青魚に含まれる油、DHAやEPA。
中性脂肪や血圧の低下、炎症抑制、認知機能維持など、さまざまな効果が!
医師の林巧先生によると、40代、50代がサプリメントで栄養を補うなら、ビタミン&ミネラルに加えて、とるとよいのがDHAやEPAなのだそう。
その理由とは?
「ご存じの方も多いと思いますが、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)は、どちらも青魚の油に含まれる必須脂肪酸で、オメガ3(n-3系)の不飽和脂肪酸です。
そもそも脂肪酸とは、脂肪(中性脂肪)の構成成分で、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
飽和脂肪酸は、肉類や乳製品などに含まれる脂肪で、常温で固まる性質があります。
一方、不飽和脂肪酸は、常温で固まりにくい性質があります。
不飽和脂肪酸はさらに、オメガ3(n-3系)脂肪酸やオメガ6(n-6系)脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸と、オメガ 9(n-9系)脂肪酸などの一価不飽和脂肪酸に分けられます。
必須脂肪酸とは、この多価不飽和脂肪酸の一種で、健康の維持には欠かせない栄養素なのですが、体内で生成されないため、食物から摂取するしかありません。
DHAやEPAは、多価不飽和脂肪酸のオメガ3脂肪酸に該当します。
DHAやEPAは、以下のように健康に役立つ多くの効果があります」(林巧先生)
DHA&EPAの主な効果
① 心血管疾患のリスク軽減
血中の中性脂肪を低下させる効果や血圧を下げる効果があり、心血管疾患の予防に寄与します。
さらに、血小板凝集を抑制し、血栓形成を防ぐことで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを軽減します。
② 炎症の抑制
オメガ3脂肪酸には抗炎症作用があり、慢性炎症性疾患(関節リウマチ、炎症性腸疾患など)の症状をやわらげる可能性があります。
また、更年期に多い関節痛や筋肉痛の緩和にも効果が期待されます。
③ 認知機能の維持
DHAは脳の構造や機能をサポートする重要な成分で、脳の機能改善によいとされ、認知症や軽度認知障害(MCI)の予防にも寄与するといわれています。
④ 皮膚の潤いの維持
オメガ3脂肪酸は肌の保湿力を高め、炎症を抑えることで、アトピー性皮膚炎や乾燥肌の改善に寄与します。
更年期以降の肌の老化予防にも役立ちます。
「このようにDHAやEPAには、40代、50代の女性にとってもうれしい、さまざまな効果があります。
DHAやEPAは、動脈硬化や脂質異常症などの薬としても使われているほどです。
DHAやEPAは、イワシやサバやサンマなどの青魚に多く含まれていますが、現代人は魚の摂取量が減っているので、サプリメントも活用して補うのがおすすめなのです」
記事が続きますDHA&EPAは、一緒にとるのがおすすめ。
1日1000〜2000mgを目安に補給を
では、サプリメントで補う場合、どのようにとるとよいのでしょうか?
「DHAは、人間の脳や目の網膜の脂質成分で、脳に直接入って栄養素として機能します。
また、EPAは、脳内にはほとんど存在しませんが、血液サラサラ効果や中性脂肪低下効果はDHAより高いといわれています。
ですから、どちらか一方だけでなく、一緒にとるとよいといわれています。
サプリメントも両方が配合されているものがおすすめ。
DHAやEPAは薬にもなっていますが、薬ではふたつ合わせて1000mgを朝・夜に服用するので、サプリメントでとる場合も1日に1000〜2000mgを目安にとるとよいでしょう。
注意点としては、DHAとEPAは、血液をサラサラにする効果が高いため、出血したときに血が止まりにくくなる場合があります。
また、魚の油なので、とりすぎると汗が生臭くなることがあるともいわれているので、とりすぎないように気をつけましょう。
亜麻仁油やえごま油に多く含まれるα-リノレン酸もオメガ3脂肪酸で、体内で一部がDHAやEPAに変換されるので、同じ効果が期待できます。
ただ、酸化しやすいので、これらの油をとる場合は加熱せずに、ドレッシングに使うなど、そのままとるのがおすすめです」
【終わりに】
加齢に伴って増えやすい、さまざまな体のトラブルの予防に効果的なDHA&EPA。
毎日の食事で青魚を意識してとるようにしつつ、魚をあまりとらない人はサプリメントもうまく活用して、DHA&EPAを補給しましょう。
【教えていただいた方】

はやしたくみ女性クリニック院長、医師。1966年、北海道札幌市生まれ 。札幌医科大学卒業。札幌医科大学附属病院では更年期専門外来を担当。斗南病院、函館五稜郭病院、NTT東日本札幌病院を経て、2009年「はやしたくみ女性クリニック」を開業。 日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会(旧日本更年期医学会)女性ヘルスケア専門医、日本女性心身医学会認定医、日本抗加齢医学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本性差医学・医療学会認定医などを取得。産婦人科、女性内科、性差医療の視点から保険診療、保険外診療の両面で、その人その人に合ったケアを行い、女性のこころとからだの健康をサポートしている。
写真/Shutterstock〈イメージカット〉 取材・文/和田美穂