40代・50代女性に必要なのは、「大豆」と「社会脳」です
第一線で活躍する認知症専門医に、この連載で大豆の「脳元気」レシピを教えて下さる料理研究家の松田美智子さんが"認知症予防"の最新知識についてインタビュー。今回が後編です!
答えてくれたのは…
朝田 隆さん (メモリークリニックお茶の水 理事長)
Takashi Asada
東京医科歯科大学医学部附属病院特任教授、筑波大学名誉教授、医学博士。数々の認知症実態調査にかかわり、軽度認知障害(MCI)のうちに予防を始めることを推奨。『専門医がすすめる60代からの頭にいい習慣』(三笠書房)など編著書多数
質問したのは…
松田美智子さん( 料理研究家)
Michiko Matsuda
日本の食材を大切にした季節感あふれる家庭料理を料理教室で指導するかたわら、テーブルウエアや調理道具などの「自在道具」プロデュースも。『丁寧なのに簡単な季節のごはん』(小学館)など著書も多数。女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事
「社会脳」を育てて生涯現役を目指しましょう
松田 睡眠が大事とは知っていても忙しくて十分な睡眠時間を取れない人も。先生は毎日何時間、睡眠を取っていらっしゃいますか?
朝田 7時間です。タンパク質「アミロイドβ」が脳内に沈着し、神経細胞を死滅させることで認知症を発症しますが、アミロイドは睡眠中にのみ、ゴミとして処理されるのです。夜の睡眠時間が取れない方には午後1〜3時の「30分以内の昼寝」もおすすめです。
それから、「聴力低下」も実は認知症発症の大きな要因といわれているんですよ。
松田 聴力の低下がそんなに危険因子なんですか!
朝田 聴力が低下するとコミュニケーションがとりづらくなるからですね。私は認知症予防の最大のポイントは「社会脳」にあると考えています。社会脳とは「人の心を察すること」。記憶力や集中力、注意力といった知能は、この「社会脳」を支える道具です。
松田 社会脳! 初めて聞きましたが、確かに人の気持ちを理解するには、一瞬の間に頭をフル回転させますものね。どうしたら、その社会脳を保ち続けることができるのでしょうか。
朝田 新しいことにチャレンジするのがおすすめです。その場合、仲間がいることが大切。仲間がいれば趣味や活動も続けやすいですし、何より、他人との交流が脳を大いに刺激します。ダンスや合唱、楽器演奏、健康麻雀…女性はコミュニケーション能力が高いので、女子会やランチ会もいいですね。
松田 食事も一人より、誰かと一緒のほうがずっと楽しく、おいしく感じられますものね。
朝田 そして、私が特におすすめしているのが「褒めごろし」です。
松田 褒めごろし?
朝田 本来の意味とは少し違いますが(笑)、積極的に人を褒めることは脳へのよい刺激になります。褒めるためには、その人の素敵なところに気づき、それにふさわしい言葉を選ばなくてはなりません。脳をフル稼働できる機会です。
松田 確かに、褒められると相手も気持ちがよくなり、いいコミュニケーションが生まれますね。
朝田 女性は90歳まで生きるとすれば約半数が認知症になるのですから、早い段階から予防意識を持つのはとても大切ですよ。
松田 最近、筑波大学附属病院のチームが認知症ケアのプログラムを実施していて、治癒率が上がっているという記事を見ました。運動、音楽、絵画、脳トレーニング、疾患教育などを組み合わせたものだとか。
朝田 これで1/4のMCI患者が治ったという実績が出ています。
松田 日頃の生活で認知症を防ぐことができるとわかってきたことに救われました。つまりは、食や睡眠など日々の生活をいかに送るかが、将来の自分の脳を決めるということですよね。さっそく今日から実践します!
撮影/さとうしんすけ 構成・原文/北村美香