内臓脂肪がつきにくい体になるためのポイントは、自律神経、褐色脂肪細胞、血流、腸内環境、睡眠
内臓脂肪を落とすために、普段の生活習慣で心がけたいポイントとして斎藤先生がおすすめしてくれたのは、以下の5つ。
「5つ全部を実践するのは難しいかもしれませんが、ひとつずつでもいいのでぜひ取り入れてみてください」
MCTオイルの活用などを中心にした内臓脂肪を落とす3つのメソッドは、第3回参照。
POINT1 副交感神経を優位にする時間を作って自律神経を整える
まず、いちばん意識するとよいのが、自律神経を整えることなのだそう。
「自律神経には内臓の働きや代謝を調節する役割があります。
ご存じのように、自律神経には、活動しているときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経があります。このふたつがバランスよく働いていると、食欲も出すぎず、代謝も進んで太りにくくなります。
逆に、バランスがくずれると代謝がうまくいかず、脂肪がつきやすくなります。
自律神経は、ストレスや過労、不規則な生活など、ちょっとした原因で乱れてしまいます。
特にストレスが過多になると交感神経が優位になりすぎて、体は内臓脂肪をため込む方向に働き、お腹まわりだけ太ってしまうメタボ体型になりやすくなるので要注意。
例えば、ハーブティーを飲みながら好きな音楽を聴いたり、ゆっくりお風呂に入ったりと、自分がリラックスできる時間を作って、強制的に副交感神経を優位にするようにして自律神経を整えましょう。また、ゆっくりと深呼吸をするだけでも、副交感神経が優位になるので取り入れてみて」
POINT2 齋藤流ラクやせ体操で脂肪の燃焼を促進
ふたつめのポイントが、運動をすること。そして齋藤先生のおすすめは、“齋藤流ラクやせ体操”。
「運動は、代謝を上げるために欠かせませんが、激しい運動は続きません。そこで私が考案したのが“齋藤流ラクやせ体操”。そのひとつが肩甲骨まわりを動かす『パタパタストレッチ』。
肩甲骨のまわりには、脂肪燃焼を促す褐色脂肪細胞が多く存在しています。パタパタストレッチをすると、褐色脂肪細胞が活性化して脂肪の燃焼が促進し、内臓脂肪の低減効果も期待できます。
もうひとつの体操が、『深呼吸スクワット』。スクワットは、人体で最も大きい大腿四頭筋を鍛えることができます。
筋肉が増えると基礎代謝が上がり、内臓脂肪も落ちやすくなります。さらに、スクワットをしながら深呼吸をするので、ダイエットの大敵であるストレスの解消効果も期待できます。
このふたつの体操を、空いている時間に行いましょう。特にMCTオイルを取り入れた食事をとってから3時間以内に行うとパフォーマンスも上がっておすすめです」
<パタパタストレッチ>
3 そのまま腕を後ろに引いて戻して、前後にパタパタと動かします。これを繰り返しましょう。後ろに腕を引くとき、肩甲骨をグッと中心に寄せるようにするのがポイント。
<深呼吸スクワット>
1 姿勢がくずれないように壁に沿うようにして立ち、足を肩幅に広げます。このとき、つま先と膝を外側に向けてがにまたにし、息を吐きます。
2 息を吸いながらゆっくりと腰を落とすように膝を曲げます。このとき、膝が足先から出ないようにすること。
3 息を吐きながら立ち上がります。お尻の穴を締めるようにしながら起き上がるのがコツ。
POINT3 入浴のリラックス効果を上げる
お風呂の入り方によっても、内臓脂肪を落としやすくすることができるとか。
「忙しいとシャワーですませてしまいがちですが、基礎代謝を高めて内臓脂肪を燃やしやすくするには、湯船につかって体を芯から温めることは大事。ゆっくりお風呂に入るとリラックスでき、ストレスからくるドカ食い防止にもつながります。
おすすめの入浴法は、やや低温の38℃程度のお湯に10分程度、半身浴でゆっくりとつかること。リラックスして副交感神経が優位になり、疲労も回復します。
体が温まって血行がよくなると、インスリンの分泌も促進するうえ、リンパの流れもよくなって老廃物が排出されやすくなります。入浴前にはコップ1杯の水を飲んで、脱水を防ぎましょう。
特におすすめは炭酸水。炭酸水は、水分補給だけでなく血行促進効果もあるので、お風呂で温まった熱が全身に巡って、体の熱が冷めにくくなります」
POINT4 食べ物や食べ方で代謝をアップ
毎日の食事でも代謝を上げて内臓脂肪を落としやすくするコツが。
「まず、毎日、常温の水をたっぷり飲みましょう。体の7割を占める水分の流れがよくなり、血流がアップ。筋肉にも血液が送り込まれ、筋肉量を増やすのにも役立ちます。
また、体温が1℃上がると基礎代謝が約13%増えます。しょうが、にんにく、玉ねぎのほか、ターメリックやシナモンのような香辛料など、体を温める食材を取り入れて低体温にならないようにしましょう。
腸内環境を整える食材を取り入れることもポイント。腸内の善玉菌を増やす発酵食品や、食物繊維を含む食品を積極的に食べましょう。
腸内細菌が食物繊維を分解することで生まれる短鎖脂肪酸は、代謝を促し、細胞への脂肪の取り込みを抑える働きをしてくれます。
よく噛んで食べることも大事。よく噛むと、食べたものが栄養素として分解されるときに発生する熱(食事誘発性熱産生)が増え、食後の消費エネルギーが増えます。
逆に内臓脂肪が落ちるのを妨げる食べ物が、糖質が多い食品や、食品添加物、トランス脂肪酸などの体によくない油です。
こういったものが多く含まれる加工食品をとりすぎると体内に炎症が起き、内臓脂肪が燃えにくい状況を作ることがあるので控えめに」
POINT5 良質の睡眠をとる
睡眠をしっかりとることは、内臓脂肪を落としやすくするうえでも大切なのだとか。
「睡眠時間が短いと、食欲を抑制する“レプチン”というホルモンの分泌が低下し、逆に食欲を増進させる“グレリン”の分泌は増えるので、ドカ食いしやすくなり、太りやすくなります。
逆に、良質な睡眠をとると、疲れやストレスが解消されるので、朝も目覚めがすっきり。
自律神経やホルモンバランスも安定するうえ、成長ホルモンの分泌が高まるので、筋肉の成長が促され、代謝アップにもつながります。
睡眠の質を高めるために、毎日なるべく寝る時間と起きる時間を同じにして規則正しい生活を心がけましょう。
寝る2〜3時間前に入浴していったん体温を上げると、体温が下がったときに眠気が訪れ、深い睡眠を得ることができます。
朝は起きたら太陽の光を浴びると、それを合図に睡眠ホルモン・メラトニンの材料となるセロトニンが分泌され、約15時間後からメラトニンの量が増えて眠気がもたらされるので、スムーズに寝つけます。
また、寝る前に食事をとると消化活動によって睡眠が妨げられるので控えましょう」
生活習慣をちょっと変えるだけで、内臓脂肪は落ちやすくなります。
できることから取り入れてみて。
【教えていただいた方】
医療法人社団山本メディカルセンター理事長。2010年に同センターに入職し、皮膚科・形成外科を立ち上げる。アンチエイジング分野にも取り組み、メディカルエステ、ドクターズコスメなどの開発・販売も手がける。2016年山本メディカルセンター2代目院長に就任。皮膚科・形成外科、美容皮膚科、内科、人間ドック、訪問看護ステーションを統括。分子栄養学の観点からメニューを考案しているカフェレストラン「桜山茶寮」も運営。著書に『「内臓脂肪がなかなか減らない!」という人でも勝手に内臓脂肪が落ちていく食事術』(アスコム)がある。
写真/Shutterstock イラスト/内藤しなこ 取材・文/和田美穂