正しい姿勢で立つことは、筋肉を自然に育てていくこと!
トレーニングのプロと食のプロがタッグを組んで、筋肉不足女子を救済する3カ月実践プロジェクト。今回エントリーしてくれたのは、会社員で3人の子育て中のワーキングママ、安川香織さんです。
安川香織さん(1973年生まれ・会社員)
身長150cm/体重42.05kg
「小さい頃から“小柄でガリガリ”なタイプ。40代からはお腹まわりやお尻、二の腕のたるみが気になり始めました。食生活もずっと同じだし、1日の活動量も多いほうだと思うのですが、年齢とともに代謝が悪くなっているのかなぁと感じます。
ここ数年、職場の昼休みに運動できる環境にあったのですが、この春から異動でそれもかなわなくなりました。
健康的なバランスのいい体型になるためにできることがあれば、ぜひ教えてください!」(安川香織さん)
運動面はボディワークプロデューサーのkyoさん、食生活は管理栄養士の麻生れいみさんがサポートしてくれます。
メリハリボディに必要なのは、お腹の力! 筋肉を育てるのは、正しい姿勢!
まず、安川さんが最初に訪ねたのは、kyoさんのスタジオ「b-i STYLE(ビィスタイル)」でした。
こちらは日本初の骨盤調整レッスン専門スタジオ。二十数年前から「美と健康は骨盤と骨盤底筋にある!」と言い続けてきたkyoさんが、さまざまなアプローチで一緒に悩みを解決してくれる場所です。
「安川さんは、体型にメリハリがないのが弱点。筋肉が少ないというよりインナーマッスルが使えていない、つまりお腹の力が足りていない印象です。腹直筋などの外側の筋肉を鍛えるよりも、内側の筋肉を使えるようにすることでしなやかなメリハリ体型になっていくと思いますね。
筋肉をつけることは、脂肪を減らして痩せることではありません。年々筋肉も骨量も減っていきますが、脂肪がホルモンの材料にもなるので、安川さんのようなタイプが痩せることを考えると老けてしまうと思います。
話している姿を見ていて気になったのは、あごを前に出すクセがあることかな。デスクワークの時間が長い人にあるあるなんですが、このままだと肩も前に出てしまい、姿勢を整えたくてもなかなか難しい。長年積み重ねた習慣は意識して直すしかないんです。上半身は胸郭ごと後ろに引いて立つ姿勢を身につけてほしいところですね。
正しい姿勢で立つことは、無意識に抗重力筋(重力に対して姿勢を維持するために働く筋肉)がきれいに働くので、それだけで自然に筋肉はついていくものです。長い目で見るとすごく大事。
O脚ぎみなのは毎日の自力矯正で直せます! スタジオのレッスンにもO脚改善レッスンがあるんですが、それは家でもできるエクササイズ。脚のラインはすぐに変わると思いますね。
安川さんだけではありませんが、50歳以上になると長年にわたって習慣づけた体の頑固さがあります。それをほぐすことから始めるのが理想です」(kyoさん)
kyoさんが目に止めたのは、安川さんのこのクセです。話をしているときでも自然にあごを前に出してしまいます。
「あごを引く」だと二重あごになる一方。「首を上に伸ばしたまま、頭全体を後ろに引く」というクセづけをすると、自ずと姿勢も変わってきます。
お腹の内側の筋肉が使えないことを指摘するkyoさん。体幹のインナーマッスルの鍛錬は脊柱のしなやかさにつながります。「首のアライメント(位置関係)から仙骨(骨盤の真ん中)までを整えつつ、しなやかに動ける体を目指しましょうね」
O脚は直せる! というkyoさんのうれしい言葉に、安川さんもやる気になってきました。
kyoさんがどんな運動を提案してくれるのか、がぜん期待が高まります!
タンパク質見直し大作戦、どこまで達成できますか?
さて、次にチェックしたのは安川さんの食事。日常の食事を数日間、写真に撮って報告していただきました。もちろん、管理栄養士の麻生れいみさんが厳しい目でチェックします。
ある日の食事。朝食:なし。昼食:カレーライス。夕食:しょうが焼き(写真の半分量)、トマトと玉ねぎのマリネ、きゅうりのぬか漬け、油揚げと長ねぎの味噌汁(MCTオイル大さじ1入り)、納豆、デザート(いちごバウムクーヘン1/8切れ)。その他:せんべい、そば茶、麦茶、緑茶、ブラックコーヒー
こちらの日も、朝食:なし。昼食:明太子パスタ、大根サラダ、コーン、にんじん、コンソメスープ。夕食:麻婆なす丼、わかめと豆腐の味噌汁、サラダ、デザート(ぜんざい)。その他:ハーブティー、牛乳入りコーヒー、クッキー3枚。
40代からの「筋肉を増やす食べ方10カ条」を掲げている麻生さんからは、予想通り、朝食を食べないこととタンパク質不足を注意されてしまいました。
「お肉や魚もちゃんと食べているので、タンパク質が足りていないとは思っていませんでした。朝食をとるのは難しい気がしています。平日は、起きてすぐには食べられる気がしない。3人の娘と自分の出かける用意で、あまり時間もないのがネックです」
と安川さんが言えば…
「朝は料理をしなくてもいいから、何かタンパク質を食べてほしいんです。ヨーグルトでも豆乳でも何でもいい。これは筋肉をつけたい人だけじゃなく、40代以上のすべての女性に言いたいこと。
若いときのままの生活では筋肉は年々減っていくのです。今くい止めたければ、最低限の工夫はしましょう。
昼は外食が多いようですが、パスタとかカレーとか丼物では炭水化物が多くなります。カロリーだけが高く、タンパク質は当然ながらビタミン、ミネラルも不足してしまう。いろいろな食材がとれるよう、なるべく定食のようなものを食べましょう。
夜、家族と食べる日はちゃんと料理もしていてすばらしいと思います。夜はわりとタンパク質がとれているように見えますが、朝と昼に足りていないので、一日で見ると本当に足りないです。安川さんの場合は、タンパク質見直し大作戦ですね!
kyoさんも言っていますが、痩せないでいいの。そして太ることを怖れてはダメ。筋肉は脂肪よりもずっと重いので、体重は増えていいんです。更年期以降は体脂肪もある程度はあったほうがいい。脂肪はホルモンの材料でもあるので、少なくなりすぎたらよくないのですよ」(麻生れいみさん)
【教えていただいた方】
1962年生まれ。ボディワークプロデューサー。「b-i STYLE(ビイスタイル)」主宰。幼児体操の指導を経て、大手スポーツクラブの人材育成やプログラム開発に携わる。1997年より整体や解剖学などを学び、独自の骨盤調整メソッド「ペルヴィスワーク」を考案し、2005年よりスタジオ・ヨギーでレッスンを展開。2015年、自律できるからだづくりをテーマに、日本初の骨盤専門スタジオを東京・青山にオープン。基本の骨盤調整レッスンをはじめ、筋膜ストレッチ、美脚・美尻づくり、筋調律、フローダンス、ウォーキング、整顔など、独自のレッスンで女性の美と健康を応援。骨盤や骨盤底筋に特化した著書多数。
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修了。慶應義塾大学SFC研究所 食・フードサイエンス&テクノロジー共同研究機構メンバー。著書は『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『20kgやせた! 糖質オフ入門 最新版』(宝島社)などすでに28冊に及ぶ。ベストセラーも多数。
人物撮影/藤澤由加 取材・文/蓮見則子