耳鳴り
私がお答えします!
国際医療福祉大学病院・耳鼻咽喉科部長、同大学医学部教授
中川雅文さん Masafumi Nakagawa
順天堂大学医学部客員准教授、みつわ台総合病院副院長などを経て現職。臨床の場に立ちながら、耳とコミュニケーション研究の第一人者として聴覚障害者の支援にも取り組む
相談
最近、耳鳴りがします。考えられる原因は? 放っておいて自然に治るものですか? 病院に行くべきでしょうか?
答え
耳鳴りの原因はさまざま。1、2日様子を見て、長引くようなら、医療機関を受診することをおすすめします。
日常的な騒音に要注意!
ストレス過多な女性にも増えています。
「ザー」「キーン」「ドクドク」…など、実際には音がしていないのに音を感じる感覚が耳鳴りです。その原因はさまざまありますが、約8割に難聴が隠れています。
聞こえづらくなると、脳がより多くの音を拾おうとして、これを耳鳴りとして感じてしまうのです。以前は「加齢による聴力低下」がおもな原因とされていましたが、最近は若い世代にも増えています。
その背景には、ストレスや生活環境による影響が考えられます。例えば大音量のロックコンサートなど、一過性のものなら、聴神経に障害が起こっても48時間ほどで修復します。
しかし、大きな騒音に長時間、日常的にさらされた場合、修復ができず難聴が固定化して、慢性の耳鳴りに移行することがあります。イヤホンで大音量の音楽を聞き続けるなどがその一例ですが、身のまわりの意外な音、「生活の中の騒音」が原因になっていることもあります。
実際にあった事例では、音の大きな高吸引力掃除機とロボット型掃除機を同時に使用し続けていたケース。ふたつが重なるとかなりの騒音になるのです。この併用をやめてもらったところ、耳鳴りは改善しました。
また、侮れないのがドライヤーで、耳の近くで使用するため、長時間になると耳への負担が高まります。使用は1回15分以内に抑えることが重要です。
耳鳴りには、脈を打つようなリズムのある「拍動性耳鳴り」と、リズムのない「非拍動性耳鳴り」があり、前者は動脈硬化や不整脈が原因のことが多く、後者は加齢やストレス、騒音による難聴、女性ホルモンの分泌低下などが原因と考えられています。
また耳鳴りを起こす病気には、「耳垢栓塞(じこうせんそく)(耳垢による詰まり)」「突発性難聴」「メニエール病」「耳硬化症」などがあります。
医療機関では、こうしたほかの病気が隠れていないかを検査したうえで、難聴がある場合は補聴器による調整を。耳鳴りだけの場合は、カウンセリングや音響療法などの「耳鳴り順応療法(TRT)」を行います。
音響療法とは、補聴器型の装置で微量な音(ノイズ)を流すことで、音への注意をそらせて耳鳴りを改善していく方法です。
患者さんに気をつけてほしいのは、大きな音を避け、静けさを楽しむ習慣をもつこと。ストレスや血流の悪さも症状を悪化させるので、適度な運動も大切です。カキや小魚など亜鉛が豊富な食材や、タンパク質をしっかりとるようにしましょう。
自分で行う対策
- ●騒音環境やイヤホンの長時間使用を避ける。
- ●適度な運動を心がける。
- ●亜鉛やタンパク質を摂取する。
病院で行う治療法
- ●カウンセリング、音響療法などの耳鳴り順応療法(TRT)、難聴が伴う場合は補聴器療法、薬物療法(対症療法として)
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子