がんと診断されて頭に浮かぶ、治療のことや家族のこと、そして闘病中にかかるお金のこと…。各分野の専門家に、これから直面するであろう疑問や不安についてアドバイスしていただきました。
今回は診療面についてご紹介します。
宇津木久仁子さん
Kuniko Utsugi
がん研有明病院婦人科副部長。日本がん治療認定医機構認定医。日本産科婦人科学会専門医。日本婦人科腫瘍学会専門医。著書に『知って安心 婦人科のがんと治療』(イカロス出版)ほか
Q
闘病中の痛みや吐き気が恐怖です。
少しでもやわらげる方法はありますか?
A
今は痛みに対するチーム医療が進み、
抗がん剤の副作用も抑えられています。
がんの痛みに関してはもちろん主治医も診ますが、緩和疼痛科、疼痛治療科、ペインクリニックなどとチームを組んで連携していくので、つらいときはどんどん医師に相談してください。また抗がん剤の副作用は、以前よりもずっと楽になっています。今はいい吐き気止めの薬が多数ありますし、大きな病院にはがん専門の薬剤師がいて、漢方薬や安定剤など、併用補助的な薬にもこだわってくれています。
Q
食生活をはじめ、健康には人一倍気をつけてきました。
なぜ私はがんになってしまったのでしょう?
A
「○○しておけば大丈夫」ということは
ありません。遺伝子が原因になる場合も。
長寿になり、日本人の半分はがんになる時代です。明らかに因果関係があるタバコを除けば、ストレスをためない、適度な運動をする、生活リズムを整える、などが予防法にはなりますが、がんになる遺伝子を持っている人もいるので「○○しておけば大丈夫」ということはありません。食に関しても、特定の食べ物の制限や過度の摂取は逆効果。バランスのいい、そして腹八分の食事を心がけましょう。
次のページでは、治療法、セカンドオピニオンなどのQ&Aをご紹介。
Q
抗がん剤や放射線治療は、健康な細胞にもダメージを与えると聞いています。
それらの治療を受けずに治すことは可能ですか?
A
がんの種類によって治療法も変わります。
医師とよく相談して決めましょう。
治療法はがんの種類によって違います。例えば子宮頸がんの場合、手術せずに放射線治療のみという人もいます。初期の卵巣がんは手術が必要ですが、進行した卵巣がんは、手術と抗がん剤の両方が必要になります。子宮体がんも手術が必要です。抗がん剤に関しては、ご自身の命なので無理強いはできませんが、基本的な治療法はガイドラインで定められています。主治医と相談のうえ決めていきましょう。
Q
セカンドオピニオンは受けるべきですか?
最初に診断してくれた医師の機嫌を損ねそうで踏みきれません。
A
その医師を信頼できるならば
無理して受ける必要はありません。
治療法に疑問があるなら受けたほうがいいですが、納得がいっているなら必要はありません。自信がある医師ほど「どうぞ行ってらっしゃい」と言うと思います。患者さんは「自分が言ってほしいことを言ってくれる医師」を求めがちですが、セカンドオピニオンは自費診療扱いのため数万円の出費になります。本当に必要なのか、よく考えて判断を。
次回は「がん」といわれた時に知りたい心理面のことについてご紹介します。
撮影/フルフォード海 イラスト/石田奈緒美 取材・原文/上田恵子