前回は、タンパク質を構成する最小パーツがアミノ酸であることを学びました。今回は、アミノ酸の種類などをみていきます。
Q3アミノ酸の種類について教えて
人間の体の中には、約10万種類のタンパク質があるといわれ、肌や髪、筋肉や骨、内臓、血液など、体内のさまざまな場所で使われています。このタンパク質は、たった20種類のアミノ酸の組み合わせによって作られているのです。20種類のアミノ酸は、体内で合成できない必須アミノ酸(9種類)と、体内で合成できる非必須アミノ酸(人間では11種類)とに分類されます。
Q4アミノ酸が不足すると
どうなるの?
健康や美容と大きく関係するアミノ酸。アミノ酸が不足するとさまざまなパーツにさまざまな不調が現れます。その不調は、アミノ酸の種類によって異なります。例えば、非必須アミノ酸のグリシンは睡眠の質とかかわり、必須アミノ酸のヒスチジンは脳の疲れや集中力と関係するというように。症状や体調などから、不足しているアミノ酸を補うとよいでしょう。
免疫力
体がもともと備えている免疫システムを維持するために、免疫細胞の栄養源となるアルギニンが必要。
睡眠
グリシンは、深い眠りを得やすくし、睡眠の質を向上するのに役立ちます。
長寿
いつまでも元気に生活できる健康寿命を延ばすためには、筋肉を保つアミノ酸が必要です。
筋肉
質のよい筋肉を作り、保つためにも、必須アミノ酸が重要な役割を果たします。
肥満
メタボ対策には筋肉をつけて基礎代謝を高めること。脂肪蓄積を抑制するアミノ酸もあります。
美容
肌や髪のもととなるのもアミノ酸。若々しい肌や髪のためにもアミノ酸が必要なのです。
疲労
スポーツ後など筋肉疲労には必須アミノ酸、脳の疲労回復にはヒスチジンが重要といわれています。
Q5必須アミノ酸は
食品でとる必要がありますか?
20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できず、食品から摂取する必要のあるのが必須アミノ酸。9種類のバランスがくずれると活用度が低くなってしまうので注意しましょう。体内で合成できる非必須アミノ酸もそれぞれ重要な働きがあります。なかには生理的や遺伝的に必要量を補えない種類もあり、どれが欠けてもタンパク質の活用度は下がります。
必須アミノ酸の種類と働き
バリン
おもな働き/BCAA※のひとつ。タンパク質の合成・分解を調整し、筋肉のエネルギー源になります。ロイシン、イソロイシンとのバランスが大切。
多く含む食品/赤身の肉(牛肉やマグロの赤身)、チーズ、卵、ヨーグルトなど
イソロイシン
おもな働き/BCAA※のひとつ。タンパク質の合成・分解を調整し、筋肉のエネルギー源になります。肝機能を強化。バリン、ロイシンとのバランスが大切。
多く含む食品/赤身の肉(牛肉やマグロの赤身)、チーズ、卵、ヨーグルトなど
ロイシン
おもな働き/BCAA※のひとつ。タンパク質の合成・分解を調整し、筋肉のエネルギー源になります。中枢性疲労の軽減作用も。バリン、イソロイシンとのバランスが大切。
多く含む食品/赤身の肉(牛肉やマグロの赤身)、チーズ、卵、ヨーグルトなど
メチオニン
おもな働き/体内でタンパク質を作るときに必要なアミノ酸。カルニチン
の合成にもかかわる。薬物中毒の解毒。肝機能の強化。
多く含む食品/マグロ、鶏肉、豚肉、豆乳など
リジン(リシン)
おもな働き/体内の細胞の修復、成長促進、肝機能向上。
多く含む食品/カツオやアジなどの魚、大豆製品など
フェニルアラニン
おもな働き/脳内神経伝達物質ドーパミンやノルアドレナリンの材料になるアミノ酸。アスパラギン酸とともに甘味料アスパルテームのもととなる。
多く含む食品/牛レバー、マグロ、鶏肉など
トリプトファン
おもな働き/脳内神経伝達物質セロトニンやナイアシンの材料となるアミノ酸。うつの改善や老化予防にも。
多く含む食品/牛乳、チーズ、牛・豚レバー、カツオなど
スレオニン(トレオニン)
おもな働き/酵素の活性化。成長や新陳代謝の促進、脂肪肝予防、胃炎改善、食欲増進。
多く含む食品/牛乳、チーズ、大豆製品、牛肉、豚肉、マグロなど
ヒスチジン
おもな働き/成長促進、神経機能補助、慢性関節炎の症状緩和、記憶力の向上、抗酸化作用、肥満予防。
多く含む食品/かつお節、カツオ、マグロ、カジキなど
※BCAA=分岐鎖アミノ酸:Branched Chain Amino Acids 筋肉へのエネルギー補給や運動時の疲れ予防に効果があり、 スポーツアミノ酸ともいわれる
参考/『トコトンやさしい アミノ酸の本』
次回からは、実践編。アミノ酸の上手なとり方についてご紹介していきます。
撮影/久々江 満 イラスト/内藤しなこ 構成・原文/近内明子