手術ははたして痛いのか、怖いのか? 現実は…
職業柄、長年目を酷使していたせいか、眼瞼下垂が気になって仕方なかったライター蓮見。
実際はまぶたが瞳孔にかかるほど落ちてきているのに、おでこや眉の力で目を開けているので、パッと見た目にはわからない「隠れ眼瞼下垂」でした。
当時、高田尚忠先生は浜松と名古屋のクリニックでしか手術を実施していなかった(*)のですが、それでも高田先生を選んだのは以下のような理由から。
① 眼瞼下垂の専門ドクターであること(眼科医のため顕微鏡手術)
② 保険診療が主体であること(私は治療がしたいのであり、美容整形をしたいわけではなかったので)
③ 先生の執筆しているブログ記事が多数あり、その内容に納得できたこと
④ 手術件数がとにかく多いこと(症例もSNSでたくさん見られる)
⑤ 仕上がりが不自然にならない、印象が変わらないことを大切にしていること
⑥ 翌日の状態チェックから始まり、アフターフォローが明確なこと
⑦ 何より、友人が実際に手術を受けたドクターであること
*2024年7月現在、東京の提携先のクリニック(あさ美皮フ科亀戸駅前)で定期的に手術を執刀されています。
そして、手術当日がやって来ました(手術までの経過は、前回参照)。
東京から名古屋へ向かい、予約の時間にクリニックへ。術前のカウンセリングでは、手術の内容、術後のセルフケアの重要性などの説明があります。すでに前々から知っていたことだったのでオールOK。
もともと保険診療が主体なので、カウンセリングで自費診療をすすめられることもありません(実は過去に、他院で自費での手術をすすめられた経験あり)。
手術中も術後も、まったく痛みがないことに驚き!
呼ばれて治療室に入り、リクライニングの施術チェアに座ると、もう笑気麻酔+局所麻酔が始まります。まぶたへの麻酔注射は、思いのほか痛かった!
とはいえ、麻酔の針がとても細いのでチクッとほんの一瞬。そんな麻酔だけで、術中はまったく痛みなし。顕微鏡下での高周波メスのためか、皮膚を切開していることもわからない。血が出ているかどうかすらわからないのです。
手術の最中、鏡を渡されて「あとはもう縫うだけ。今こんな感じです」と確認されました。縫合する前、必ずこのように確認してもらうそうです。
私の場合、いつもおでこの筋肉を使って目を開けていたため、無意識に勢いよくまぶたを開けてしまったようです!
その後、先生の声からして「今、縫っているのかも」と想像できましたが、縫う感触すらありません。術後に縫合糸を見せてもらうと、ほとんど目には見えない細〜い糸! まさにミクロの世界です。
そんなこんなで手術は35〜40分ほどで終了。
高田先生は、手術時間は「両目で約30分」と決めているそう。手術時間が短いということは、使用する麻酔量が少なくてすみます。麻酔による組織の膨らみが抑えられ、炎症反応による腫れも少なく、組織の変形が最小限に抑えられるのがメリット。
手術時間が長いほど出血量も多くなり、内出血により組織が膨らむことが多いのだそうです。
麻酔が切れたら痛いのだろうと思っていたら、なんと「麻酔は30分で切れてますよ」と言われました。つまり、術後はすでに麻酔が切れている。にもかかわらず、痛みも何も感じないのです(これは夜になっても翌日になっても同じでした)。
あとはガーゼを当ててテープを貼られ、処方箋をもらって帰るのみ。
薬は5日分の抗生物質、1日分の痛み止め(痛みはなくても腫れ止めのつもりで飲むようにとのこと)、2週間分のタリビッド眼軟膏(まぶた用の塗り薬)、同じくトランサミン錠(女子にうれしいトラネキサム酸/傷の治りを早くする目的)。
これらに加え、まぶたを冷やすアイマスク的なもの(中に保冷剤が入っている)も。とにかく「暇さえあればまぶたを冷やし続けてください」とのことでした。
ダウンタイムを短くするポイントとは?
ガーゼを貼られているので、ホテルまでサングラスをかけて帰ります。
手術の翌日に状態確認チェックがあるので、遠方から手術を受けに行く人は近隣に1泊するのが必須。外に出ず、ホテルの部屋にこもって冷やしていました。
手術の翌日。クリニックでガーゼを剝がしてもらい、先生の確認です。「特に問題はないです。あとはもうとにかく冷やして、セルフケアを頑張って」とだけ指示されました。
高田先生のクリニックでは、ダウンタイム(回復するまでの時間のこと)を短くするために、術後のセルフケアが重要視されます。患者に渡される指示書を要約すると…
【ダウンタイムを短くするためのポイント】
●腫れが引くまでの数日間はまぶたを冷やすこと
●2週間後の抜糸までは軟膏を塗り続けること
●数日間は可能な限り安静に
●数日はシャワーだけで入浴は禁止(血流をよくしない)
●抜糸まで洗顔や洗髪でまぶたを濡らさないこと
●1、2カ月はできる限りアイメイクはしないこと
●マツエクやパーマは3カ月間禁止
●1カ月は禁酒(キビシ〜!)
●1カ月は激しい運動も禁止(キビシ~!!)
●ともかく触ったりこすったりしないこと
ざっとこんな感じ。
これらを守らないと炎症が治まらずに回復が遅れるだけでなく、腫れが長引いた結果、傷あとがよれたりして不自然な仕上がりに、なんていうトラブルにも…。
前夜、目を冷やすアイマスクのジェルがホテルの冷蔵庫でうまく冷えず、さらに新幹線で帰京したため、きちんと冷やすに至りませんでした。
帰宅して鏡を見てみると、まぶたはじわじわ腫れてきていて、明らかに炎症と思える赤みが出てきているではありませんか!
これはマズい! と慌てて家にあったアイスノンベルトも動員し、まぶたを冷やし続けます。
が、まぶたを冷やすということは目を閉じることになります。
要するに、まぶたを冷やしている間は何もできないのです。
これは想定外でした。「あーもうこれは数日間、安静にしていなければならないのだな」と自覚した瞬間でした。
また、軟膏をまぶたの際に塗るということは自然に目の中にも入ってしまい、ぼやけてかすんでよく見えない。まぶたにのせているアイマスクやアイスノンなどに軟膏がくっついて汚れてしまうのも困る。この問題に関しては、手術経験者の友人から「軟膏を塗ったあと、台所用ラップを貼る」というアイデアを伝授してもらいました。
そもそも傷を早く治すには、なるべく乾かさない「湿潤療法」がいいので、覚悟を決め、家にいる間中ずっとまぶたにラップを貼りつけていました(笑)。
3日目。
いちばんひどく腫れていたのは、この頃です。まぶたから頬のあたりまで、日によっては顔全体がむくんで腫れていました。傷はまったく目立たないのだけれど、腫れたまぶたでは外に出る気にもなれません。
【回復を早めるための私の工夫】
●数日間は、寝ている間もアイスノンベルトや保冷剤で冷やす
(冷たくなくなると夜中でも取り替えていた)
●家にいる間は軟膏の上からラップを貼り、その上から冷やす
●なるべく触らない、メイクしない
●洗髪はシャンプーハットをつけ、まぶたを濡らさない
●暖かくしすぎない(冬だったが、血流がよくなりすぎてはいけないと思ったので)
●高タンパク質&低糖質の食事(傷がある場合、これは基本!)
●腫れを見るとストレスになるので、あまり鏡を見ない
頑張ってケアした結果、1週間でほぼわからない程度に
冷やしている間は仕事にもならないので、1週間くらいは引きこもっていました。
8日目。
知人に会うと「知らない人が見たら全然わからない」という感想。それでも、まだその頃は二重の幅の間が腫れ、必然的に幅広い二重になり、血行がよくなるとさらに腫れたり、朝起きるとパンパンに腫れたりしていました。
よく言えば二重の幅がすごーく広い時期で「これも悪くないじゃん」な時期でした。
その後、日に日に二重の間の腫れが引き、むしろ奥二重に近づいてきました。軟膏を塗り続けているせいで、目がぼやけてピントが合わない。遠くも近くも見えにくくて想像よりもちょっと大変な時期でした。
2週間後(正確には術後15日目)。
ようやく抜糸です。
高田先生からは「きれいで問題ないです。視力は、軟膏を塗るのをやめたら戻りますからね」とのこと。確かに抜糸から数日して、視力がようやく戻ってきました。
1カ月後。
ようやくまぶたの赤みもなくなりました。友人らが見ても「何もわからない」と言います。
そして1カ月後から毎月1回は、高田先生が提携している都内の皮膚科で、術後の状態をチェックしてもらいました。
3カ月後。
まだ続いていたのは、朝起きると日によってまぶたがむくんでいること。先生からは「3カ月後でもまだ状態は変化している最中なので、最終的な完成は6カ月後だと思ってください」と聞いていたので、心配はしていませんでした。
結局、術後半年は目元は何もメイクしませんでした。もともと眉毛がしっかり生えているので、普段から眉も描かずマスカラくらいでしたが、誰もそんなことに気づきはしません。
「え? もしかして私、アイメイクしなくても変わらないのね!」と、良くも悪くも悟ってしまいました。
意外なことは、ビューラーもマスカラも使わなくてもまつ毛が上に向くようになったこと。手術によって生え際の角度が変わったと思われます。
「最終的な完成は6カ月後」は本当だった!
4カ月後。
傷は完全にわからなくなり、二重の幅はほぼ元通りに近づきました。以前と同じように長時間PC作業をしていても、まぶたが重くなってこないことをようやく実感できました。
そして、あれだけ気になっていたおでこのシワが、やや気にならなくなっていました。そういえば涙目(ドライアイの症状)にもならなくなっている!
半年後。
現在、ちょうど6カ月が経過したところ。見た目が術前とほとんど変わらないため、「眼瞼下垂の手術をしたよ」と伝えても、誰も気にとめません。
よく知っている友人からは「前より二重の幅が狭くなった気がする」とは言われます。それもまた想定内。手術前に比べてまぶたが軽く、目が開けやすくなったので、それはよしとしなければ!
【術後の変化のまとめ】
◎おでこや眉の力を借りずに目が開くようになった
◎長時間のPC作業でもまぶたが重くならなくなった
◎おでこのシワがやや減った(前髪を短くしたくなった)
◎まぶたの引きつれたシワや二重のヨレが緩和した
◎ドライアイの症状、涙目が起きなくなった
◎術前より二重の幅は狭くなったかもしれない
◎まつ毛が上向きになった(ビューラーなしでもOK!)
最後に、高田先生にライター蓮見の治療について解説していただきましょう。
「蓮見さんの場合は、総合的に代償期の眼瞼下垂症(前回参照)と診断しました。本人が望まれていたように保険診療で手術を行う場合、私は皮膚切除の量は一律3mm以下と決めています。皮膚の余剰を改善させる目的ではなく、術野(手術を行っている、目に見える部分のこと)の確保のために必要な皮膚切除を行っています。
彼女の手術はまったく問題なく、滞りなく終了。術後もご自分で管理をしっかりしていただけたので回復は順調でした。
人の体は、自らを自動的に調整して最適化する機能があります。
術後の状態が落ち着き、眼瞼挙筋の機能が回復するにつれて、それまでサポートしていた前頭筋の作用が弱まっていきます。そのため、蓮見さんのようにおでこや眉間のシワが薄くなるというのは大きなメリットですね。
その反面、前頭筋が緩んだ結果、眉が下がったりまぶたの皮膚のたるみが増え、結果として二重の幅が狭くなってくる場合も…。半年経過した彼女のまぶたにもその変化が見られると思います。さらに目尻の皮膚のかぶりが強くなっていくようであれば、眉下切開も視野に入れられるといいと思いますよ」
↑見た目は大きく変わっていないけれど、以前、どれだけ頑張って目を開けていたかがよくわかります。おでこや眉にやたら力が入ってる!
【手術にかかった費用:ライター蓮見の場合】
両目の手術費と初診料などを含め、3割負担で約55000円。
処方薬代1600円。その他、交通費・手術当日の宿泊費。
*医療保険に入っていたので「日帰り手術」に該当し、後日150000円ほど給付金が出ました。
【教えていただいた方】
高田眼科(静岡県浜松市)院長、フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(愛知県名古屋市)主宰。眼科医と形成外科医の知識、豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとにファシアリリース法を考案。保険適用手術にこだわり、手がける眼瞼下垂手術は年間2000件以上。全国から患者が来院。メールでの眼瞼下垂相談も可能。
撮影・取材・文・画像制作/蓮見則子