目薬は不調の原因を考えて!
パソコンやスマホの普及や、年齢による視力の低下などで、40歳を過ぎた頃から目の疲れを訴える人が増えてきます。それを解消しようと、目薬を買いに薬局に行って、その種類の多さに驚き、どれを買っていいのか困った経験はありませんか?
「ドラッグストアなどで一般の人が買える目薬では、主に疲れ目、ドライアイ、かゆみに対応したものがあります。選ぶ際には、これらがどうして起こっているのかを考える必要があります。
例えば、かゆみがある場合は、それがドライアイで起こっているのか、アレルギー症状なのかによって選ぶ目薬は違ってきます。ドライアイによってかゆみを感じているのなら、乾燥を止めるものでないと根本的な解決にはなりません」(鈴木素邦さん)
そんなときには薬剤師に聞いてしまったほうが早いのですが、簡単な目薬の特徴を知っておくといいでしょう。
「疲れ目はパソコンやスマホの長時間の使用など、目のピント調節機能を酷使したときに起こります。疲れ目を解消するために、それらに対応する成分が配合されたものを選びます。
例えば、ピント調節機能をサポートするネオスチグミンメチル硫酸塩、角膜を修復するビタミンA、目の炎症を抑えるグリチルリチン酸ニカリウムなどです。
ドライアイは涙の分泌量の低下や涙の成分バランスの変化などで、目が乾いている症状です。涙は目の表面を保護して、酸素や栄養素の運搬を助ける働きがあります。症状は目がしょぼしょぼしたり、かゆみなど。ドライアイを放置していると眼球に傷がつくこともあるので、放っておいていいものではありません。
ドライアイの解消には、涙に含まれるミネラル成分である塩化カリウムや塩化ナトリウム、目の潤いをサポートするコンドロイチン系やヒアルロン酸系の成分が含まれているものがいいでしょう。
花粉などのアレルギーのかゆみには、抗ヒスタミン成分やケミカルメディエーター遊離抑制成分など、抗アレルギー作用のある成分を含むものを選びます。
目のちょっとした不調には市販薬がたくさん出ていますが、目の病気は放っておいて自然に治るものはありません。例えば、緑内障などは失明につながることがあります。見え方などに異変があったら、すぐに眼科を受診することをおすすめします」
目薬はデリケート! 先端を触るとあっという間に雑菌が増殖する
目薬をさすのが上手な人と下手な人がいます。中には片手で目尻からさっとさす人も見かけます。
「実はそのさし方は間違っていて、とても危険です。
眼球の表面は体の中で最もデリケートな粘膜です。目薬はそこに使用するので、菌やウイルスなどの微生物がつかないように無菌状態で作られ、保存料も最小限です。
目尻からさす場合、目薬の先端を目の際の皮膚につけて流し込んでいるはず。するとそこから目薬の中に雑菌などが混入する可能性が高いのです」
実は約9割の人が目薬のさし方や扱い方を間違っているそう。
「目薬は液体なので、開封後も扱い方には細心の注意が必要です。まず、目薬を使用する前には手洗いをしっかりして、先端には触らないように注意してください。
キャップの内側は目薬の先端と接触する場所なので、そこも触らないこと。目薬を使用時のキャップは内側面を上にして机などに置きます。また、点眼方法もいくつか守ってほしいポイントがあります」
正しい点眼方法とは?
ポイント1 目に入れる目薬は1滴!
目薬は1滴で効果が出るように設計されています。2滴、3滴と入れたら、もっと効果が出るような気がしますが、まぶたの中には1滴分しかためられません。ですから、多くさしても顔にあふれて無駄になるだけです。処方薬であれば、次回の通院の前に薬が足りなくなるかもしれません。
ポイント2 点眼後に軽く目頭を1分間押さえる
目頭には鼻に抜ける穴があり、せっかく入れた目薬がそこへ流れてしまう可能性があります。それを防ぐために、点眼後は目頭を指先で軽く触れる程度に、最低でも1分ほど押さえます。
ポイント3 点眼後はまぶたをパチパチしない
点眼後、目薬が目の中に行き届くようにと、パチパチとまぶたを開けたり閉じたり、もしくは眼球を動かす人がいますが、これも逆効果。目頭の穴から薬が逃げやすくなるだけです。点眼後はまぶたを閉じて1~2分静かにしていましょう。
ポイント4 点眼後にすぐにティッシュで目尻を拭わない
点眼後に目を閉じてあふれてくる薬をティッシュで拭くのはいいのですが、すぐに目尻に当ててしまうと、目薬がほとんどティッシュに吸い取られてしまう可能性があります。
ポイント5 目のふちにあふれた目薬を流し込まない
目からそれて、目のふちやまつ毛に落ちた目薬は、すでに細菌などが付着している可能性があります。それを目に入れるのはNG。新たに1滴さし直すのが正解です。
ポイント6 目薬が2本以上あるときは、透明なものから!
目薬を複数使用している場合、使用する順番があります。
目薬をよく見ると、透明なものと濁っているものがあります。透明なのは薬の粒子が小さいので吸収が早く、濁っているものは粒子が大きいので吸収が遅いという特徴があります。
それを考慮すると、透明なものから使用したほうが効率的です。1本目と2本目は5~10分、間隔をあけて使用するのが基本です。
「このように目薬はとてもデリケートです。明記されている使用期限は未開封のときのものなので、開封したら約1カ月で使い切るようにしましょう。半年や1年も過ぎたものは、残念ですが廃棄してください」
【教えていただいた方】
イラスト/いいあい 取材・文/山村浩子