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ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、エクオール。それぞれ得意分野があります

ホルモン補充療法(HRT)が受けられないときの選択肢でもある「漢方薬」と「エクオール」、それぞれの特徴について産婦人科専門医の吉形玲美先生に伺いました。

副作用が少ない漢方薬の目的は、体を“良好だった元の状態”に戻すこと

「漢方薬は、副作用が少なく体に優しい治療法として更年期症状の緩和にもたくさん用いられています。

漢方の基本的な考え方は、体を“良好だった元の状態”に戻すこと。体に何かが多すぎて不調を招いているのであれば、それを抑制する方向に働き、逆に何かが不足して不調を招いているのなら、不足しているものを補う方向に働きます」(吉形玲美先生)

 

【漢方が向いている人】

・HRTを希望しない人、使えない人
ホルモン剤を使うことに抵抗がある人、既往症や持病によってホルモン剤を使えない人など。

漢方薬には更年期の症状に応じたいくつかの処方があるので、それらを参考に一人一人の症状に合わせて組み合わせていきます。

 

・HRT を実施しても更年期症状の改善がみられない人、不十分だと感じる人
HRTを始めてみたけれど、「思ったほど効果が表れない」と感じる人は、更年期によるエストロゲン(卵胞ホルモン)の減少とは別に原因がある可能性を検討し、処方を考えます。

 

・体質や性質を根本から改善したい人
更年期以前から「頭痛や肩こりがひどい」「冷え症」「汗かき」「むくみやすい」「イライラしやすい」といった体質・性質がある人は、それらが原因で更年期症状が強く現れることも。漢方薬で根本的な体質・性質改善を試みることで、症状の緩和が期待できます。

HRTと漢方薬のイメージイラスト

更年期症状の治療でよく使われる3大漢方薬

更年期症状に対して処方される漢方薬でメジャーなのは次の3つ。

いずれも、血の巡りを改善させる、痛みを取るなどの効果がある「芍薬」と、むくみの改善や不眠解消などの効果を持つ「茯苓」が含まれています。

 

「更年期症状には個人差があり、漢方薬の効果はすぐに表れることもあれば、数週間から数カ月以上かけて表れる場合もあります。

長期にわたって自分に最適な漢方薬を選ぶには、自己判断で購入するよりも、漢方薬に詳しい医師に診断・処方してもらうほうがおすすめです」

 

【更年期の症状に使われる3大漢方薬】

(1)当帰芍藥散(とうきしゃくやくさん)
・適応する体質:筋肉が軟弱、疲れやすい、足腰が冷えやすい
・適応する主な症状:冷え症、頭痛、めまい、肩こり、倦怠感、動悸、月経痛、月経不順、 貧血など

 

(2)加味逍遙散(かみしょうようさん)
・適応する体質:体質虚弱、疲れやすい、精神が不安定、時に便秘傾向
・適応する主な症状:頭痛、めまい、肩こり、倦怠感、上半身のほてり、不安、不眠、イライラなど

 

(3)桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
適応する体質:体格がしっかりしている、赤ら顔、下腹部が張っている
適応する主な症状:頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、足の冷え、月経痛、痔など

 

記事が続きます

エストロゲンと似た働きをする大豆由来のエクオール

エクオールとは、大豆食品に含まれる成分「イソフラボン」が腸内細菌の働きにより代謝 (体内で新しい物質に変わること)されて生まれる物質のこと。大豆由来ながら、エストロゲンと同じような働きをすることから「植物性エストロゲン」とも呼ばれます。

 

「エクオールの構造式は、エストロゲンのそれとよく似ています。

私の経験では、エクオールがHRTより有効に働く場合もあります

特に、軽めの症状が複数ある患者さんに摂取してもらうと、より症状の改善に貢献してくれる傾向にある印象です。

また、エクオールはエストロゲンが過剰に分泌されたときもバランスを整えてくれるので、プレ更年期に多くみられる女性ホルモンのゆらぎによる不調の緩和も期待されます」

 

【エクオールに期待される更年期前後の副次効果】

⚫︎プレ更年期:目安の年代 40代前半(閉経前)
・月経前症候群(PMS)などの緩和
・女性ホルモンのゆらぎに起因する不調の緩和
・美肌効果

 

⚫︎更年期:目安の年代 40代後半〜50代後半(周閉経期〜閉経後 5年ほど)
・女性ホルモンのゆらぎに起因する不調の緩和
・更年期症状全般の緩和
・美肌効果、抜け毛予防、髪質の改善

 

⚫︎ポスト更年期:目安の年代 50代後半〜(閉経後5年以降〜高齢期)
・不定愁訴 (疲れやすい、イライラする、不安、ほてる、冷えるなど) の改善
・骨密度低下の予防、動脈硬化の改善
・美肌効果、抜け毛予防、髪質の改善

エクオールサプリメントのイメージイラスト

エクオールを作れる能力の個人差は10〜100倍! サプリも賢く活用を

医学界でエクオールの研究が盛んになり始めたのは2000年頃。

当時、摂取したイソフラボンからエクオールを作る能力(産生能)を持つ日本人は全体の約5割、欧米人では約3割といわれていました。しかし、幼少期の食生活やライフスタイルの変化などから、現在は日本人でも欧米人並みの割合に下がっていると考えられるといいます。

 

「腸内環境の状態がよく、エクオール産生能が高い人は、例えば納豆1パックを毎日コンスタントに食べるだけで、更年期症状の改善などに必要なエクオール産生が期待できます(納豆 1パックに含まれるイソフラボンは30〜40mg程度)。

ただし、エクオール産生能の個人差は10〜100倍と大きく、腸内環境のよし悪しによって個人の中でも変動するので、もともと産生能があった人でも作れなくなってしまう場合があります。

エクオール産生能の有無は、エクオール検査(尿検査)で調べることができます」

 

エクオール産生能が低い人だけでなく、産生能があっても食生活が乱れがちな人は、エクオールサプリメントでとるのがおすすめ。エクオール摂取目安量は1日あたり10mgで、イソフラボン25〜30mgに相当します。

 

【教えていただいた方】

吉形玲美
吉形玲美さん
産婦人科医、医学博士
Instagram Instagram

大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)。

 

イラスト/sino 取材・文/国分美由紀

 

参考資料/『40代から始めよう!  閉経マネジメント』吉形玲美・著¥1,650/講談社

閉経マネジメント書影

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