今回は市立札幌病院精神医療センター副医長の上村恵一先生に、「がん」と診断された時に知っておきたい「心理面」の疑問や不安についてアドバイスしていただきました。
上村恵一さん
Keiichi Uemura
市立札幌病院精神医療センター副医長。2001年、旭川医科大学医学部医学科卒業。日本サイコオンコロジー学会理事・代議員。日本緩和医療学会理事・代議員
Q
告知のショックと不安で、
これから始まる治療に耐えられる気がしません。
心が折れそうです。
A
それはごく自然な反応です。気持ちが落ち着くまで待ち、
それから治療に入ってもいいと思います。
告知のショックで治療に向き合う戦闘モードになれないのは、ごく自然な反応です。一般的に、診断が現実味を帯びるまでに2週間、病と向き合えるようになるには3カ月くらいかかります。すぐに治療を開始しないと危険な緊急性の高いがんはそう多くないので、医師に相談しながら気持ちが落ち着くまで待ち、それから治療に入ってもいいと思います。
Q
治療のつらさを理解してもらえず、
孤独感が募ります。
何でも話せる相談相手が欲しいです。
A
病院には患者会のネットワークや、医療関係者が運営する
患者サロンがあります。相談してみてください。
病院にはその地域の患者会の情報がありますが、中には「つらい時期に患者会で一方的なアドバイスをされて傷ついた」という人もいます。自分に合う集まりかどうか、吟味して選ぶことが大切です。がん診療連携拠点病院には医療関係者が運営する患者サロンや、心のケアが欲しいときに頼れる緩和ケアなどもあるので、医療スタッフに相談してください。
次のページでは、家族のこと、情報収集についてのQ&Aをご紹介します。
Q
自身のがんを、
家族にどう伝えたらいいか迷っています。
正直に話したほうがいいですか?
A
一人で抱え込まず、相談窓口を利用して
アドバイスを受けるのもひとつの方法。
闘病には家族のサポートが不可欠です。病名だけでなく、どういう病気・状態なのかを正しく伝え、協力を頼みましょう。ただし、お子さんが小学校低学年以下の場合、「自分もがんがうつって死ぬのでは?」などと考えてパニックを起こす場合もあるので注意が必要です。「家族は第二の患者」とも言われます。ご家族と一緒に、がん診療連携拠点病院のがん相談窓口などを利用するのもひとつの方法です。
Q
情報収集はどこですればいいでしょうか?
ネットで検索すると絶望的な
言葉ばかりが目に入ってしまい、
とても冷静になれません。
A
不確かな情報に振り回されてはいけません。
わからないことは主治医に聞いて。
ネット検索は、隠れ広告系サイトが上位に表示される場合があります。中にはがんについて悲観的なことばかりが書かれたものもあります。このように信憑性があいまいなサイトや主観的な個人ブログから先に情報を得て、主治医の意見が二の次になってしまっては本末転倒。疑問がある場合は、まず主治医やかかわっている医療スタッフに聞きましょう。不確かな情報に振り回されてはいけません。
次回は「がん」といわれた時に知りたい経済面のことについてご紹介します。
撮影/フルフォード海 冨樫実和 イラスト/石田奈緒美 取材・原文/上田恵子