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漢方は未病の段階でも治療の対象。体質や状態に合わせて処方してくれる!【西洋医学×漢方医学のスペシャリスト、今津嘉宏先生が教えます】

体の不調を改善するのに漢方はいいと聞くけれど、知識がないので、どう取り入れればいいかわからないという人に。漢方の入門編として、知っておきたい基本的なことをQ&A形式でご紹介。漢方に精通し、多くの患者さんを西洋医学と漢方で救ってきた医師「芝大門 いまづ クリニック」院長の今津嘉宏先生にレクチャーしていただきました。

【教えていただいた方】

今津嘉宏
今津嘉宏さん
医師
公式サイトを見る

「芝大門 いまづ クリニック」院長。藤田保健衛生大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科・副医長、慶應義塾大学医学部漢方医学センター助教、北里大学薬学部非常勤講師などを経て、2013年に「芝大門 いまづ クリニック」(東京都港区芝大門)を開業。日本外科学会認定医・専門医。日本消化器病学会専門医。日本東洋医学会専門医・指導医。西洋医学と東洋医学に精通し、科学的見地に立って漢方による治療を実践。おもな著書に『健康保険が使える漢方薬の事典』(つちや書店)、『まずはコレだけ! 漢方薬』(じほう)などがある。

 

漢方のこと、きちんと知りたい!

近年、ますます人気が高まっているのが漢方薬。ドラッグストアで取り扱われている漢方薬も種類が増え、以前より身近なものになっています。

 

そんな漢方薬は、40代、50代になると増えてくる、「原因ははっきりわからないけれど、なんとなく体調が悪い、つらい」といった不定愁訴を改善したいときの強い味方でもあります。

 

不調をケアする方法のひとつとして、漢方のことをもっと勉強したい、上手に取り入れられるようになりたい、という人に、知っておくと役に立つ「漢方の基礎知識」をここでは紹介したいと思います。

 

漢方の歴史や理論、原料、西洋医学との違いなど、実はわかっていないという人は、ぜひこの機会に勉強しましょう!

 

質問に答えていただいたのは、漢方を取り入れた診療の第一人者、「芝大門 いまづ クリニック」院長の今津嘉宏先生

今回は、漢方に精通した「芝大門 いまづ クリニック」院長の今津嘉宏先生に教えていただきました。

 

今津先生は、2011年の東日本大震災を機に、現場で患者と直接かかわる仕事がしたいと考え、患者のそばにいられる「町医者」を目指して「芝大門 いまづ クリニック」を開業。

 

外科医として大学病院に勤務していた頃に漢方の可能性に惹かれ、その後、本格的に漢方医学を勉強。以来、漢方をがん治療に取り入れるなど、西洋医学と漢方医学を区別することなく、両方のよいところを取り入れ、患者さんの状態を総合的に診たうえで最適な方法を選び、診療にあたっています。

漢方イメージ1ー1

Q1  漢方はどこで生まれたもの? 中国? 「韓方」とは違うの?

A  漢方は、日本で生まれた伝統医学です

「漢方は中国由来と思われがちですが、日本オリジナルの伝統医学です。鎖国の時代に、海外から輸入されたオランダ医学や中国医学(中医学)と区別するために、古くから日本国内で行われてきた医学を漢方と呼ぶようになりました。

 

日本の風土で熟成されて鎖国の時代を経て、日本人の体質に合った医学として発展してきたのが漢方で、その治療に使われてきた薬が漢方薬です。

 

中国の伝統医学の中医学と、韓国の伝統医学の韓医学(韓方)と、日本の漢方は世界的に見ても異なった学問ととらえられています。

 

中医学では、四診と呼ばれる診断技術によって情報を収集し、その結果から診断して治療が行われます。一方、韓医学では、四象医学に基づいて4つの体質を4つのタイプに分類する理論が使われています。

 

そして日本の漢方では、舌、脈、腹を診察し、陰陽、虚実、表裏、気血水などといった理論に基づいて診断し、漢方薬で治療をします」

 

※中国、韓国では「腹診」を行いません。

漢方イメージ 1-2

 

Q2  漢方の理論のベースになっている「陰陽」「虚実」「表裏」とは?

A  漢方の診断法で、体の状態や生まれ持った性質を二者択一で見極めます

「“陰陽”、“虚実”、“表裏”は漢方で、体を診断するときに用いるベースとなる理論です。

 

漢方の理論はすべて二者択一になっていて、陰陽は“陰”と“陽”、虚実は“虚”と“実”、表裏は“表”と“裏”、気血水は“気”と“血水”に分かれ、診察をするときに、このうちのどちらの状態かを見極めていきます。

 

陰陽は、性格が暗い(陰)のか、明るい(陽)のか、体が虚弱(陰)なのか、健康(陽)なのかという、持って生まれた性質を診断します。

 

虚実については、元気がないなら虚で、元気なら実。また、気持ちが落ち込んでいるときは虚で、気持ちが元気なときは実と診断します。

 

表裏は、体の表面に変化があるなら表、体の中に変化があるときは裏と診断します。例えば風邪をひいたとき、皮膚がゾクゾクしたり、背中が寒かったりすると思いますが、これは“表”の症状です。時間とともに、喉が痛くなったり、体の芯が熱くなったりするのは“裏”の症状です。漢方ではまずこれらを診断します」

 

Q3  漢方には、「気血水(き・けつ・すい)」という考え方もありますが、これはどういうもの?

A  3つがバランスよく巡っているのが「健康」で、どこかに乱れがあると不調が起きると考えます

「漢方では、体の中を気・血・水という3つの要素が巡っているという概念があります。

 

“気”とは、気分や気力など精神的なエネルギーのこと。体力や元気などの肉体的なエネルギーや、エネルギーを取り込む消化器の状態も意味します。

 

“血”は血液に関連するものだけでなく、女性ホルモンの変化も意味します。昔から、年齢による女性ホルモンの変化からくる症状を“血の道症”と言うのは、そのためです。

 

そして“水”は、体の水分の変化を指します。リンパ液や汗、唾液、尿など、血液以外の色のついていない体液の変化のことです。むくみや渇きなどは“水”の変化によって起こる症状です。

 

漢方では、この3つがバランスよく巡っている状態を“健康”ととらえ、どれかが停滞していたり不足したりして、バランスがくずれると不調が起こると考えられています。

 

例えば、気の巡りが悪いことを“気滞(きたい)”、気が不足していることを“気虚(ききょ)”、血の巡りが悪いことを“瘀血(おけつ)”、血が不足していることを“血虚(けっきょ)”といいます。

 

また、水の巡りが悪いことを“水滞(すいたい)”、水が不足していることを陰虚(体を冷やす水=陰の不足)といいます。

 

漢方では、このように、気血水のどこにバランスの乱れがあるかを診断して、その状態に合う漢方薬を選びます」

 

Q4  漢方でよく耳にする「五臓」とは?

A  体の働きや機能を、肝、心、脾、肺、腎の5つに分類して考えますが、現代漢方ではあまり使われなくなっています

「漢方では、“五行論”といって、自然界に存在するあらゆる物質は、木・火・土・金・水の5つの元素からなるという考え方があります。この5つは、お互いに関連し、調和を保っていると考えられています。

 

そして、体の働きや機能も、五行の特性に合わせて、肝、心、脾、肺、腎の5つに分類して考えます。五臓は、肝臓、心臓などの臓器だけを指すのでなく、その機能や概念も含みます。

 

中国医学や韓医学ではよく使われる表現ですが、現代医学では証明が難しいものが多いので、漢方医学ではあまり使われなくなっています。しかしながら、薬剤師や鍼灸師などが使う用語では、“腎が弱っている”“肝が悪い”などと表現されることがあります」

 

Q5  西洋医学と漢方医学の違いとは?

A  漢方医学は、病気でない“未病”の段階でも治療の対象とします

 「現代の西洋医学では、検査に基づいて病名がついた場合に治療の対象として、痛みがあるなら鎮痛剤を処方するというように、そのときの症状を抑える治療をする対症療法が中心です。そのため西洋医学では、どんなに不調があっても、検査で異常がなければ治療ができない場合があります。

 

これに対し漢方では、その人の体質や体の状態から原因を見極め、病気ではない“未病”でも治療の対象とし、原因から根本改善をしていきます。

 

特に女性には、原因がよくわからない不定愁訴が多いですが、このような症状は漢方の得意分野です。

 

ただし、漢方は手術などの外科的な処置や、一刻を争うような緊急の症状の治療は苦手です。

 

また、西洋医学による診断や検査結果を組み合わせて行うことが大切になります。

西洋医学と東洋医学を、うまく使い分けるのがおすすめです」

 

Q6  漢方薬はどんな原料から作られている?

A  生薬と呼ばれる薬理効果がある自然物を2種類以上組み合わせて作られます

「漢方薬は、“生薬”と呼ばれる薬理効果のある自然物から作られています。

 

植物が多く、茎や根、花、種子、実など、あらゆる部位が使われています。

また、貝殻や鉱物、動物の皮や骨なども用いられます。

 

基本的に2種類以上の生薬を、定められた量で組み合わせて作られます」

漢方イメージ 1-3

Q7  漢方薬にはどんな形状のものがある?

A  煎じ薬、錠剤(丸薬)、散剤、エキス剤など

「漢方薬には、ブレンドした生薬を煮出してとる“煎じ薬”や、生薬をはちみつなどで丸く固めた“錠剤(丸薬)”、生薬を粉末にして混合した“散剤”、生薬を煮立てたものを賦形剤で固めた“エキス剤”などのタイプがあります」

 

※賦形剤とは、薬を固形製剤にするときに、成型、増量、希釈を目的として加えられた添加剤のこと。

 

※エキス剤は、煎じ薬を濃縮、乾燥、粉末化したもの。品質が安定した状態で供給される、安全性が担保されている、携帯しやすい、飲みやすいなどのメリットがあります。

漢方イメージ 1-4

Q8  煎じ薬のほうが効果が高いの?

A  大きな差はありません

「1944年に東亜治療研究所で行われた漢方エキス製剤の比較臨床研究から80年が経過し、これまでに、いろいろと煎じ薬と漢方エキス製剤の効果が問われてきました。

 

その結果、煎じ薬と漢方エキス製剤の効果には、大きな差はないことがわかっています。

 

煎じ薬のほうが効果が高いと思われがちですが、天然の生薬のために起こる品質のバラつきや、煎じ方による抽出率の違いなどがなく、質が担保されることや簡便性など、エキス剤にも多くの利点があります」

 

Q9  同じ病名や症状でも、人によって合う漢方薬は違うの?

A   “証”が違えば、合う漢方薬も違います

「漢方では、その人に合う漢方薬を選ぶときに、問診や診察で、前述したように、陰陽、虚実、表裏、気血水などがどのような状態かを確認して、“証”を決めます。

 

証とは、漢方での診断名を意味します(使う漢方薬に“〜証”とつけて診断名にする場合も)。

 

“証”は人によって違うので、病名や症状が同じでも、証が違えば、処方される漢方薬も変わります。また、同じ人の同じ症状でも、診察のタイミングによって証が変わることがあり、その時々で違う漢方薬が処方されることもあります」

 

Q10  漢方薬での治療はどんな人に向いている?

A  老若男女、すべての人に効果を発揮します

「医療用医薬品として使われている漢方薬は、148種類あり、老若男女を問わず、さまざまな病気や症状に使われています。

 

漢方薬は特に女性に向いていると誤解されがちですが、男性にも、赤ちゃんにも、お年寄りにも、漢方薬は効果を発揮します」

 

Q11  漢方は効果が出るまでにどれくらいかかる?  長いこと続けないと効果がないの?

A  即効性のあるものもあれば、数日から数週間経過しないと、効果を実感しにくいものも

「漢方薬は、薬です。薬が症状を改善してくれるのは、薬に含まれる薬理作用を持つ成分が体に効果を発揮するからです。

 

その成分は、口の中の粘膜から吸収して数秒で効果を発揮するものから、大腸で分解され肝臓で代謝されて効果を発揮するものまであります。

 

つまり漢方薬には、数分で効果を実感する即効性のあるものから、数日から数週間経過しないと、実感しないものもあります。

 

特に女性の場合は、ホルモンの変化によって漢方薬の効果を実感しにくいため、2週間単位(低温期と高温期)で治療経過をみていくことが多いです」

 

──いかがでしょうか。

奥深〜い漢方の世界が、少しわかっていただけたかと思います。

 

上記のようなことを知っておくと、いざ自分が漢方を取り入れるとき、どんな意味があるのか、どんなことに気をつければいいのか、理解度がぐんと上がりますよね。

 

写真/shutterstock 取材・文/和田美穂

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