【教えてくれた人】
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修了。慶應義塾大学SFC研究所 食・フードサイエンス&テクノロジー共同研究機構メンバー。著書は『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『20kgやせた! 糖質オフ入門 最新版』(宝島社)などすでに28冊に及ぶ。ベストセラーも多数。
あなた勘違いしてる! 食べる量が少ないから痩せないのよ
こんにちは、こんばんは。
朝に夕に、食べ物と健康のことばっかり考えている管理栄養士の麻生れいみです♪
「食べてる量が少ないと言われるのに、全然痩せないんです〜」と訴える人、すごく多い。
「カロリーの高いものなんか全然食べてないのに太りやすくて〜」という人も、いまだにいます。
食事を見せてもらうと、食べてる量は確かに少ない。
カロリーを気にしてるという人も、確かにカロリーの高いものは食べてないの。
でもそれ、「昭和あるある」ですから〜。
40代、50代以上の人は、若い頃に得たダイエットの知識が邪魔しちゃう。
「食べる量が多ければ太る」「カロリーの高いものは太る」という神話から抜け出せない人が多いわけです。
食べる量が少ない人は圧倒的にタンパク質不足。
そしてビタミン・ミネラル不足です。
そんなに少ない食事では、満足に栄養がとれるわけがないの。
もしかして、カロリーと栄養を混同してない?
カロリー(エネルギー/熱量ともいう)とは、エネルギー量(熱量)の単位のこと。
一方、「栄養」とは必要なものを体内に取り込んでエネルギーをつくったり、代謝したり体の組織をつくったりして、生命を維持していく営みのことを指します。
そして、栄養の源になる物質を栄養素といいます。小学生のときに学校で習いましたよね、栄養素により食品は大きく3つに分けられること。
①エネルギーになるもの
②体をつくるもの
③体の調子を整えるもの
体の代謝にはこれらすべてが必要。
栄養素には「タンパク質」「脂質」「炭水化物(食物繊維)」「ビタミン」「ミネラル」がありますが、どれかが不足したり多すぎたりすると、代謝が正常に行われない。
この単純で重要なことを忘れてしまってる人が多いんです!
食べる量が少なかったらどうなりますか?
栄養が足りないから代謝が正常に行われず、体内に蓄えられたエネルギー(脂肪)が燃えない。すなわち痩せない、太る。
そういうことよね。
ビタミンBがなければ、脂肪は燃えるはずがない!
まずね、タンパク質はしっかり量を食べないと絶対にダメ。
体のすべてのパーツはタンパク質でできてるんですから。
筋肉はもちろん皮膚、髪の毛、歯、爪、血液も臓器も、ホルモンも酵素も、抗体などあらゆる組織の元になるのがタンパク質。代謝を促進し、脂肪燃焼効果にも役立ちます。
そんなに重要なのに、タンパク質は体内にためておくことができない。だから毎日毎食欠かさずとることが重要なの!
痩せる・太らない観点でいえば、タンパク質不足が続いたら、体重は減るけど筋肉も減ります。
筋肉量が多い人は基礎代謝量が高く、運動をしなくてもたくさんエネルギーを消費できるけど、筋肉が少ない人はエネルギーを消費しにくので太りやすい。
悪者扱いされがちな脂質にしても、いちばん効率のよいエネルギー源。
いざというときのために体脂肪としてためられはするけど、ヒトの体には必要なもの。
「代謝回転」という言葉があって、私たちはいろんな栄養素によって代謝を回している。食べ物で体を回しています。
ビタミンやミネラルがなかったらどんな栄養素も代謝されない。つまり、体が回るわけがないんです。
例えば、脂肪を燃やすのに必要な栄養素はビタミンB。
ビタミンBがなければ脂肪は一生燃えることはないの。ビタミンBは着火剤みたいなもので、あるとないとじゃ大違い。
ビタミンB群ってどんな食べ物だっけ? と、今調べようと思ったあなたは大正解!
ビタミンB1、B2、B6、B12…、食べなきゃいけないものがたくさんあるでしょ。
肉に魚介にレバーにウナギにナッツに豆類に…。
たくさんあるってことは、そう、いろいろなものをたくさん食べなきゃならないってこと。
私たちは体を回し続けなきゃいけない。
食べて回して燃やす、食べて回して燃やす…。
健康に生きるということはそういうこと、止まっちゃダメなの。
でも止まっちゃうからね、皆さん。
痩せないだけじゃなく、疲れやすいとか風邪を引きやすいとか不調も出てくるわけです。
具体例を見てみましょうか。
この方はまさに「そんなに食べてないのに痩せませ〜ん」と泣きついてきた女子です。
↑「野菜モリモリを心がけてます」という彼女の1日の食事。
朝:キムチのせ納豆、サラダに温泉卵。
昼:わかめご飯のおむすび、ポテトサラダ、野菜ジュース。
夜:鶏肉入りサラダ、ハイボール缶。
正直、1日にこれだけしか食べてないの? とびっくりでした。
野菜たっぷりはいいけれど、タンパク質は1日合計で25〜30g。1日にとってほしい量の半分です。
当然ながらビタミンB群も足りてない。
これでは、痩せないのは当たり前よ。
肉や魚などでタンパク質とよい脂質をたっぷりとらなきゃ1ミリも痩せません。
タンパク質不足になっていないか、簡単にチェックする方法
あとはね、1日3回ちゃんと食べていない人は得てして痩せない。
2食、究極は1食なんていう人はちょっと考えてみて。
なぜダメかというと、ひとつは食間が長いと血糖値が急に上がりやすいから。
血糖値が急に上がるとインスリンも急に出る。
インスリンは余った糖を脂肪としてため込むので、「肥満ホルモン」と呼ばれているくらい。
だからなるべくたくさん出さずにおきたいの。
そしてもうひとつは、1回に消化吸収できる量は限りがあるから。
例えば1日分のタンパク質をまとめてとろうとしても、そんな能力は40代以降の女子にはないんだから、とるだけ無駄になっちゃう。
1回に消化吸収できるタンパク質の量は平均20g。肉や魚の量にすると約100gです。
これはちょうど片方の手のひらを広げてのせられるくらいの量。
だから私が栄養指導するときには、「タンパク質は1回に手のひら1枚分は食べること」と言うようにしてます。
先の彼女にも「毎食、肉や魚などを手のひら1枚分足してね」と指導しました。
とはいえ長い間、頑なに太りたくないと思ってきた女性は、カロリーの高いタンパク質に拒否反応が出てなかなか食べられない。
だから言ったでしょ、食べないから太るの。
「カロリーが多いから太る」も「昭和あるあるな神話」ですってば。
しっかりタンパク質をとる習慣がなかった人は、手のひら1枚分でも最初は食べたあと、胃がムカムカするなどの身体的な問題も出ます。
そんなときは、プロテインやアミノ酸パウダーなどで解消できます。
とにかく、食べることに慣れましょう。
「食べないから痩せない」「食べて痩せる」と肝に銘じてね。
取材・文・画像作成/蓮見則子 イラスト/カケハタリョウ