本誌にて好評連載中の「S-Joy~素敵女医~」シリーズ。
『MyAge 2015 Autumn/Winter号』の「体が悲鳴を上げたとき、素敵女医の駆け込みプレイスはここ!」にご登場いただいている、「青山エルクリニック」の杉野宏子院長にお話をうかがうこの連載。
前回に引き続き、「脂肪酸」について解説していただきます。
こんにちは、杉野宏子です。
油はダイエットの大敵と思い込んでいませんか?良い油を摂取することは、体にとってとても重要です。
2回目となる今回は、「不飽和脂肪酸」についてお話ししたいと思います。
不飽和脂肪酸には種類があり、二重結合の数が1つのものを「一価不飽和脂肪酸」、2つ以上あるものを「多価不飽和脂肪酸」といいます。
<一価不飽和脂肪酸>
代表的なもの=オレイン酸など。
オメガ9系脂肪酸とよばれ、人体内で合成できる脂肪酸です。
オリーブオイル、紅花油、ひまわり油などに多く含まれています。
オレイン酸は善玉(HDL)コレステロールを下げずに、いわゆる悪玉(LDL)コレステロールを下げる働きがあります。また、動脈硬化や心疾患を減らす効果があると言われています。
約80%のオレイン酸を含んでいるオリーブオイルは酸化に強く、加熱料理に向いています。
<多価不飽和脂肪酸>
代表的なもの=リノール酸、γ‐リノレン酸、アラキドン酸、αリノレン酸・DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)など。
多価不飽和脂肪酸は、体を作る細胞の膜の成分です。
人体内で合成できないため必須脂肪酸といわれており、オメガ6系とオメガ3系に分けられます。
この2つのバランスが乱れてオメガ6系が多くなり過ぎると、体の中の炎症が進んでしまいます。
現代人はオメガ6系を非常に多く摂取しているので、炎症を抑える働きのあるオメガ3系脂肪酸を多く摂取するよう努めましょう。
■オメガ6系脂肪酸:リノール酸、γ‐リノレン酸、アラキドン酸
リノール酸は、大豆油やコーン油などに多く含まれています。リノール酸の多くは炎症を促進するアラキドン酸になるので、なるべく摂取を控えましょう。
その一方で、月見草油などに含まれるγ‐リノレン酸には、体内でプロスタグランジンⅠという成分に変換され、炎症を抑える働きがあります。また月経前症候群(PMS)を和らげる効果もあり、女性の強い味方になってくれます。
■オメガ3系脂肪酸:αリノレン酸・DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)
炎症を抑える働きがあるため、積極的に摂ることをお勧めします。
α-リノレン酸はえごま油、なたね油、亜麻仁油などに多く含まれています。
DHAやEPAは、イワシ、サバ、アジ、サケ、マグロなどの魚の油に多く含まれています。
オメガ3系脂肪酸には、中性脂肪を減らし善玉コレステロールを増やす作用があり、
また血栓ができるのを防ぐなど、動脈硬化を予防する働きもあります。
いずれの脂肪酸も、脂質の一部としてエネルギー源になったり体を作る成分になったりしますが、摂りすぎはエネルギー過剰による肥満につながるので注意が必要です。
<トランス型脂肪酸(トランス酸)>
昨今、健康への悪影響が懸念されているものに、「トランス型脂肪酸(トランス酸)」があります。
これは不飽和脂肪酸の二重結合の立体構造が、互い違い(トランス型)になっているものの総称です。
マーガリンやショートニングをはじめ、ケーキ、菓子製造用、パン、調理用のフライ油として、多くの食品に使われています。
最近になって、欧米でトランス型脂肪酸の過剰摂取が血中の悪玉コレステロール値を上昇させ、善玉コレステロール値を低下させることと、その結果、虚血性心疾患発症のリスクを高めることが明らかになりました。
そのため現在は、食品中のトランス酸の表示義務化や、摂取量勧告などが実施されています。食品を購入する時は、商品をひっくり返してラベルを確認し、トランス脂肪酸が使われているかどうか確認しましょう。
杉野先生のアンチエイジングジュースのレシピは、次ページに!
◆杉野先生おすすめのアンチエイジングジュース
<リンゴと小松菜、レモンのジュース>
材料(2人分)
リンゴ 1個
小松菜 2株
国産レモン 半個
パプリカ 半個
ヨーグルト 150ml
チアシード 大さじ1(水に10分浸して、トッピングも含む)
えごま油 大さじ1
ヘンプシードオイル 大さじ1
最近ヘンプシードオイルがお気に入りで、よく料理に使っています。
「ヘンプシードって何?」という方も多いと思いますが、実は私たちにとっては古くからなじみがあるもの。
七味唐辛子に入っている大きめの実と言えば、皆さんご存知ですよね。あれこそが麻の実(ヘンプシード)です。
麻の実から採れるヘンプシードには、オメガ3脂肪酸がたっぷり含まれています。
<アサイーとリンゴ、ニンジンのジュース>
材料(2人分)
冷凍アサイー 1パック
リンゴ 1個
ニンジン 半本
プチトマト 5,6個
えごま油 大さじ1
シナモン、クローブ 各少々
水 150ml
ニンジンにはβカロテンがたっぷり。
免疫力をアップする効果があるので、これからの季節、風邪を予防するためにも欠かせません。
βカロテンの吸収には油が必要。好きなオイルを加えて仕上げましょう。
リコピンなど多くの成分を含んでいる赤いプチトマトには、美容にもいいのでオススメです。
写真/杉野宏子 取材・文/上田恵子