「がん」と告知されたら、それからどうしたらよいのかと不安になる人が多いはず。 今回はもしもの時のために知っておきたいサポートサービスと治療の流れについてご紹介します。
今回の話を伺った先生
勝俣範之さん
Noriyuki Katsumata
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科部長。がん患者と向き合いながら正しいがん情報を配信。『医療否定本の嘘』(扶桑社)など著書も多数
清水 研さん
Ken Shimizu
国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科長。がん患者や家族の心に寄り添う。『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)が話題に
パニックになるからこそ覚えておきたい4つの助け
がんを告知されてからは、誰しも不安やわからないことだらけ。そんなとき、正しい方向へ進むために活用したい窓口があります。
①正しい情報が欲しい
「がん情報サービス」
がんと診断されたら、自分の病態について正しい情報にアクセスして知識を得ることが大切。ただしネットの情報は玉石混淆。エビデンス(科学的根拠)に基づいた情報を得るには、まず国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」を検索するのがおすすめ。がんの種類別に、特徴や診断、標準治療、生活や療養について一般にもわかりやすく解説されています。自宅から通える場所にある「がん診療連携拠点病院」のリストや、国のがん対策への取り組みも知ることができます。
②自分のがんを知る
「診療ガイドライン」
同じ種類のがんでも人によって治療法は異なります。治療が進む中で、自分が受ける手術や薬物療法にはどんな効果があるのか、また医師の言った医療用語の意味など、少し踏み込んだ情報を知りたいときに参考になるのが「ガイドライン」です。各がんの学会が世界の標準治療をベースに作成した書籍で、ネットなどで購入が可能(「がん ガイドライン」で検索)。ほかに一般社団法人「日本癌治療学会」のウェブサイトに「がん診療ガイドライン」があり、がん種別に検索ができます。
③困ったことはなんでも…
「相談支援センター」
がんの告知後は、がんに関する情報収集、セカンドオピニオン先選び、仕事や生活上の困り事などが生じます。そんなとき、がんに関するよろず相談に乗ってくれるのが、がん相談支援センター。全国のがん診療連携拠点病院に設置され、国立がん研究センターで研修を受けた相談員が常駐。匿名可で面談(要予約)や電話での相談を受けており、地域や病院にかかわらず利用できます。「がん情報サービス」のサイトや「がん情報サービスサポートセンター」(ナビダイヤル 0570-02-3410)でも窓口の問い合わせが可能。
④心がとてもつらいとき
「精神腫瘍科」
がんによる悲しみで仕事や家事が手につかないなど、精神面で生活に支障が生じたときは精神腫瘍科を受診しましょう。一般の精神科とは違い、幅広いがんの知識を持った精神科医や心療内科医が、カウンセリングを基本に心のつらさに寄り添った治療にあたります。「日本サイコオンコロジー学会」のサイトで登録精神腫瘍医を検索でき、患者だけでなく家族や遺族も受診できます。精神腫瘍科がない場合、臨床心理士やがん認定看護師が心のケアにあたることもあるので病院に問い合わせを。
治療の流れを
知っておきましょう
自覚症状や検診の要精密検査をきっかけに「がん」と診断されるまで、また、診断から治療へ進むまでの全体像を把握しておきましょう。疑問や迷いがあるときはセカンドオピニオンも積極的に活用して。
がんの診断が確定すると治療方針が示されます。この段階で疑問や迷いがあるときは、他の病院の医療者に意見を求める「セカンドオピニオン」を受けることができます。標準治療もひとつではないので、別の医師の意見も参考に。強く希望する場合は転院も可能です。セカンドオピニオンは患者の権利。基本的にどの段階でも受けることができます
次回はがんの標準治療の真実についてご紹介します。
イラスト/緒方 環 取材・原文/山崎多賀子