HRTを希望しても受けられない場合が
さまざまな更年期症状に効果があるHRTですが、HRTを実施できない、あるいは実施に際して注意が必要なケースもあります。
「現在あるいは過去に乳がんを患っている人、現在、子宮体がんを患っている人はHRTを受けることができません。実施できない人や注意が必要な人は下記の通りです(ホルモン補充療法ガイドライン2017より。一部改変)」 (吉形玲美先生)
【実施できない人(禁忌症例)】
・重度の肝臓病を患っている
・現在あるいは過去に乳がんを患っている
・現在、子宮内膜がん (子宮体がん) を患っている
・原因不明の不正性器出血がある
・現在あるいは過去に血栓症に関連する病気を患っている
・心筋梗塞、脳卒中になったことがある など
【注意して使用したい人(慎重投与)、条件付きで使用していい人】
・子宮内膜がん (子宮体がん) になったことがある
・卵巣がんになったことがある
・肥満である
・60歳以上または閉経後10年以上がたっていて、HRT を一度も実施したことがない
・血栓症のリスクがある
・慢性肝疾患を患っている
・胆嚢炎および胆石症になったことがある
・重度の生活習慣病を患っている
・子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症になったことがある
・片頭痛がある など
更年期症状の対策には、HRT以外の選択肢も
人によって複数の症状を含むことが多い更年期症状。
その対策はひとつではありません。薬の種類や処方もさまざまなパターンが考えられます。
「代表的なのはHRTですが、さまざまな理由でHRTが実施できない人や、希望されない人もいます。欧米ではホルモン補充療法に代わる治療法(HRT代替療法)が広く浸透していて、日本でも近年広がりつつあります。
代替療法として広く活用されているものに漢方薬とエクオールサプリメントがあります」
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心理的抵抗が少なく、人気も高い「漢方薬」
「漢方薬は昔からある治療薬で、日本では医療機関で保険適用が可能なうえ副作用も少ないことから、患者さんからのリクエストが多い治療法です。症状や個人の体質・性質に合わせて薬を選べるというメリットがあります。効果が期待される人は次のとおりです」
【漢方薬の効果が期待される人】
・年齢:どの世代にも有効
・適性:根本的な体質・性質改善を行いたい人。薬を継続して飲むことが苦にならない人
・主な症状:慢性的な冷え、むくみ、ほてり、不眠などの症状がある。イライラなどの体質的・精神的な不調がある
10年ほど前から選択肢に加わった「エクオールサプリメント」
「エクオールは、更年期症状対策のサプリメントとして診察でも活用されていて、症状や体調によってはHRTより合う場合もあります。また、更年期症状の緩和だけでなく、乳腺や子宮内膜への影響が少ないこと、抗動脈硬化作用、骨密度の減少予防、美肌効果など、さまざまな効果も認められていることから活用の幅がぐっと広がりました」
【エクオールサプリメントの効果が期待される人】
・年齢:40歳以上(目安)
・適性:定期的な通院が難しくセルフメディケーションで対処したい人。 薬剤の副作用が心配な人
・主な症状:冷え、不眠、不安、憂うつ、神経質、疲労感、もの忘れなどの症状がある。精神的な不調や漠然とした不調が強いほか、手指など小さな関節に痛みがある
複数ある更年期症状対策の選択肢。医師に相談しながら、治療法を決めましょう。
【教えていただいた方】

浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)。
イラスト/sino 取材・文/国分美由紀
参考資料/『40代から始めよう! 閉経マネジメント』吉形玲美・著¥1,650/講談社
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