始め時の目安は40代後半以降。月経に変化があれば検討を
「ホルモン補充療法(HRT)は、エストロゲン分泌量の低下やゆらぎ(激しいアップダウン)が確認できれば始められます。年齢の目安としては40代後半以降。
月経周期が短く・長くなる、不正出血がだらだら続く、体調が不安定になるといった症状が出たら検討のタイミングです」(吉形玲美先生)
吉形先生によれば、実際にHRTを開始する時期で最も多いのは閉経から数年以内、50代前半から半ばくらい。そして、この時期にHRTを始めておくと、骨密度の維持や上昇、動脈硬化の予防効果も期待できるといいます。
「プレ更年期以降、閉経の前後5〜10年くらいの間にHRTをスタートすると、必要に応じて長期間続けることができます。
その時期を過ぎてから初めてHRTを実施すると、すでに動脈硬化の状態になっているケースが多く、投薬によりかえって血管の炎症が進行し、血栓症(血液中に血栓と呼ばれる血のかたまりができて血管が詰まる病気。心筋梗塞、脳梗塞などの原因となる)のリスクが高まることが知られています。始めるなら閉経から数年以内のうちに、がひとつの目安です」
やめ時は年齢ではなく、症状で判断。薬の減量からスタート
HRTにまつわる疑問で多いのが、「ずっと続けていてもいいのか」「やめ時がわからない」といった声。「60歳でひと区切り」といった話も耳にしますが、HRTは骨密度の維持・改善にも役立つことを考えると、閉経後や60歳以降も継続を希望する人も多いのでは?
「HRTは一人一人の状況に合わせた個別対応が基本なので、一律に『60歳でやめましょう』というものではありません。
日常生活に支障が出るほど症状が重い更年期障害の治療として始めた方は、1〜2年たって症状が緩和されてきたら薬の量を減らしていきます。薬を減量しても特に症状のリバウンドがなく、日常生活に支障がなければHRTの卒業を検討します。
逆に、減量すると症状がぶり返す、投薬を卒業してから調子が悪いという場合は、低用量や天然型の薬剤へと見直したり、経口投与だった場合は経皮投与への変更を検討するなどの形で経過をチェックしていきます。
確かにHRTは骨密度の維持・改善や動脈硬化を遅らせるといったメリットもありますが、そのために続けるものではありません。更年期の不調が解消されたかどうか。判断基準となるのは症状です」
ただし、投与方法を見直しても長期投与の経過中に変化があれば、HRTの卒業を検討します。
「個人差はありますが、生活習慣病の悪化や、黄体ホルモン剤を使用していても子宮内膜が厚くなってくる(子宮内膜増殖症様の変化)などがあれば、治療のお休み、あるいは卒業を検討する必要があります」
【教えていただいた方】

浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)。
イラスト/sino 取材・文/国分美由紀
参考資料/「40代から始めよう! 閉経マネジメント」吉形玲美・著¥1,650/講談社
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