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「ホルモン補充療法(HRT)は副作用が怖い」「HRTは太る」の真実。HRTは怖くないんです!

女性ホルモンの減少に伴う更年期症状をやわらげるホルモン補充療法(HRT)。副作用を気にする人もいますが、実際のところはどうなのでしょう? デメリットは? 産婦人科専門医の吉形玲美先生に伺いました。

薬の量や投与方法で、HRTの副作用は軽減が可能 

更年期症状に効果的なホルモン補充療法(HRT)ですが、投薬に際してどんな副作用があるのでしょうか?

 

「適切な時期に始めたとしても、HRTを長期間続けると年齢に比例して血栓症のリスクが高まります。

また、乳がんのリスクもごくごくわずかながら高まります。

そのため、HRTは基本的に開始から数年後をめどに低用量化していくことが推奨されています。

例えば、経皮剤なら2日に1回貼り替えていたペースを4日に1回にするなど貼付しない期間を倍にする。経口剤なら1日おきに内服する、あるいは内服する量を半分にするなど、薬の量を徐々に減らすことはこれらのリスクを軽減させます

また、HRTは治療中の病気や既往症によっては行えない場合があるので、開始前と実施中、中止後にもそれぞれ検査が必要です」(吉形玲美先生)

 

【HRTに必要な検査】

●HRT開始前
血圧・身長・体重の測定、血液検査、婦人科がん検診(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん)、 乳がん検診が必須。任意ではあるが、骨密度検査や動脈硬化検査を受けておくとさらに安心。

 

●HRT実施中
HRTによる副作用、あるいは自然発症によってHRTが実施できない病気を発症していないかどうかを確認するため、医師が定期的に症状の問診を行う。また、開始前検査と同じ内容の定期検査を年に1〜2回実施。

 

●HRT中止後5年間
HRTの影響が残っている場合があるので、婦人科がん検診と乳がん検診を1〜2年ごとに受診。健康管理の面からは、HRT中止後もそれまで行っていた定期検査を継続することが推奨されている。

 

HRTと女性

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HRTとがんの相関関係、ホントのところは?

HRTについてよく見聞きすることのひとつに乳がんなどの「がんのリスク」との関係がありますが、吉形先生によれば、そもそも「HRTのリスク=発がん作用がある」という意味ではないのだそう。

 

「『リスク』とは、統計上がんを発症する人の数が増えることを意味し、HRTの治療薬に発がん性物質が含まれているということではありません。

例えば、子宮体がんはHRTの際に黄体ホルモン剤を使用すれば発がんリスクは上がらないとされています。

卵巣がんはHRTとリスク上昇にわずかながら関連が示されていますが、HRTを1年間実施した人と実施しなかった人を比べると、卵巣がんになった人の数は1万人のうち1人増えるかどうか、というとても低い頻度でした。

また、乳がんは治療で併用する黄体ホルモンの種類によってリスクが異なることが報告されていて、定期的な乳がん検診を行い、HRTの低用量化や投薬の工夫をすれば、HRTを行わない人と発症リスクの差がなく、長期的に継続できる選択肢もあります。

 

ちなみに、国立がん研究センターの予防研究グループによる研究結果では、『日本人は(HRTよりも)喫煙による乳がんリスクのほうが高い』と報告されています。その他、飲酒や肥満もリスクが高まります。

 

定期的に必要ながん検診を受診していれば過剰に心配する必要はありませんし、むしろ定期的な検診の機会を持つことができるので、早期発見率が高まるともいわれています」

 

さらに、大腸がんと食道がんについては、これまでの大規模な疫学研究の結果、HRTがリスクを低下させることがわかっており、胃がんもリスクを低下させる可能性があると示されています。

 

「HRTで太る」は都市伝説だった!

もちろん、副作用がまったくないわけではありません。

 

「経口投与の場合、薬剤の成分が肝臓を通過するため、コレステロールや中性脂肪が増加するリスクがあることが認められていますまた、エストロゲン剤はすでに動脈硬化の状態にあると血管の炎症を進行させ、血栓症のリスクが高まることも知られています。

一方で、経皮投与は薬剤が肝臓を通過しないことから脂質代謝への影響や血栓症のリスクが経口剤より低いという報告があります。つまり、血栓症のリスクは経皮投与を選択することで下げられるといえます。ただし、これまでの研究により経口投与でも標準処方量の半分以下など用量が少なければ、血栓症のリスクが下がることが示されています」

 

そして、都市伝説のように語られるのが「HRTは太る」というもの。

 

「そもそも、エストロゲン自体には内臓脂肪を減らして糖の代謝を高める働きがあるので、太らせる作用はありません

しかし、子宮体がん予防のために使用する黄体ホルモン剤には細胞に水分をためる働きがあるので、その影響から人によってはむくむ=体重が増えることがあります。

私の実感としては、多少むくみが気になったとしても治療を続けるうちに体が適応して元に戻る、あるいは気にならなくなるという人がほとんどです」

 

記事が続きます

【教えていただいた方】

吉形玲美
吉形玲美さん
産婦人科医、医学博士
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浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)。

 

イラスト/sino 取材・文/国分美由紀

 

参考資料/「40代から始めよう!  閉経マネジメント」吉形玲美・著¥1,650/講談社

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