【お話を伺った方】
大手食品メーカー勤務を経て2003年フリーに。全国での講演活動、メニュー開発、栄養コラム執筆、NHKをはじめ健康番組出演など幅広く活動。料理家としてのキャリアは30 年以上。これまで指導した生徒は7万人以上に及ぶ。『目からウロコのおいしい減塩 乳和食』(主婦の友社)、『はじめよう乳和食』(日本実業出版社)ほか著書多数。栄養と作りやすさに配慮したオリジナルミルクレシピにファンも多く、メディアで話題の乳和食の開発者でもある。
ダイエットで不足しがちなのは、タンパク質。そのまま放っておくと大変なことに
小山:はじめまして。管理栄養士の小山浩子です。
ギリコ:OurAge編集部のギリコです。私は今50代半ばなのですが、2年間にわたる自己流ダイエット法で21㎏痩せ、今はBMI値でいうところの「適正体重(標準体重)」になりました。
小山:そうなんですか! 頑張りましたね。
ギリコ:でも、さらに3~4kgは減らし、人生で初めての「美容体重(※標準体重と低体重の間に位置する数値。見た目にすらりとしていてバランスのとれたボディといわれている)」になってみたいんです。
とはいえ、今、私が目指しているのは、単に痩せるということではありません。
肌のハリや血色のよさを失うことなく、健康的に痩せ続けていきたいんです。
せっかく痩せても、肌にハリがなくなって老けて見えたり、血色が悪くて不健康に見えたりしてしまうのって、50代以降のダイエット「あるある」といわれていますが、そうなりたくはないんです。
今まではレトルトおでんなど自分で「これだ!」と思ったダイエット食でかなり減量できましたが、ここからは栄養と食事のプロに〝効率的に痩せられて、しかも美肌も保てるダイエット食〟を教わりたいと思い、今回小山先生のところへ伺いました。
小山:わかります。ダイエットというと、まずは食事量を減らしたり、一時期流行った「りんごダイエット」などのように単一食材ばかりとることを考えてしまいがちですが、仮に体重が落ちたとしても、普通の食事に戻したときにリバウンドしやすいんです。
健康的に痩せるために大切なのは、当たり前のことですがバランスのとれた食事、特に、タンパク質が重要!
なぜかというとタンパク質が不足すると、筋肉量が落ちてしまい、脂肪を燃焼させるのに必要な力「基礎代謝」が落ちてしまうからです。
だから40代、50代のダイエッターは、逆にタンパク質を意識した食事をしっかり食べることがダイエット成功のカギです。もちろんほかにも、代謝を上げるビタミンやミネラルも必須です。
ギリコ:でも、先生、タンパク質がとれる食材というと、まずは肉とか魚ですよね?
私、40も半ばを過ぎた頃から、体力が衰えてきたのと同時に、家事、特に料理をする気力がどんどん減るばかりで…。
料理研究家の方にこんなこと言うのは失礼かもしれないですけど、日々の食事の支度はもはや苦行でしかないです。
だから仕事帰りにスーパーで肉とか魚を買って、下ごしらえして、料理して、おまけにその後片づけまで…なんていうのは、極力やりたくないです。
小山:そうですよね。皆さんそうだと思います。包丁とまな板を出すのもイヤっていう人も多いです。
でも、ダイエット中、タンパク質は絶対に減らしてはダメなんです。
痩せにくくなるだけでなく、肌、髪、爪のダメージにもつながりますから。
ギリコ:そういえば最近、爪が割れやすくなったかも。
それに髪のことはいつも気になっています。若い頃より毛が細くなり、量もずいぶん減ってきているので、これ以上髪にダメージは与えたくないです。
小山:悪影響を受けるのは髪や爪だけではありません。
そのままにしておくと、次は体が冷えやすくなったり、体力や免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなったり…健康を損なうことにもなりかねないですよ。
「痩せたい人にこそ、おすすめ!」。牛乳がダイエットにいい、その理由
ギリコ:免疫力、感染症…。コロナ禍を経験した身としてはギクッとするワードです。
では、健康的にしかも効率よく痩せられる食事・食材って、ズバリ、なんでしょう?
小山:ギリコさん、牛乳はお好きですか?
ギリコ:好きでも嫌いでもないです。ただ牛乳は太ると思っているので、ダイエット生活を始めてから豆乳に切り替えました。
牛乳はもう何年も、まったく飲んでいなくて、シチューを作るときに低脂肪乳を使うぐらいです。
小山:それはもったいない! 牛乳は「栄養素の総合デパート」と言われるくらい、体に必要な栄養がギュッと詰まった準完全栄養食品。
だから、健康的に痩せるための、最強食材なんです。
肉や魚を使わなくても、タンパク質やビタミン、ミネラルがしっかりとれ、未調理でも美味しく、塩分の心配もありません。
ギリコ:でも、牛乳イコール太る、と思っている女性は多いと思います。
小山:それは牛乳の栄養価が高いからでは。「栄養価が高い=高カロリー」と誤解しているのかもしれません。
コップ1杯(200ml)の牛乳のカロリーは138kcal※1。
50代女性(身体活動レベル、中程度)の1日の摂取推奨量1950kcalの1/14程度です。
しかも、牛乳に含まれる脂肪は、体内で燃焼されやすい、短鎖・中鎖脂肪酸。つまり太りにくい脂肪なんです。
それでいて、摂取できるタンパク質は6.8g※2(1日に必要な量のおよそ1/7)。
カルシウムは227mg(1日に必要な量のおよそ1/3)がとれるんです。
糖質制限ダイエットの盲点は、体内でストックしていたブドウ糖を使い果たした後は、筋肉や骨のたんぱく質がエネルギー産生に使われることで、筋肉が落ち、代謝が落ちるということ。
エネルギーのもとになる炭水化物と筋肉のもとになるたんぱく質の両方を効率よく食事で摂ることをおすすめします。
ギリコ:牛乳に含まれている脂肪が太りにくい脂肪、というのは意外でした。
子どもの頃、学校給食で毎度出されていたくらいですから、牛乳は栄養豊富なんだろうな…と思ってはいましたが。
とはいえ、さすがに毎食1杯ずつ、1日3杯とか飲むのはきついです。
小山:そんな方におすすめなのが、牛乳を料理に使う「ミル活料理法」です!
ギリコ:牛乳を使った料理って、シチューとかグラタンのことですか?
小山:違います。シチューやグラタンなどの、いわゆる「ホワイトクリーム、ホワイトソース料理」のことは頭から消してくださいね。
「ミル活料理法」とは、簡単に言うと「牛乳を水の代わりに調理に使う」ということ。
いろいろな料理にちょこちょこ使うことで、牛乳の栄養をこまめにたくさんとろうということなんです。
ギリコ:水の代わりに牛乳? 例えば、どんな料理にどれくらい使うんでしょうか。
小山:炊き込みご飯からスイーツまで、幅広く使えますよ。
1品に100mlの程度のミルクを使用するのですが、今回、ダイエットがテーマなので「低脂肪」タイプの牛乳を使用します。
ギリコ:これって低脂肪乳というものですよね? ダイエットを始めてからシチューを作るときに使っていました。
小山:違います!違います!「低脂肪牛乳」と「低脂肪乳」は大きく違うのです。
低脂肪牛乳は原材料は生乳のみ。乳脂肪分の一部を減らして低脂肪にしたもので、「牛乳」です。
一方、低脂肪乳は「牛乳」ではありません。
パッケージ表に種類別「加工乳」もしくは、「乳飲料」と表記してあり、原材料名には生乳以外に加えられた原料が表記されています。
この「脂質70%オフ 低脂肪牛乳」は、牛乳の栄養はそのままで、脂肪分だけをカットした「牛乳」。
まさにダイエッターにはぴったりです。
〔セブン‐イレブンで手に入る『脂質70%オフ 低脂肪乳』〕
ギリコ:「牛乳」「加工乳」「乳飲料」……ミルクにこんなカテゴリー分けがあるのを知りませんでした。買い物のときはたいてい急いでいるので、売り場で「低脂肪」の文字を見たら、それだけでカゴに入れていました。それにしてもコンビニで買える商品は便利で助かります。
小山:そもそも牛乳に含まれる乳脂肪は太りにくい脂肪なので、本当は、何も手を加えていない普通牛乳を飲んで欲しいし、お料理にも活用して欲しいのですが、ダイエット中はカロリー、脂質の数値をみなさん、とっても気にされます。
なので、低脂肪牛乳をおすすめするようにしています。
それに調理の際に低脂肪の牛乳を水の代わりに使っていただくと、違和感なく美味しく仕上がるんですよ。
牛乳を料理に使ったときに、膜がはったり、分離したり、うまくいかなかったという経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。「水代わり」に使用する場合は、まずは、乳脂肪が少ない牛乳で調理をして、慣れていただくことをおすすめします。
今日は〝料理するのがしんどい〟というギリコさんでも簡単に作れるレシピ「アボカドのクリームペンネ」をご用意しました。
材料は、すべてコンビニで買えるものですから安心して(*)
〔「アボカドのクリームペンネ」のレシピを教わった後、ギリコがさっそく家でつくってみた一皿。このときは家にZENBのマメロニがあったので、それを使ってみたのですが、水でゆでたときよりももちもちでびっくり。しかもマメロニそのものの味わいも深くなっていました〕
1日に必要なタンパク質のおよそ1/2がとれる、おしゃれパスタ
小山:今回のレシピの一番のポイントは、ペンネをゆでるときに水ではなくミルクを使うというところ。
ペンネがミルクの旨味を吸っておいしくなるうえに、栄養価もぐんとアップします。
50代半ばというギリコさんの年齢を考慮し、今回は数あるミルクの中でも、脂肪分が少ないだけではなく、タンパク質やカルシウムを強化した次世代ミルク「プレミル」を使用したレシピにしました。
〔プレミルは乳脂肪分を67%カット。しかもコップ一1杯(200ml)当たりタンパク質が10g(牛乳の約1.5倍)、カルシウムが482mg(牛乳の約2倍)摂取できます〕
<材料(1人分)>
プレミル(青) 300ml
ZENBマメロニ 100g
※または早ゆで3分ペンネ100gでもOK
冷凍アボカド 適量
ポン酢しょうゆ 少量
*店舗の規模やエリア、時期により、置いていない店もある場合があります。
<作り方>
①鍋にプレミルとZENBマメロニ(または早ゆで3分ペンネ)を入れ、落としぶたをして、時々底のほうを混ぜながら、中火で表示のゆで時間の2倍を目安に、麺がミルクを吸ってやわらかくなるまで加熱する。
ミルクが残っている状態でOK。
②火を止め、アボカドを加えてさっとあえ、皿に盛り、ポン酢しょうゆをかける。
※ごま油を少量かけてもおいしい。
小山:1日に必要なタンパク質は体重1kgにつき1gといわれているので、体重50kgの人なら、だいたい50gが目安。
この1品で、タンパク質がおよそ30g(プレミル17g、ZENBマメロニ使用の場合15g前後)と、1日に必要なタンパク質量の半分以上がとれてしまうんです。
それにこのミルクでゆでたペンネは、いろいろアレンジもできるんですよ。
塩、こしょうをしてマヨネーズ、ハム、きゅうりを混ぜればマカロニサラダにもなります。
いつもより少なめのマヨネーズであえても十分味があるので、ダイエット中におすすめです。
組み合わせる食材で、さらにビタミン類をオン、糖質をオフ!
ギリコ:このZENBは以前から記事で取り上げてみたかった食材です。マメロニのほかに丸麺などもあり、今、大豆ミートと並んで、健康と美の両方を目指す40代、50代から注目の商品なんです。
最近、コンビニによっては置いている店舗もあり、以前より買いやすくなっています。
小山:ZENBのマメロニや丸麺は小麦粉ではなく、黄えんどう豆が原料。
低糖質、低GIなので、ダイエット中、糖質を控えたいときにおすすめです。
牛乳はおもな栄養をまんべんなくとれるスグレモノですが、実は食物繊維はほぼとれないので、牛乳×ZENBはベストな組み合わせなんです。
ZENBが入手できない場合は、セモリナ粉のパスタを使ってもOK。
アボカドにはタンパク質のほか、肌に潤いを与えるビタミンEが含まれているので、ぜひ具材として加えてくださいね。
ギリコ:ダイエットかつ美肌の最強メニューですね。アボカドが好きという人はけっこういると思うので、このレシピは喜ばれそうです。
ところで先生…。これ、言ったらちょっと先生に呆れられるかもしれないんですけど…。
小山:なんでしょう?
ギリコ:このレシピには落としぶたを使うと書いてありますが、落としぶたとして、キャベツの葉を使ったらだめでしょうか? よく残りがちで冷蔵庫で置き去りになっている大きな外葉とか…。
日々の食事の支度が苦行でしかない私としては、落としぶたを出したり、洗ったりすること自体がもう面倒なことなんです。
小山:キャベツの外葉? それ、いいかもしれませんね!
ゆで上がったらキッチンバサミで刻んでしまえば、そのまま食べられますし。
それに牛乳ではとれない食物繊維とビタミンCが、キャベツでとれます。すごい名案です!
ギリコ:よかった。ちょっと恥ずかしかったですが。
小山:栄養的にも完璧ですし、春キャベツは味の面でもミルクとの相性抜群でもあります。アボカドの代用にもベストですね。
もし、しらすが冷蔵庫にあったら「春キャベツとしらすのパスタ」なんていうのもおしゃれでいいのでは。
その場合、落としぶたとは違いキャベツが水分を吸うので、その分としてプレミルを先ほどのレシピに50ml追加してくださいね。ギリコさんのアイデア最高です。目からウロコ、じゃなくて、もう目が落ちました!
そのほか、アボカドの代わりに冷凍枝豆もビタミンB群やC、食物繊維がとれるのでおすすめです。
ギリコ:ミル活料理法は、そのままでも飲めて調理の手間がかからない牛乳を中心に、コンビニなどで手軽に買える食品を使うというのがいいですね。
プレミルのような栄養を強化したミルクを使えば、さらに料理の栄養価がアップするので、健康的に痩せたいというダイエッターの力強い味方になるということもわかりました!
小山:それはよかったです。牛乳=太るというイメージで、ギリコさんのように飲むのをやめてしまう人がいますが、牛乳は優秀なたんぱく源であり、脂肪燃焼効果のあるカルシウムも多く含み、代謝を高めるビタミンB群も豊富に含まれています。
ですので、上手に取り入れていただきたいと思うんです。
こんなに栄養価が高くてお財布にやさしい食品って他にありませんからね。
ギリコ:たしかにうちの近所のスーパーでは1000mlのものが1本200円もしないことが多いです。
小山:そんな中で目を向けて欲しいのが低脂肪牛乳。牛乳に比べて低カロリー、低脂肪。
牛乳から脂肪を搾取しただけなので、味の面でもおいしく、お料理に使いやすいというメリットもあります。
そうそう、ここで大事なポイントが。
それは先ほど説明したように、「低脂肪」をうたっていても「牛乳」「加工乳」「乳飲料」とミルクにはいろいろな種類があるので、しっかり種類別と原材料を確認して選ぶということ。
また、ミル活料理法では一品につき牛乳を100ml程度使用するともお話ししましたが、量を増やしたり、2品作るのは大変だという方もいると思います。
そんな方には、栄養を強化した次世代ミルクをおすすめします。
低脂肪かつ、たんぱく質とカルシウムが強化されていますから、同じ量で同じように作っていただいた際、自然に摂りたい栄養素をさらに強化できるんです。
ギリコ:そのひとつが、先ほどのレシピに登場したプレミルですよね。
小山:これからは、牛乳もライフスタイルや目的に合わせて賢く選択する時代だと思うんです。
スーパーに行くと、沢山の種類の牛乳が並んでいますから、いろいろと試してみるのもいいですよ。
ダイエット中の方には、牛乳やミルクを敬遠せずに、選んで使って、リバウンドしない素敵なボディづくりに役立てていただきたいです。
毎日無理なく続けられるよう、ミル活料理法には難しいルールはありません。
家に余っている材料で、「あ、これ入れてもいいかも」って思うものがあったら足してみる、くらいの気軽さでやってみてください。
ギリコ:了解です! やってみます。
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…ということで、ここからはギリコの自宅キッチンにて。
「アボカドのクリームペンネ」を作ったあと、そのアレンジバージョン「キャベツのクリームペンネ」もつくってみました。
調理の際は、落としぶたの代わりにキャベツの外葉を使用!
しばらくするとパスタがミルクを吸い、かさが増えてきて、キャベツもいい感じにクタッ!
出来上がり♪
食べるラー油とにんにくしょうゆ少々をかけ、そのあと思いついてマヨネーズもちょっと足してみたら…本当においしい!
この「ミルクで煮たパスタ」は多めに作っておき、翌日、晩酌のおつまみにもしました。
取材のとき、「チーズをかけて焼くとおいしいですよ。なんとふりかけも合うんです!」と先生が言っていたので、さっそくやってみました。ふりかけのパリパリした食感と香ばしいチーズ、それにもちもちのパスタ…これも本当においしかった! ちなみに隣にあるのはプレミルを加えたしじみのおみそ汁です。みそ汁に牛乳が合うのにもびっくり。
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…ということで、このようにわたくしギリコは、しばらくミル活料理法を続けてみることにしました。
目標の〝健康的に、なおかつ効率的に痩せる〟が実現できたら、OurAgeで報告しますのでお楽しみに!
取材・文/瀬戸由美子
※1 重量換算206.4gで算出。参考:「日本食品標準成分表」七訂138kcal、八訂126kcal
※2 「日本食品標準成分表」七訂の数値
*店舗の規模やエリアにより、置いていない店もある場合があります。