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【四十肩/五十肩/肩の痛み】痛いときこそ「背中や鎖骨の下まで空気を入れる」のがポイント! 呼吸で更年期の悩みを改善 

人によって症状もさまざまな四十肩・五十肩。定義ははっきり決まっていないので、更年期に起きる「肩関節の痛み」ととらえてOK。痛みの強い急性期、炎症期は何もケアできないと思いがちですが、「呼吸」ならできそうだと思いませんか? 痛みのケアに呼吸が効果的なことを教えてくれるのは、呼吸コンサルタントの大貫崇さんです。

 

しんどいときこそ「息を吐く」「息を吐ききる」習慣を!

腕を上げる、後ろに回すなど、ちょっとした日常動作で「肩関節がつらい」と感じたら、もう四十肩・五十肩の初期段階かもしれません。

年を重ねて起こる肩の痛みにはいろいろな原因や症状があります。一般的には、肩への過度な負担や血液循環の悪さによって炎症が起こった「肩関節周囲炎」が四十肩・五十肩と呼ばれます。

「それ以外にも損傷を伴わずに肩の痛みを起こす『インピンジメント(衝突)症候群』、肩関節を安定させている腱板が切れた『腱板断裂』、腱板内に石灰が沈着して炎症が起こる『石灰沈着性腱板炎』なども、年齢的には四十肩・五十肩と呼ばれることもあるようです」

と教えてくれるのは、呼吸の専門家、京都で呼吸専門サロンを主宰する、呼吸コンサルタントの大貫崇さん。

 

今回は、肩に痛みを抱えている人たち全般の痛みケアを考えてみましょう。

そもそも慢性的な痛みは、自律神経のうち「交感神経」が関与していて、もともとあった痛みを感じやすくすると考えられています。
この連載では何度も説明していますが、息を吸うときは「交感神経」が高まって緊張モードに、吐くときには「副交感神経」のほうが働いてリラックスモードになります。

だから!
呼吸で大切なのは吸うよりも吐くこと。吐ききることです。息を吐く時間が長ければ長いほど体はリラックスでき、痛みをこじらせにくくなるわけです。
体がしんどいときこそ息を吐くように心がけましょう。

 

息を吐ききるための「きほんの呼吸」のやり方は、第2回第3回でお伝えしています。

 

両手を背中に回して、指先が届かなかったら肩関節が硬くなっている証拠。そしてそれにはやはり呼吸がからんでいるのです。逆側も同じようにやってみて。

 

 

呼吸によって鎖骨の下に空気を入れることが、痛みの予防に!

 

大貫さんが肩の痛みケアのために提案してくれたのが「鎖骨の下に空気を入れる」呼吸です。

「肩関節に痛みが出やすい人は巻き肩ぎみの人のため、必ずといっていいほど肩甲骨を寄せたり下げたりして動かすようなストレッチや、エクササイズをされていると思います。

それは決して間違っていないのですが、けっこう頑張っても元に戻ってしまいがち。でも、背中側よりも胸側のスペースを埋めることで、元に戻りにくくできます。それをかなえるのが、鎖骨の下側にも空気を入れること。このスペースを埋めることで、肩が勝手に後ろへ引けるんです!」

 

鎖骨の下側に空気を入れる」って、どういうこと⁉

 

まず、呼吸の仕組みを見てみましょう。下のイラストのように、息を吸うと横隔膜が縮んで下に下がり、胸郭は広がります。

 

肺は鎖骨の上まである臓器なので、上手に「きほんの呼吸」ができていれば、鎖骨のあたりも膨らむはず。

 

うまく呼吸ができているかのチェックは、息を吸ったときに、鎖骨の下の部分にまで空気が入り、膨らみが感じられること。

ですが、ほとんどの人はお腹のほうに圧力が漏れがちで、鎖骨の下あたりの肺まで膨らますことができません。

これでは胸郭上部がしぼんでしまって、肩甲骨が前に出てきてしまいます!

 

「きほんの呼吸」を身につけると、息を吐ききること、肋骨を下げることでお腹に圧力が漏れるのを防ぎます。そして次に吸ったときには圧力が胸郭の上のほうまできて、鎖骨の下が膨らむことになります。

 

 

では、鎖骨の下に空気が入るかどうかをチェックしてみましょう!

 

 

「きほんの呼吸」で息を吸ったとき、指で示した鎖骨の下の部分(下写真)にまで空気が入っていればOK。

 

体を起こして呼吸する際にチェックすべきは、指で示した部分(下写真)の膨らみ。

 

上手に鎖骨の下まで空気を入れるには、第2回の「きほんの呼吸」STEP2で紹介した、肋骨を下げたまま呼吸する「肋骨内旋呼吸」をマスターすること。

 

息を吐ききること、肋骨を下げることでお腹に圧力が漏れるのを防ぎます。そして次に吸ったときには圧力が胸郭の上のほうまでくるので、鎖骨の下が膨らむはずです!

 

ストレッチしながら呼吸すると、こわばりがより楽になる!

 

しっかり呼吸しても胸の筋肉が硬く、なかなか鎖骨の下まで空気が入らないという人もいます。そんな人におすすめなのは胸のストレッチをしながら呼吸すること。

 

横向きに寝て、肋骨を下げたまま呼吸。膝をしっかり床につけた状態で、骨盤が動かないように気をつけながら片手をゆっくり回していきます。胸の脇が伸びてきたら、ゆっくり呼吸を繰り返しましょう。

 

「ほかにも、呼吸を邪魔している筋肉はあります。それをリリースしてあげることで驚くほど楽に呼吸ができるようになるんですよ。

例えば背中の中心にある大きな筋肉、広背筋です。脇の下から腰にかけて大きく広がり、背中の大部分を占める筋肉なので、これが固まっていると呼吸を邪魔しますし、肩が上がりにくくなったりします。上半身のこりを一気に解放したいときにとても有効。ぜひ覚えておきましょう」と大貫さん。

 

より効果的な広背筋ストレッチ&呼吸を教えてもらいました。ただストレッチするだけでなく、ストレッチしながら鼻呼吸をすることがポイントです。

 

 

1)まず、よつばいの姿勢からスタート!

 

2)片手をもう一方の手の前へ出します。ひじを曲げずに。

 

3)そのままお尻をかかとにつけるようにして沈み込み、腕を床につけながら脇を伸ばしましょう。この体勢で、脇が伸びているのを感じたまま、ゆっくりと吸って吐くの呼吸を数回します。

 

4)肩が痛くてできない人は無理をしないで。1)のよつばいの姿勢から、片手のひじを床についてみます。少しは楽に沈み込めますね!

 

これを一日何回でも、時間があるときにやってみましょう。胸の筋肉や広背筋による邪魔がなくなり、体の前側にもうまく空気が入るようになるはず。
また、本当にリラックスして呼吸できれば副交感神経が高まり、痛みがやわらぐ効果が期待できます。

 

 

■■まとめ■■■■■■■
痛い、つらいときこそ息を長く吐こう
呼吸で鎖骨の下に空気を入れると、痛み予防に。
胸筋・広背筋ストレッチ&呼吸で、より呼吸をしやすく。

 

【教えていただいた方】

大貫崇
大貫崇さん
アスレティックトレーナー・呼吸コンサルタント
公式サイトを見る
Twitter

1980年神奈川県生まれ。呼吸コンサルタント。アスレティックトレーナー。京都にある呼吸専門サロン「ぶりーずぷりーず」主宰。大阪大学大学院医学系研究科 健康スポーツ科学講座スポーツ医学教室 特任研究員。呼吸に関連した企業研究や商品開発など法人向け呼吸コンサルティング事業を展開し、アスリートから高齢者まで呼吸目線でのコンディショニングに従事。著書に『きほんの呼吸 横隔膜がきちんと動けば、ムダなく動ける体に変わる!』(東洋出版)など。

 

【呼吸についての悩みや質問、大募集】
呼吸について、大貫さんへの質問を募集しています。
●レッスンの内容でよくわからなかったこと、うまくできなかったこと
●自分の呼吸についての悩みや困ったこと
●呼吸についての素朴な疑問
内容についての感想などもOKです。大貫さんにお答えいただく予定です。
こちらからお気軽にどうぞ!

 

撮影/露木聡子 イラスト/内藤しなこ 取材・文/蓮見則子

 

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