1)コエンザイムQ10
加齢とともに疲れやすくなる…。
エネルギー産生に必要な「コエンザイムQ10」が減少している可能性も!
「十分に寝たつもりなのに、朝起きたときになぜか疲れが取れていない…」「少し歩いただけで、すぐに疲れるようになった…」といった悩み、40代、50代になると増えてくるものです。
このような悩みをサプリメントで改善するなら、どんな成分をとるとよいのでしょうか。
栄養療法に詳しい医師の林巧先生に伺いました。
コエンザイムQ10は、体内でエネルギーを産生するのに欠かせない補酵素
「まずひとつが、コエンザイムQ10です。
コエンザイムQ10は、細胞内のミトコンドリアでエネルギーを産生する際に欠かせない補酵素です。
ところが、体内のコエンザイムQ10の濃度は、20代をピークに、加齢に伴って減少していってしまいます。
すると、エネルギー産生が低下するので、疲れやすくなったり代謝の低下を招いてしまったりするのです。
コエンザイムQ10は、もともと心臓や筋肉、脳など、エネルギーをたくさん消費する器官に多く存在しています。
そのため、コエンザイムQ10が不足すると、心臓病のリスクが増えたり、筋力の低下を招いたり、認知機能が低下しやすくなることもあります。
ですから、疲れやすくなったと感じている人や、こうした不調を抱えている人は、コエンザイムQ10をサプリメントで補ってみるのもよいと思います。
コエンザイムQ10を補給することで、エネルギー産生能力が改善し、疲労感の軽減が期待できます。
コエンザイムQ10は、運動をしている人にも人気が高く、マラソンランナーの中には、大会で走る数日前からコエンザイムQ10を摂取する人もいるほどです」(林巧先生)
高い抗酸化作用も
「コエンザイムQ10には高い抗酸化作用もあります。
これによって、心血管疾患のリスクを軽減する可能性があるほか、肌の老化やシミ、シワを防ぐ効果も期待できます。
それから、40代、50代の女性には、コレステロールを下げるための『スタチン』という薬を飲んでいる人もいると思いますが、この薬を飲むと体内のコエンザイムQ10の濃度が低下することが知られています。
すると、倦怠感や筋肉痛などの症状が起きやすくなりますが、これを防ぐためにコエンザイムQ10の補給が推奨されることもあります」
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加齢とともに減少するコエンザイムQ10は、毎日補うのもおすすめ
コエンザイムQ10は、どのようにとるとよいのでしょうか?
「コエンザイムQ10は、食品ではイワシやサバなどの青魚や、肉類、大豆、ナッツ類などに含まれていますが、効果を期待するには大量にとらなければならないので、サプリメントを利用するほうが効率的。
コエンザイムQ10は、加齢に伴って減少するので、40代、50代で、なかなか疲れがとれない人は毎日とってもよいと思います。
脂溶性で、油と一緒にとると吸収されやすくなるので食後にとるのがおすすめ。
また、運動前にとるのもよいです。
摂取量は1日に100〜200mgがよいといわれています。
疲れやすい人は200mgとってもよいと思いますが、たくさんとると眠れなくなることがあるという報告もあるので、100mgから始めてみて、体調をみながら徐々に増やしていくとよいでしょう。
マラソン大会に参加する場合には、2〜3日前から200〜300mgとる人も多いようで、そうしたとり方もよいと思います。
コエンザイムQ10には、還元型と酸化型があり、酸化型のほうが安価なものが多いですが、吸収効率を考えると還元型がよいといわれています」
2)5-ALA
コエンザイムQ10と同じく、エネルギー産生に関与する「5-ALA」も疲労軽減に効果的
疲れやすさを改善するためには、ほかにはどんなサプリメントがおすすめでしょうか?
「もうひとつが、5-ALAです。
5-ALA(5-アミノレブリン酸)とは、細胞のエネルギー工場と呼ばれるミトコンドリア内で作られるアミノ酸で、エネルギー産生に関与するタンパク質の原料となる物質です。
もう少し詳しく言うと、5-ALAは、“ヘム”という物質のもとになります。
ヘムとは、血液に存在する物質で、体に酸素を運ぶヘモグロビンを作るほか、食物と酸素からエネルギーを作り出すという重要な役割があります。
この5-ALAも、コエンザイムQ10と同じように、加齢とともに減少していきます。
すると、ヘムがうまく作られなくなるため、酸素の運搬がうまくいかず、ミトコンドリアでエネルギーをうまく作り出すこともできなくなり、疲れやすくなったり、老化が進んだりします。
逆に5-ALAを補うことで、ミトコンドリアが活性化して疲れにくくなるほか、代謝アップ、若返り、睡眠の質の改善、貧血予防、免疫力の向上など、さまざまな効果が報告されています。
ですから、最近疲れやすいなと感じている人には、5-ALAをとることもおすすめです。
5-ALAは、日本酒やワイン、タコ、イカなどに多く含まれていますが、効果が期待できる量をとるには、かなり多くとらないといけないので、やはりサプリメントのほうが効率的です。
1日の摂取量は、サプリメントのパッケージに記載された量を目安にとりましょう」
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3)NMN
注目の成分「NMN」は、疲労軽減だけでなく若返り効果も!
さらに、もうひとつ、おすすめの成分があるそう。
「それが、NMNです。NMNとは、体内でビタミンB3(ニコチンアミド)を材料として作られる成分で、“ニコチンアミドモノヌクレオチド”の略称です。
NMNは、体内でNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変換されます。
このNAD+には、細胞のエネルギー代謝やDNAの修復、抗酸化作用などさまざまな作用があります。
ところが、NAD+は加齢とともに産生量が減ってしまい、すると老化が進んだり、代謝が落ちたり、疲れやすくなったりとさまざまな不調が起きやすくなります。
また、NAD+には、“長寿遺伝子”と呼ばれるサーチュイン遺伝子を活性化する効果があることでも注目されています。
こうした理由から、NMNをサプリメントで補うことに注目が集まっているのです」
若返りのビタミン!?
「NMNは“若返りのビタミン”とも呼ばれ、海外のセレブの間で人気が高まったことを機に、知られるようになったようです。
NMNは、エイジングケアや代謝向上、疲労感の解消などの効果があるほか、とることで骨密度が上がったという報告もあります。
このように多くの効果があるNMNですが、難点は価格が高いということ。
市販のNMNのサプリメントは高額なものから比較的安価なものまでありますが、安いものはNMNの配合量が少なかったり、不純物が混ざっているものも多いともいわれています。
ですから、とるなら99%以上の高純度のものを選ぶのがおすすめなのですが、そうした商品は数万円するなど、かなり高価です。
ですからなかなか続けにくいのですが、興味がある人は試してみてもよいと思います。
まだ研究段階ではありますが、1日の推奨量は、250〜500mgといわれているようです」
【終わりに】
疲れやすさを感じているなら、もちろんまずはゆっくり休養することが大切ですが、なかなか改善しない場合は、上記のような成分をサプリメントで補ってみるのも手!
ぜひ選択肢に加えてみてください。
【教えていただいた方】

はやしたくみ女性クリニック院長、医師。1966年、北海道札幌市生まれ 。札幌医科大学卒業。札幌医科大学附属病院では更年期専門外来を担当。斗南病院、函館五稜郭病院、NTT東日本札幌病院を経て、2009年「はやしたくみ女性クリニック」を開業。 日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会(旧日本更年期医学会)女性ヘルスケア専門医、日本女性心身医学会認定医、日本抗加齢医学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本性差医学・医療学会認定医などを取得。産婦人科、女性内科、性差医療の視点から保険診療、保険外診療の両面で、その人その人に合ったケアを行い、女性のこころとからだの健康をサポートしている。
写真/Shutterstock〈イメージカット〉 取材・文/和田美穂