳がんや子宮体がんのリスクが高くなります 。

 

ともあれ、性交痛は自分だけの問題ではなく、パートナーと一緒に考えていくべきことだと思います。

男性にも更年期がありますが、男性に比べ、女性のほうが更年期になると急激に体の変化が起こりやすくなり、特に腟や外陰部の機能が低下していきます。

 

ケアすればGSMの症状は改善することもできます。

性交時にはジェルを使うようにしましょう。

工夫次第で、パートナーもより刺激的なセックスができるかもしれません。

また、婦人科や美容外科で相談すれば、腟レーザー治療もあります。

年だから仕方がないとあきらめず、年を重ねて円熟味が増すおいしい”うるおう女”を目指しましょう。

 

 

取材・文/蓮見則子 写真/山田真由美(イメージ) グラフ作成/ビーワークス

 

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