「パソコン作業が多い」「仕事や家事で腕や手指を使うことが多い」せいか、前腕が痛くてつらい…。
やわらげる方法はありますか?
この連載では、第8回で「手の痛み」、第12回で「手や指の痛み」のケア法を紹介しましたが、ひじから手首までの部分、「前腕」が痛くなってつらい、という声も聞きます。
「前腕」が痛くなる症状は、スポーツをする人、長時間のパソコン作業やキーボードを打つ動作、手指をよく使う作業、工具を使う作業、重いものを運ぶ作業、楽器の演奏などをすることが多い人に起こりやすいといわれます。
前腕は、毎日よく使う部分だけに、痛みや違和感を感じたときに、自宅で気軽にできるセルフケアを習慣にしたいものですよね。
つらい痛みをやわらげるためにはどうしたらいい?
今回は、「前腕の痛み」への効果が期待できるセルフケア法をご紹介します。
Satoshi先生に、自分でできる「前腕の痛み」のケア法を教えていただきました
Satoshi先生は、大阪を拠点に自身のサロンを経営し、別会社のマネージャーを兼任するなど精力的に活動。
東洋医学・西洋医学の理論をもとにした、さまざまな体メンテナンスの方法に精通した、人気インストラクターの先生です。
OurAgeの「五臓ヨガ」連載の先生としてもおなじみ。
経穴(ツボ)と経絡(けいらく=気血というエネルギーの通り道)を意識しながら動くことで、五臓のバランスを整え、体と心を健康な状態へと導くという、東洋医学をもとにした「五臓ヨガ」の考案者としての知識。
鍼(はり)や灸(きゅう)でツボを効果的に刺激して、痛みや筋肉の緊張を緩和したり、血流をよくしたりして、体の不調を改善する鍼灸師としての視点。
体の中のさまざまな筋肉を意識して動かすことで、不調を整え、筋力の向上を目指す、筋力トレーニング、ストレッチのインストラクター・トレーナーとしての経験。
さまざまなメソッドの施術や指導で、多くの人を健康に導いてきたSatoshi先生が、豊富に持つノウハウの中から、私たちの不調に合わせた最適なエクササイズを教えてくれます。
今回は、エクササイズに使える場所の有無、難易度別に、【初級編】と【中級編】に分けて、おすすめのセルフケア法を紹介します。
■セルフケア法 その1/初級編
「前腕の痛み」には、腕の内側の「前腕屈筋群」を中心に、上腕と胸にある筋肉も一緒に伸ばすストレッチが効果的!
「前腕の痛み」をやわらげるには、前腕の筋肉をストレッチするのが効果的。
【初級編】は、「前腕屈筋群」のストレッチです。
前腕の筋肉には、「前腕屈筋群」と「前腕伸筋群」の2種類があります。
「前腕屈筋群」は、ひじの内側から前腕を通り、手や指へとつながっている、さまざまな筋肉の総称です。
主に手首を手のひら側に曲げたり、手指を曲げたりするときに使われます。
このストレッチを行うと、「前腕屈筋群」のほか、胸にある「大胸筋」、上腕にある「上腕二頭筋」も伸ばすことができるので、猫背の人やデスクワークが多い人にはぜひ実践してほしいケアといえます。
朝昼晩、いつ行ってもOK。
デスクワークをしている人は、1時間に一度くらい行うのがベストです。
●ここを刺激する!
上にも書きましたが、前腕に痛みが出る症状は、ひじ関節や手関節、手指をよく使う生活習慣を持っている人に多い傾向が。
スポーツ、デスクワーク、家事、ひじや手指への負担の大きい仕事などで、日々の負担が蓄積して痛みが発生していることが考えられます。
前腕の内側の「前腕屈筋群」とともに、上腕の前面にある「上腕二頭筋」、胸にある「大胸筋」など、前腕の筋肉と連動している箇所を、全体的に伸ばして緩めることが、痛み緩和には効果的です。
「上腕二頭筋」は、腕を曲げたときに二の腕に出る「力こぶ」にあたる筋肉のこと。
肩とひじのふたつの関節を越えてついているので、肩、ひじ、前腕の運動に関係しています。
「大胸筋」は、胸板の部分にある筋肉です。
腕を前や内側に持ち上げて固定する働きがあります。深い呼吸のサポートもします。
■前腕、上腕、胸の筋肉を伸ばすストレッチをしよう
【1】真っすぐに立つ
柱や窓枠の横に、両足を腰幅くらいに開き、真っすぐに立ちます。
【2】柱や窓枠に手をかけ、ひじを伸ばす
右手を柱や窓枠にかけます。
左脚を曲げて前に出し、右脚は真っすぐ後ろに伸ばします。
前に体重をかけて、右ひじを伸ばしていきましょう。
【3】そのまま体をねじってキープ
【2】の姿勢から、体を左向きにねじります。
そのまま、自然な呼吸をしながら60秒ほどキープしましょう。
終わったら、左右の手足を逆にして、反対側も同様に【1】~【3】を行います。
利き手を柱や窓枠にかけて行う場合は、もっと時間をかけてじっくり行っても◎。
●これはNG!
壁に手をつくのは、体を支えることができないのでNG。
手は必ず、体を伸ばしたときに支えることができる、柱や窓枠にかけて行いましょう。
■セルフケア法 その2/中級編
「前腕の痛み」には、腕の外側の「前腕伸筋群」をツボ押しで刺激するとさらに効果的!
前腕には、【初級編】で紹介した「前腕屈筋群」のほか、「前腕伸筋群」という筋肉群があります。
【中級編】では、「前腕伸筋群」を刺激するケア法をご紹介。
「前腕伸筋群」は、ひじの外側から前腕を通り、手や指へとつながっている、さまざまな筋肉の総称です。
主に手首を甲側に曲げたり、手指を伸ばしたりするときに使われます。
ここを刺激して緩めることで、さらに「前腕の痛み」をやわらげる効果が期待できます。
朝昼晩、いつ行ってもOKです。
●ここを刺激する!
上で紹介した「前腕屈筋群」が手首や手指を内側に曲げる動作を担当しているのに対して、この「前腕伸筋群」は、手首や手指を外側に開いたり伸ばしたりする動作を担当しています。
これらの筋肉が連動して働くことで、手首を回転させたり、手を握ったり開いたりといった複雑な動作が可能になります。
■前腕の筋肉を、ツボ押しと手首回しで刺激しよう
【1】 ツボ「手三里」を押す
「前腕伸筋群」を刺激するには、「手三里」という腕のツボを押すのが効果的。
ツボ「手三里」は、ひじを曲げたときにできる腕のシワの外側から、手首側に指3本分離れた場所にあります。
この「手三里」を、親指で、“イタ気持ちいい”と感じる程度の力加減で、じわーっと15~30秒押します。
押す場所は、「手三里」が目安ですが、そのあたりで自分が“イタ気持ちいい”と感じる箇所を何点か押すとベター。
首のこりや五十肩をやわらげる効果も期待できます。
ツボ押しを行っている間は、普通に呼吸を行って、息を止めないようにしましょう。
【2】「手三里」を押しながら手首を回します
「手三里」を押しながら、手首全体を回します。
【1】の体勢のままでも、上写真のようにひじを曲げて行ってもOK。
時計回り、反時計回り、各5回くらい手首を回します。
これが終わったら、左右の手を逆にして、反対側も同様に【1】【2】を行いましょう。
【終わりに】
【初級編】のストレッチ、【中級編】のツボ押し&手首回し、いかがでしたか?
どちらかひとつを行ってもOKですが、両方を行うと、前腕の筋肉をバランスよく刺激することができるので、より効果的です。
どちらも気持ちよさを感じられるケア法なので、「前腕の痛み」を感じている人は、ぜひトライしてみてくださいね。
痛みを感じていない人も、前腕のこりをほぐしたり、調子を整えたりする運動としておすすめなので、行ってみましょう。
【教えていただいた方】
大阪・心斎橋のサロン「B HAPPY」で鍼灸・美容鍼灸やパーソナルトレーニングを行うほか、インストラクターやセラピスト向けのカラダの講座を開講中。大阪・豊中の「岩塩ヨガスタジオ 四季」で五臓ヨガのクラスも担当。また、子どもを中心とした運動教室「カラダツクルスクール」でも活躍中。幅広い方法で健康・美容にアプローチする、カラダメンテナンスの専門家。 「サトシ "鍼灸とヨガとシンギングボウル"」インスタグラム:@sa.to.shi.f 「B HAPPY」インスタグラム:@b.happy3104 「岩塩ヨガスタジオ 四季」インスタグラム:@ganenshiki 「カラダツクルスクール」インスタグラム:@karadatsukuruschool
撮影/仲尾知泰(Ripcord) 指導・モデル/Satoshi 取材・文/藤本幸授美