いつの間にか、声がオバサンぽくなるのはどうしてなのでしょう?
声が若い人、老けている人、その違いはどこにある?
声が老ける原因について、「東京ボイスクリニック」院長である楠山敏行先生にうかがいます。
楠山敏行さん Toshiyuki Kusuyama
医学博士。「東京ボイスクリニック」院長。
慶應義塾大学医学部卒業。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。ベストドクターズ選出医。慶應義塾大学助手、国際医療福祉大学東京ボイスセンター副所長、同大学臨床医学研究センター准教授を経て、現職。外来診療のかたわら、国立音楽大学音楽学部非常勤講師(声の科学)、日本音声言語医学会評議員などの活動も。テレビや雑誌で声について数多く解説。
http://www.tokyo-voice.com/
オバサン声の原因は声帯の老化だけじゃない
「声が老けるというと、喉にある声帯だけの老化と思う方もいるのですが、声の出る仕組みを考えると、それだけ
ではないことがわかりますよ」
と解説してくれたのは、東京ボイスクリニック院長の楠山敏行先生。OurAge世代の声に何が起こっているのか、教えてください!
「まず、声の動力源は、ずばり肺ですね。原音を作っているのが声帯、それを修飾して、その人の声にしてくれるのが口腔や鼻腔。これらは3つとも加齢によって変化が起きます。
肺は年齢とともに弾性収縮力が落ちて、息を吐く力が弱まります。横隔膜や肋間筋など、いわゆる呼吸筋が衰えることで原動力が小さくなる。つまり、声はえてして小さくなるんです。
声帯では、真ん中にある声帯筋が衰えるなどの変化が起きます。しかも、更年期には女性ホルモンが急に減り、粘膜のヒアルロン酸が減って潤い不足に。さらに声帯の血流が悪くなり、むくむという現象も起きます。楽器の弦が太くなると音が低くなるのと同じで、むくむと、声が低くなります。
最後に、声の個性をつくる口腔や鼻腔。これも加齢に伴って動きが鈍くなります。すると母音が不明瞭になり、子音も歯切れが悪くなってくる。これらがおもな老化。そして女性の声の変化の一番の原因は、閉経でしょうね」
なるほど、OurAge世代で声に変化が起きるのも無理がないということ。でも、声が低くなるだけでなく、かすれたりしわがれたりするのはなぜ?
「それは喫煙と直結していますね。タバコを吸う人にしか起きない声帯の変化があります。"ポリープ様声帯”です。声帯の真ん中に半球状の赤い血豆ができるのがポリープですが、ポリープ様声帯は、声帯全体があたかもひとつのポリープのように、半球状にむくんだ状態になるんです。これは喫煙者にしか起こりません」
では、声帯の使いすぎでオバサン声になったりはしないでしょうか?
「もちろん、無理な声の出し方を続ければダメージも大きい。毎晩カラオケで無理な音域で歌っている人は別として、普通に生活をしているなら、使いすぎよりむしろ使わなさすぎのほうが問題です。声帯も筋肉なので、筋肉が衰えないよう使っていることが大事。
ただ、潤い不足で声帯の老化を早めてしまうこともいなめません。そのためには小まめに水分補給することも大切です。飲みたくないときは、うがいでもいいんですよ!」
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●声の老化の原因
1:女性ホルモンの減少(閉経)
声帯の水分量を保ち、血流をよくするなどの働きがある女性ホルモン。更年期には急激に減少するため、声の老化が進みます。
2:喫煙
喫煙は、喫煙者にしか起きない声帯の変化をもたらします。喫煙者にしか起きない病気「ポリープ様声帯」は、直接老化の原因に。
3:声帯の潤滑液不足
喉頭を潤す潤滑液の分泌が減り、液の粘度が上がると、声帯周辺の潤いが不足して潤滑が悪くなり、老化を早めます。
4:声帯の酷使によるダメージ
話し続ける、歌い続ける、無理な発声などは声帯が疲労してしまいます。酷使し続けると回復する暇がなく、老化を早めることに。
5:加齢による肺機能・声帯機能の低下
肺も声帯も、動かしているのは筋肉。年齢とともに骨格筋が低下してしまうのと同じで、使わなさすぎも老化につながります。
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子 指導・監修/楠山敏行