日本女性医学学会のホームページで近隣の専門医をチェック
「ホルモン補充療法(HRT)を始めてみようかな」と思ったとき、迷うのは病院の選び方。いったいどんな基準で選ぶといいのでしょうか?
「病院の数などは地域格差も大きいですが、HRTに前向きになっている方はぜひ日本女性医学学会(旧:日本更年期医学会)のホームページ(https://www.jmwh.jp)から専門医を探してみてください。
医師の中には、いろいろな考えからHRT以外の選択肢をすすめる人もいますが、少なくとも日本女性医学学会のHPに名前を連ねている医師であれば、そうはならないと思います。
もし『HRTをやりたい』という思いを伝えても、禁忌症例などの理由以外で違う選択肢に誘導される場合は、担当医や病院を変えるのもひとつの手だと思います」
婦人科の場合、「男性医師は冷たい」など、医師の性別によって先入観にとらわれる人もいるかもしれませんが、そうした思い込みを手放すことも大切。
「気持ち的に女性の医師のほうが安心だと感じる方もいるかもしれませんが、男性でもすばらしい先生はたくさんいらっしゃいますので、性別は関係ないということはお伝えしておきたいですね。大切なのは、実際に受診してみたときに説明がわかりやすい、質問しやすい、不安が解消されるなど、ご自身が安心して通えることだと思います」
吉形先生は、自分で情報収集をしながらリテラシーを身につけることも重要だと話します。
「HRTは、更年期前後の人生を心地よくするためのひとつの選択肢。それは、『自分はどう生きたいか』という問いにもつながります。自分らしく、快適な人生を選ぶためにも、すべてを医師に任せるのではなく、ぜひ自分のために情報収集をしてほしいと思います。例えばOurAgeの記事や、更年期について書かれた本を一冊読むだけでも理解を深められますし、知識を持つことで自分に合った医師や病院かどうかの判断もしやすくなるはずですから」
今後の課題は、代替療法やGMSなどの治療バリエーションの拡充
最後に、HRTを含めた更年期症状治療の今後についてもお話を伺いました。
「HRTについては、天然型の黄体ホルモン製剤『エフメノカプセル』が投与できるようになったことで、ようやく海外とほぼ同じものが出そろいました。
次のステップとしては、代替療法のバリエーションです。欧米では、ホットフラッシュの要因となる脳のスイッチを調整する薬が昨年から使用されています。
日本はGSM(閉経後性器尿路症候群:閉経に伴う女性ホルモンの分泌低下によるフェミニンゾーンのトラブル)の治療のバリエーションも海外より遅れているので、代替医療も含めて充実させなければいけない分野だと思います」
さらに吉形先生は今、更年期症状に悩む人たちが診療から治療までスムーズにアクセスできるシステム構築に向けた活動にも取り組んでいらっしゃいます。
「先ほどお話しした地域格差やリテラシーの課題に加えて、『もしかして更年期かな…』と思った人が、スマホアプリなどで診察から薬の処方まで一貫してできる仕組みを構築するための活動を始めています。
今は、さまざまな医療機関の医師、『フェムテック』を掲げてオンラインサービスを提供している産業界、フェムテックを応援する官庁の連携が十分にできていない状況と感じています。そこをつなぎたいと思って。誰もが当たり前にアクセスできる普遍的な仕組みこそが持続可能性だと思うので、いろいろな方と力を合わせながら進んでいるところです」
【教えていただいた方】

大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)。
イラスト/sino 取材・文/国分美由紀
参考資料/『40代から始めよう! 閉経マネジメント』吉形玲美・著¥1,650/講談社
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