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松本千登世/始めている

松本千登世

松本千登世

1964年生まれ。美容エディター。客室乗務員、広告代理店勤務、出版社勤務を経てフリーランスに。自らの経験に基づいた審美眼によって語られる、エッセイや美容特集がつねに注目の的。近書に『もう一度大人磨き 綺麗を開く毎日のレッスン76』(講談社)がある

1年ぶり、いや、もっと間があいただろうか? ゆっくり会おうね、頻繁に会おうねと言いながら、日々の慌ただしさに流されて、なかなかそうできずにいた親友と、久しぶりに会うことになった。楽しみで楽しみで、約束の時間よりもほんの少しだけ早く着いた私より、彼女はさらに早く着いていて、弾ける笑顔で私を迎えてくれた。元気? どうしてた? どうしてる? 互いの近況を報告し合っていたとき…。「実は私、『水彩画』を習い始めたの」

大人磨き イメージ

学生時代、寮の同じ部屋で暮らした彼女は、父は高校の美術教師、母は主婦ながら自身も油絵を描く美術愛好家、妹は専門的に絵を学び、その仕事に従事と、家族そろって「芸術肌」。当時から、その才能があることはよく知っていた。「いつか絵を描くのでは」という予感があったらしく、3人の子育てが一段落したからと、思いきって行動に移したのだという。水曜日の夜、家族の食事や入浴の準備をしたあとの数時間、無心で描いているのだと言って。実際、写真で見せてもらうと、それはもう、趣味なんて呼べないほどすばらしい出来映え。思わず息をのんだ私を前に、彼女は、まだまだと首を横に振りながらも、「楽しいよー」っと、心底うれしそうに言ったのだ。

 

ここのところ、なんとなくその「ムード」を感じていた。同世代の友人たちが「始めている」ってこと…。ピアノを習い始めた、フランス語を習い始めた、陶芸を習い始めた。やり残したことがあると、もう一度大学に通い始めた友人もいれば、保育士の資格を取るために勉強を始めた友人もいる。資格を目指している友人は、こう言った。「だからといって、仕事や今後に『役に立つから』じゃないの。ただ、楽しい。ただ、夢中になれる。そう、単純に『好きだから』なのよね」

 

仕事を続けている友人も、家族を支えている友人も、一日が25時間あったらと思うほどの忙しさの中で、プレッシャーやストレスを抱えて過ごしてきた毎日。そんな日々を積み重ね、それぞれに「誰か」や「何か」のために目指してきたひとつの目標を達成したのだと思う。そうして、自信が生まれ、自由が生まれ。時間的にも精神的にも真の余裕が生まれた今、「自分」と「好き」の関係に対して、素直に心が動いたに違いないのだ。

 

ふと思い出した。ずっと憧れていた女性にインタビューしたときの言葉。「あってもなくてもいいものって、あるでしょう? 例えば、洋服とかジュエリーとか、インテリアとか食器とか。ほかの人にとっては不要なもの、無駄なものかもしれないけれど、自分にとっては、絶対に欠かせなくて、とてもとても大切なものがあると思うの。実は、それが『その人』らしさってこと。その人だけの人生の豊かさはそこにあるんじゃないかしら?」

 

生きていくうえではなくてもいいかもしれない。でも、自分にとっては何より価値があり、人生を豊かにするものがある。同世代たちが見つけ始めた「好き」は、もしかしたら、それなのかもしれないと思った。だから、こんなにも輝いているのじゃないかって。

 

それは効率的? それは合理的? 知らず知らずのうちに自問しながら過ごしてきた気がする。見つけたいと思う。効率的でも合理的でもない、夢中になれる何かを。私だけの豊かなネクストステージが開けると信じて。

 

 

原文/松本千登世  写真/興村憲彦

 

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